天才と愛すべき図書館と
俺は図書館の重い扉を開けた。
「あっ! こんにちは〜」
緑髪の青年に声を掛けられた。
黒いお洒落そうなローブを着ている。
司書さんかな?
「はじめまして。失礼だが名前は?」
「こういうのは先に貴方が名乗るのが礼儀でしょう?」
いきなり正論をぶちかまされた。
「はいはい。俺は上野アカギだ。あんたは?」
「うん。僕は鳴神ソウタ。この図書館の司書なんだ。ソウタでいいよ」
久々にバカではない人に出会った気がする。
「ねぇアカギさん、初対面だが聞くよ。
君、日本から来たでしょう?」
彼の言ったことは図星だった。
「何故それを?」
すかさずソウタが返答する。
「名前の構成がここら辺の人とは違うからね。こんなこと簡単なことだよ」
お見事。
「凄いなぁ。最近バカしか見ていなかったから油断してたよ。そういやあんたも日本人だったのか?」
一呼吸入れて続ける。
「元はね。ちょっと前に癌でポックリさ。生まれつき体に異常があったらしい。こんな感じでこっちの世界に来た人がいるらしいよ」
あっちの世界。
俺を弄んだ世界。
ゴミ同然の世界。
俺はあっちの方の人間に相当な憎悪を抱いていた。
話を切り替えよう。
せっかくいい人に会えたのに嫌な気持ちにさせるのは御免被りたいね。
「ところで? ここにはどれくらいの本があるんだ?」
「話をズラすねぇ……まぁいいや。
ひと通りの童話、魔道書よくあるラノベとか歴史書とかかな?多過ぎてわかんないよ」
苦笑いしながらソウタは答えた。
「お前それでも司書かよ……暫く勝手に見させてもらうぜ〜」
「はいはーい。読んだら元の場所に戻してね〜」
そう告げてソウタは図書館の奥へ消えていった。
さっそく当たってみようか。
〜本を漁って3時間ほど経過〜
『日本から来た者へ』
興味深い本を見つけた。
「なんだこれ…著者は…日本人だな。後輩に向けての指南書みたいなものか?」
本を開いた。
其処には
・メインメニューの使い方
・スキルの覚え方,使用法
・この世界の構成
が書かれていた。
スキルについて要約すると、
勝手に覚えるタイプと、形に当てはめるタイプがある。
勝手のスキルは『覚醒』って感じて急に覚えるらしい。
習得条件は不明そう。単に調べが足りないかもしれないが。
形がある方はある程度習得条件が決まっている。
元からある形を完コピ出来たら取得として扱うそうだ。
次にこの世界の歴史。
ざっくり言うと、
元は1つの国→喧嘩勃発→分国→戦争
の繰り返し。
ちなみにモンスターは最近湧きはじめたらしい。
其処でふと俺は本来の目的を思い出した。
「こんなことしている場合ではなかった。早く城へ向かはなければ……」
そうして俺は図書館を飛び出した。
「あ、ちょっと!」
やべ。ソウタに怒られるな。
本の片付けしてねえ。
「どうするんですか、これ……」
3時間分の本の山を見ながらソウタは呟いていたという。
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図書館に長く居過ぎたので、今の時間がわからなくなっていた。
太陽が真上にある。丁度正午くらいなのだろう。
「ここだな。すみません、ちょっといいですか?」
城門に着いた。さっそく近くにいた兵士に声を掛ける。
「はい。どうしました?(カンペを取り出す)」
「あんたたちの軍隊に入りたいんだけどどうしたらいいんだ?」
「分かりました。ではこちらへ(カンペ見ながら)」
流石にマニュアル通りの対応は出来てるな。
そして俺は城の中の小部屋に待たされた。
「ここで暫くお待ちください(カンペをしまう)」
そう言って兵士はこの部屋を後にした。
俺は辺りを見回す。
「簡素な部屋だな。装飾に使う金は無いってか?」
そんなことを考えていたら兵長らしき人物が来た。
「君が入隊希望だね。僕は兵士長のクレイだ。早速入隊審査を行うけど準備はできているか?」
「ああ。早く始めよう」
二つ返事で返した。
「へえ。威勢がいいね。そう言うの嫌いじゃないよ?
さあ、こっちだ。着いてきな」
「ああ。」
周りの人間とは何か違う。やはりこの人も…
「審査って具体的に何をするんだ?」
俺は歩きながらクレイに質問した。
「なぁに、簡単なことさ。スキルチェックと擬似戦闘で終わりだよ」
クレイは快く答えてくれた。
こうして俺は修練場みたいなところに連れてこられた。
クレイが説明する。
「まず、君自身のスキルを適当に使ってあの案山子を攻撃してくれ。どんな攻撃法でも構わない。ついでに君の戦闘スタイルを見させてもらうよ」
ここで俺は不安になった。
(やべぇ。スキルまともに覚えてねーよ。どうしよう。
とりあえず俺の戦い方に合ってるノーマルスキルを…おっ!これだ!)
