×0 誘い
「ねぇねぇ、最近魔法少女って流行ってるらしいね!」
「んー?そうなの?」
放課後、私たちは教室に残っていつも通り話していた。
まだ部活をする人がいるから念の為といって担任が教室を開けているのだ。
...魔法少女かぁ
そういえば私も昔魔法少女にハマってた頃あったなぁ...。
『魔法少女☆マジカルフリキャア』のなりきり衣装とか欲しがっていた頃が懐かしい。
テレビの前でその日だけ朝早くに起きて待機していたあの頃はもう何年も前なのか。
私たちは徐々に大人に近づいている。
当たり前の事だけど、少し不思議に感じてしまう。
「そうそう!夢の中で魔法少女になれたって人がいっぱいいるんだって。」
長い髪をお下げにした唯一の友達、波留がスマホを私に見せつけながらそう言う。
そこには「成功者続出!誰でも魔法少女になれる魔法の夢!」と書かれており、
文字の周りな紫とピンクのもやもやで縁取られていて、如何にも胡散臭そうだった。
「うわっ、嘘っぽいな...。」
私が眉を顰めながらそう言うと、波留はそんな事ないもん、きっとホントだもん...と言って不貞腐れる。
というかそもそも何で魔法少女限定なんだ。
「もう信じられないなら梨歩、これやってみなよ。魔法少女に憧れてたじゃん。」
「それは小さい頃の話でしょ!!」
波留は笑いながらメモに何かを凄まじい速さで書き、私に手渡す。
そこには先程見せていた『魔法の夢』の見方が書かれていた。
「まぁまぁ、取り合えず見てよ。結果聞かせてね~」
「はぁ?もうめんどくさいなぁ...。」
私はしぶしぶながらもメモ用紙を受け取り、鞄の中に入れる。
魔法少女かぁ...。
私は教室の窓越しに晴れとも曇りともいえない空を見上げる。
何とも言えない気持ちが私の心でずっと渦巻いていた。