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ユイ45

ドラマ風に自由が丘の街を疾走した私は、やっとのことで店に着いた。


エレベーターを降りると事務所へと連れて行かれた。

「ユイちゃん、とりあえずメイク直そう」

「私も少し手を入れさせてください」

化粧を直してる間、シズカちゃんがヘアメイクを直してくれた。


「リナ、呼んできて」

「イシハラくん、マコがオッケーだって」

リナちゃんがイシハラくんにサインを出すと店内が暗くなった。


「それでは定刻となりましたので、新婦の入場となります」


「ユイちゃん行こう」

マコちゃんに誘導され、エントランスへと向かった。


「それでは盛大な拍手でお出迎えください」

スポットライトに照らされた。

店内は招待客で埋め尽くされていた。

学生時代の友達やユミさん、ユカさんの顔も見えた。

VIPルームまでの道程で、大きな拍手に迎えられた。


「それではユイさん、ご着席ください」

イシハラくんが今回の主旨を説明する。

このパーティは、イシハラくん以下、スタッフやキャストで企画したこと。

彼は何もこのことを知らないこと。

「ボスは間もなく、何も知らないまま、この携帯が鳴ると1分ほどで到着します」

店内は、大爆笑に包まれた。

次の瞬間、イシハラくんの携帯が鳴った。

「はい。オッケーです」

携帯を切ったイシハラくんの顔がニヤついた。

「ボスが参りますので照明を」

照明が真っ暗になると、店内のザワメキがなくなり静かになった。


『ウイーン』

エレベーターのドアが開いた音が聞こえた。

「イシハラ!」

そう叫んだ瞬間、エントランスのダウンライトが彼を照らす。

状況を把握していない彼の表情が見えた。

店内では、みんな手を叩いて大爆笑していた。

「新郎のご入場です。みなさん盛大な拍手でお迎えください」

拍手の渦の中、フロアのライトが少しずつ明るくなる。

「ボス、こちらへ」

ハラダくんが彼を誘導する。

相変わらずキョトンとした表情の彼が歩を進める。

「ボス、そこで止まってください」


「それでは新婦のお披露目です。みなさまVIPルームをご覧ください」

イシハラくんの合図で立ち上がる。

VIPルームの照明がゆっくりと明るくなった。

「それでは新郎は、新婦の隣へお座りください」

VIPルームへと続く階段を彼はゆっくり登り、私の隣へ座った。

「最近、みんながソワソワしてたのはこれだったのか」

「驚かせたくてね。イシハラくんがサプライズしたいって企画してくれたの」

やっと自体を把握したのか、彼に笑顔が戻った。


「主役が揃いましたので、乾杯の音頭をキング店コダマ店長、お願いします」

「ただいまご紹介に預かりましたキング店々長の児玉でございます。僭越ながら乾杯の音頭

 を取らさせて頂きます。お手元のグラスをお持ちの上、ご起立の程、お願いします」


「新郎、新婦の末長いお幸せと、ならびにご臨席のみなさまのご多幸とご繁栄、ご発展を

 お祈り致しまして、乾杯!」

「乾杯!」

乾杯の唱和の後、盛大な拍手に包まれた。


「それではしばらくご歓談ください」

イシハラくんの仕切りに彼が大爆笑していた。

「ぶっ!いきなり放置プレイかよ」

「あはは」

「そういえば、うちもそうだけどお母さんは呼んでないの?」

「イシハラくん曰く、今日はそういう堅苦しいのは無しで、仲間内のパーティなんだって」

「そっか。でも良いタイミングだな。みんなに店を見てもらえた」

「そうだね」

イシハラくんが企画してくれたサプライズ披露宴。

彼にとっても店を披露するいい機会となった。


「ボス、店長がここにマイクを持っていけとのことなので置いておきますね」

ハラダくんが、彼にマイクを持ってきた。


「それではスピーチなんて堅苦しい事は致しません。私がランダムに選んで、マイクを渡し

 ますので、主役と会話を楽しんでください」


「イシハラくんさ、もう酔ってるよね」

「完全に酔っ払いだ。あいつに任せてると大変なことになるぞ」


「では最初にボス!お願いします」

「ほらな」

「あはは」

彼は仕方なさそうにマイクを取って、立ち上がった。

「本日は何にも聞いてなくてみんなに驚かされたんですが、方々ご多忙の中、私達に為に

 お集まり頂き、ありがとうございます。そしてこのイシハラのサプライズにご協力して

 くださったみなさま、高いところからではありますが、ありがとうございます」

私も立ち上がり、彼と2人でお辞儀をした。

「ボス、そろそろ時間です。ご着席ください。それでは、しばしご歓談ください」

彼の言うとおり、傍若無人の仕切りにフロアが大爆笑だ。


彼の恩師でもある、社長がVIPルームへと上がって来た。

「マイカワおめでとう!イシハラもお前の為にこの場を用意するなんて良い男になったな」

「ありがとうございます。ハチャメチャですけど可愛くてしょうがないですよ」

「お前の若い頃にちょっと似てきたかな。あいつも将来楽しみだよ」

社長は私達にビールを注いでくれると、彼と握手をして戻って行った。

久しぶりに逢う、アサミ達が来た。

「ユイおめでとう!ボスお久しぶりです」

「ありがとう?誰だっけ?」

「やだな、アサミです。スキー旅行も一緒に行ったじゃないですか」

「あ、木村の!」

他の女の子達も紹介され、ビールを注いでくれた。

「ちょっと待ってね」

彼はマイクを取って立ち上がった。

「イシハラ、こういうときってバケツとか俺の足元に置いとかなくていいものなの?」

「え?すいません、電波が悪くてあんまり聞き取れません。続いてリナさんから一言!」

「ええ!」

リナちゃんもびっくりしていた。

横で大笑いしているマコちゃんに促されるとマイクを持った。

「ボス、この度はおはようございます」

「おはよう?ん?」

「すいません、緊張しちゃってます。明日は何時集合ですか?」

「1日オフにして、明後日のレセプションに備えるようにしてくれ」

すかさず、イシハラくんがリナちゃんからマイクを取り上げた。

「ボス、リナちゃん…。業務連絡は後でお願いできますか?」

キレの良い、イシハラくんのツッコミに店内が笑いの渦と化す。


「それでは乾杯の音頭を取って頂いた児玉店長!」

また俺かよといった表情で、渋々コダマくんが立ち上がる。

「…の隣でアサミちゃんといちゃついてるキムラさん!一言お願いします」

イシハラくんに中指を立てながら、コダマくんは席に付いた。


「イシハラ、飲んでる方がトークにキレがあるな」

やり取りの一部始終を見ていた彼も大笑いしていた。



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