「どうした?早く…」
言い終わらないうちに俺は駆け出した。
「加速っ!」
俺の体がさらに加速する。
ノーマルスキル『加速』
使用者の走行速度を一瞬だけ上げる。
走行中のみ使用可能。
「しめた!これも…『霧隠れっ!』
刹那、クレイの目から俺が消える。
見失ったのではない。確かに消えたのだ。
オリジナルスキル『霧隠れ』
3秒間だけ周りから見えなくなる。
再使用には10秒のクールタイムを必要とする。
獲得条件:最高速度が時速約 50kmを超える
これは偶然手に入れた。
サッと案山子の真後ろに回り込んで剣を首元に突き付ける。
「これでいいんですか?クレイさん?」
「へえ。凄いね。1つ聴きたいことがあるんだけど、いいかい?」
「なんでもどうぞ。」
少し落ち着いた口調でクレイは言った。
「何故君はAGI特化型にしたんだい?」
少し考えて答える。
「奇襲が得意なんで」
きっぱりと答えた。
「成る程。それじゃあ次に移ろうか」
「次はなんですか?」
確か擬似戦闘だった筈。
そう考えていたら、予想外の方が飛んだきた。
「僕と手合わせ願えるか?」
「僕と手合わせ願えませんか?」
「それが次の審査ですか?」
俺はつい慎重にになってしまった。
「もちろん、本気は出しません。僕のHPが4分の3を切ったら良しとします。」
「わかった。じゃ、行きますよ」
口では冷静を装っているが、心は今超弱気になっている。
(マジで??勝てるわけねーじゃん。なんか急にオリジナルスキル習得出来ないかな…)
「先攻は譲ります。いつでもどうぞ」
「行くぞ!加速!」
まず、加速して相手の注意を引きつけて……
反対側に方向転換!
「オリジナルスキル習得『高速転移』」
そのシステムメッセージが聞こえた。
オリジナルスキルはこうやって習得したら急に通知が来る。結構急にくるものらしい。
そして俺はクレイに一太刀を……
ガシャン!!
弾き返された。そらそーなるな。
「この程度かい?君の全力は?」
すぐさま反撃が来る。
「『クラスエッジ』!」
十字に切り裂く風の刃が俺に迫って……
「『高速転移』!」
咄嗟に後ろに避けた。
「さすがは兵士長といったところかな?簡単には攻撃を与えさせてくれない」
「伊達に兵士長名乗ってないからね。もっと攻撃してみな!」
如何にも余裕そうだ。
「じゃ…お言葉に甘えて…『霧隠れ』っ!」
3秒間俺の姿が消える。
その間にクレイの後ろに回ってノーマルスキル『跳躍』を使う。
「そぉら!喰らえ!『パライズソード』!」
「くっ、『ヴァリアブル・シールド』!」
流石のクレイも防ぎきれなかった。
麻痺はダメージ入らなかったか…
「オリジナルスキル習得『シールドクラッシュ』」
システムメッセージがまた来る。
オリジナルスキルの条件は誰にもわからない。
だから相手側も何が飛んで来るか分からない。
「そろそろこっちからも行かせてもらうよ?」
俺は咄嗟に身構えた。
(アレ…使えるか?)
クレイが走ってくる。
「『エクスガイヤ』」
クレイが縦に剣を構えて襲いかかる。
「どうした?ノーガードだよアカギくん?」
どうやらモロに受けたら大ダメージの大技らしい。
だが俺には切り札がある。
腕を前に出してそのまま待機して攻撃を待つ。
(いけるか?)
クレイはそのまま切り掛かる。
俺の腕に攻撃が当たる。
しかし、ダメージは殆ど入らなかった。
「オリジナルスキル習得『アームブロック』」
大技スキルを使用して勝利、もしくは優勢になると考えていたが考えが甘かった。
「何?殆ど無傷だと…?」
クレイは不思議そうな顔をしている。
(この前買ったアームスティックのおかげだ…それでも危ない賭けだった)
正直、これは成功してもかなりダメージを食らう覚悟は出来ていた。正にこれは奇跡だ。
「僕のエクスガイヤをモロに受けて立っていられるのは今のところ君だけだよ。」
クレイが称賛する。
「さあ、続けようぜ。まだ俺はあんたに少ししかダメージを与えていないぜ」
俺はまだ動けるが…決め手に欠けていた。
なぜなら俺はまともな攻撃スキルを覚えていない。
暗殺を狙っても阻まれるだろうしな…
「いいや。降参だよ。君は強いねぇ。」
クレイは両手を挙げた。
「降伏かよ….なんともしっくりこない終わり方だな…じゃあこれで合格か?」
「ああ。君はかなり上の方に行けるんじゃあないかな?」
クレイが称賛する。
「ありがとう。もっと強くなったらまだ闘おう。今度は全力でな」
「ああ。君の活躍に期待してるよ」
〈今回新出のスキル〉
オリジナルスキル『高速転移』
半径5メートルの任意の場所に瞬間で移動する
一度使うと10秒のクールタイムがある
習得条件:加速中に左右に移動する
ノーマルスキル『クロスエッジ』
十字に交差した衝撃波で攻撃する
ノーマルスキル『跳躍』
上へ跳ぶ。
跳ぶ距離はAGIに依存する。
ノーマルスキル『パライズソード』
当たった物に25パーセントの確率で麻痺を付属する
防がれたり、避けられたら効果はない。
オリジナルスキル『ヴァリアブル・シールド』
使用者を発動から10秒間軽減する。
一度ダメージを受けると解除される。
一度使うと10秒間のクールタイムがある
習得条件:攻撃を100回ガードする
オリジナルスキル『シールドクラッシュ』
攻撃した相手のガードを無効化する
1日3回まで使用可能。
オリジナルスキル『エクスガイヤ』
伝説級の攻撃力で斬りつける。
使用すると5秒間動けない。
1日3回まで。
習得条件:基礎STR1000以上
オリジナルスキル『アームブロック』
装備『アームスティック』系統で攻撃を完全に防ぐ。
アームスティック系統を装備しないと使用不可。
アームスティック系統の耐久値が切れたら効果は無効。
習得条件:『アームスティック』系統で敵の攻撃をガードする。