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ユイ35

偶然、ユミさんに紹介してもらった修理工場で『元彼』のシュウと再会した。


確かに付き合っていたこともあり、他の男とは目線が違った。

しかし彼と比べると、何てちっぽけな男なんだろうと冷静で居られた。


思いも寄らぬ日時に彼から、迎えの電話が入った。

彼に逢いたくて、さながらF1レーサーのように飛ばした。


空港に着くとバス、タクシー乗り場から少し離れたところに彼は居た。

「今日も泊まって来る予定だったんじゃないの?」

「そうだったんだけど、いろいろアイディアが浮かんでね。早く帰りたくなった」

「大阪は参考になったの?」

「そうだね」

「コンセプトがだいたい出来上がったよ。トランク開けて」

彼はトランクに荷物を乗せると車に乗った。


「あー疲れた。ただいま」

「おかえり。ダーリン!」

「寂しかったろ?」

「当たり前じゃない!毎晩泣いてたよ」

「俺と一緒か…」

「あはは。ねえ、疲れてるところ悪いんだけど運転替わって」

「いいよ。どうした?」

「手を繋ぎたいから」

「ユイの片手運転じゃ、危険極まりないからな」

「そういうこと」

彼は信号待ちの度にキスをしてくれた。


マンションに戻ると2人でお風呂に入った。

今夜は、彼に怒られても思いっ切り甘えようと思った。

ベッドでは、私から彼を求めた。

彼は受け入れてくれ、私は何度も絶頂を迎えた。

彼が帰ってきて、ほんの数時間。

その夜は、とても幸せな夜だった。

私は彼の腕の中で安堵感に包まれ、深い眠りについた。


翌朝から彼は再び、仕事モード全開になっていた。

「おし、飯食ってから店行くか」

「うん」

「ユイ、それ忘れちゃまずいんじゃないの?」

私は彼から頼まれていた、デザイン画を完成させていた。

「あ、ぶてぃっくんも来るんだったね」


「ボス、おはようございます」

「おはよう」

「ボス、ぶてぃっくんがお待ちです」

「ユイ」

「はい」

「ボス、おはようございます」

「どうも。ドレスを40着ずつ2セット頼みたいと思ってたところなんだよ。ユイ!」

「おはよ、ぶてぃっくん。これで試作品作ってみて」

私はスケッチしたデザイン画を手渡した。

「なかなか良いじゃないですか。早速、着手します。ユイちゃんにモデルになってもらって

 採寸したいんですが、よろしいですか?もちろん弊社の女性が行います」

「うん」

「じゃ今、連絡を入れておきますので1階の店に行って下さい」


「イシハラ、コマツ!ちっと来い」

「はい!」

「うっす!」

「ねえ、採寸行ってくるね」

「分かった」

彼は2人と打合せした後、指示を出していた。


私はぶてぃっくんとエレベーターを降り、店に向かった。

「そう言えば、私なんかで採寸しちゃっていいのかな?」

「どうしてですか?」

「私みたいな小さいのでいいのかなって」

「試作品を作るだけですよ」

「それならいっか」

「ボスって男から見てもワクワクするような人ですよね」

「うん。うちの人は異性、同性問わずに魅力を感じさせるのよ」

「夢を見させてくれるというか、夢中にさせてくれますよね」

「彼に関わる人はみんなそうじゃないかな?」

「イシハラさんとかコマツもそうですよね」

「あはは。そうですね」

「私もそうです。何か協力出来ればと思います」

「彼の女で幸せですよ」

「カリスマですね」


会社登記、内装、システム、制服の発注、許可関係は上手く事が進んでいた。

彼達は約1ヶ月半、ほとんど休まず、開店準備に取り掛かっていた。

イシハラくんは、スカウトを中心に。

コマツくんは会社登記、許可関連を。

私と彼は、内装、システム、制服の発注に追われていた。

今日も気がつくと22時を回っていた。

「イシハラ、飯食いに行くから戻れ」

「コマツどこだ?」

「店戻ってくれ」

彼は矢継ぎ早に連絡を取った。

「ユイ、何食べたい?」

「何でもいいけど」

「まだこの時間だから何でも行けると思うけど?」

「お好み焼き食べに行こうよ」

「おお!ナイス意見だな」


イシハラくん、コマツくんが戻ると自由が丘にあるお店に向かった。

「お疲れさん」

「お疲れ様でした」

彼が乾杯の音頭を取った。

「みんな、しばらくご苦労さんだったな」

「御無体な…」

「イシハラくん…言葉の使い方間違ってるよ?」

「ですか?」

「バカはほっといて…。明日の日曜日は完全にオフにするから」

「ボス、どうかされましたか?」

「いや、ある程度のスケジュールが立ってきたからな」

「そういうことですね」

「ゆっくり休んで鋭気を養ってくれ」

「はい」

「うっす!とりあえず、食い物の注文しましょうよ」

「お好み焼きは俺に任せとけ。大阪出身だからな」

「え!」

彼の一言に一同が驚いた。

「あ?知らなかったか?」

「俺達が知らないのはいいとして、ユイさんも知らなかったっぽいですよ?」

「初めて聞いたよ」

「イントネーションが完全に標準語ですね」

「ああ。俺以外の家族含め、親戚も江戸っ子だからな」

「マナブくんだけなの?」

「そういうことだよ」


私達は、避けている訳ではないが、過去の話をあまりしない。

生い立ちや育った環境、昔話。

彼のポジティブシンキングには必要無い。


「イシハラ、コラコラ!勝手に触るな」

「いいじゃないすか」

「ダメだ。俺が仕切る!」

「ボスは鍋将軍ならぬ、お好み焼き将軍ですね」

「だーから!イシハラ触るな!」

「あはは!コント見てるみたい」

この後、悪ふざけが過ぎたイシハラくんは、熱せられたコテで頭を叩かれていた。


「ユイは明日、何かあんの?」

「あってもダーリンに合わせるに決まってるでしょ」

「そっか」

「どこか行くの?疲れてるんでしょ?」

「正直、疲れてる」

「だよね。ビデオでも借りてゴロゴロしてる?」

「いいかも」

私は彼と一緒ならどこで何をしててもいい。

彼女になって、初めて離れた2日間で強くそう思った。


日付が変わる頃になって、店を出た。

「じゃ明日はゆっくりさせてもらいますね」

「おう」

「俺も家で寝てるっす」

「そうだな。じゃここで解散するぞ」

「お疲れ様でした」


駅でタクシーを拾うとマンションへ向かった。

「どうする?ビデオ借りに行く?」

「面倒だから明日でいいや」

「じゃ帰ろ」

「疲れたから風呂入って寝る」

「うん」


マンションに着くなり、彼はそのまま寝に入ってしまった。


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