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ユイ28

メグミは彼に意見を求めた。


彼の意見はこうだ。

彼氏と別れてすぐに違う男と連絡を取ったのは、自分がそうなりたかったから。

彼への仕返しではなく、違う男と遊びたい願望があったからだという。

本当の恋愛を経験していないから、彼との付き合いがママゴトの延長だからだという。

幾度も別れ、幾度も復縁して、それが楽になってしまってるという。

そして今を繰り返してるうちに、本当の恋愛が出来なくなってしまう。

しかし男は、自分の浮気を棚に上げ、彼女の行為を許してくれないという。

いつかは、本当の別れが訪れると彼は予想した。


「このまま寄り戻しても、結婚したとしてもお互いに今を続けるだろうな」

「そうですか…」

「恋は盲目とよく言ったもの。今は何を言われてるか分からんだろうな」

「だってさ、メグ。私もそう思うよ」

「はあ…」

「胸が張り裂けそうになったり、相手を思って夜も眠れないときとかある?」

「無い…ですね」

「ユイは?」

「私はヤキモチ焼きだから」

「メグは今のと別れた方がいい。もっと傷付いて涙を流して辛い思いが経験出きるといいな」

「はい」

「もちろん、今のままで好転する場合も無いとは言い切れない」

「五分五分ってことですか?」

「メグ、それは限りなく薄い五分五分よ」

「ただマンネリを打開したいから、異性と遊ぶってのは根本的な解決にはならないんだよ」

「私とダーリンの間に、マンネリなんか存在しないもん」


メグミはみんなが自分の見方で居てくれると思っていたのだろう。

その後は、談笑する中で1人考え込んでいた。


みんなとは現地で別れた。

メグミはコマツくんとイシハラくんが送ってくれた。


「友達は大丈夫か?」

「誰にもあのようなこと言ってもらえないのよ。だから私のところに来たと思う」

「俺の意見を求めてるようには、見えなかったけどな」

「私だったら、あんな優しい言い方なんて出来ないもん」

「そうか」

私も彼とは同意見だった。

メグミは学生気分の恋愛が抜けないだけ。

女はモテるのと体を許すのは、同じと勘違いする人がいる。

ほとんどの男は、目の前で女が裸で居れば、行為に及ぶだろう。

酒が入っていれば、なおさらのこと。

その場数をこなしたからといって、モテている訳ではない。

私から言わせれば、ただの『ヤリマン』なだけだ。


「彼氏という存在を作らなければ、それでいいと思うけどな」

「過去を気にする男とは、付き合えないけどね」

「何人経験があるかとか、聞く男って居るよな。女も居るけどな」

「そういうの気になる?」

「俺?」

「うん」

「時間を巻き戻せるならって思うけど、無理な話」

「だね」

「なら、こだわってもしょうがない」

「知らない方がいいってこと?」

「包容力や立派な男なら、知ったとしても気にしない」

「何かそれも寂しいね」

「俺はまだ知らない方がいいってランクだな。ユイの過去は知らなくていい」

「知ったらヤキモチ焼く?」

「ヤキモチじゃなくても、嫌な気分になるな」

「それ聞いて安心した」


彼はメグミに言った。

女は傷付いて、磨かれると。

私は磨かれた女なのだろうか。

磨かれていたのなら、何時がそのターニングポイントだったのだろうか。

そんな恋愛なんて、彼に逢うまで経験したことはない。

「ユイの場合は、俺との中で全て経験してきてるんだろうな」

「幸せだよ?」

「俺達は、全て言わなくても通ずることが多々ある」

「そうだね」

「その中で消化しているんだろう」

「ふーん。不思議な感じ」

「あはは。俺から見てもユイは大人になっていってるぞ」

「良い女になってる?」

「ああ、自慢できるくらいな」

「愛してる」

「俺も愛してるよ」


やっぱり彼と私の付き合いは、理屈じゃない。


彼は私のことを出逢って成長したという。

私は彼の全てを、受け入れたいと思っている。

心も体も気持ちも言葉も全部だ。

その想いを持てたのは、彼との付き合いからだと思う。


何より彼を想う私を、私自身が好きになれたのだ。

性格が変わったような気がした。

彼という大きな星を中心に、衛星の私がそばを離れずにずっと一緒に回っている。

死ぬまでずっと一緒にいたい気持ちで満たされていた。


メグミに再婚の話をされたとき、正直、何も言えなかった。

こればかりは、相手あってのこと。

私は、バツ1なのに変わりはない。

私の気持ちは1つ。

彼の絶対的存在で居続けたい。

この先、一生、彼に添い遂げたい。


しかし彼は今、目標や夢に向かって、全力で向かっている。

今じゃなくてもいい。

私は彼からのプロポーズを待ち続ける。

彼との将来への想いを大切にしたい。

まだ彼は17歳なのだ。


思いもしないところで、彼の『17歳』が障壁となるのであった。


自由が丘で買い物をした後、オープンカフェで休憩していた。

「よう!久しぶりだな」

「親分!」

「座ってもいいか?」

「あ、どうぞ」

「こんな時間に起きてることあんだな。どうだ元気にやってんのか?」

「はい、店を先日辞めて、この近くで店を出そうと計画しているところです」

「そうか。何か困ったことがあれば言ってこいよ。この近所に事務所があるんだ。おい!」

彼が親分と呼ぶ男は。若い衆の一人を呼んだ。

「これが俺の名刺だ。変なことに使うんじゃねえぞ」

「分かりました。あの…」

「あいつか?お前が許可したからまだ店やってるぞ」

「許可だなんてそんなレベルの人間じゃないですよ」

「ユミがお前を試せって言った内容が分かるよ。その歳で独立するんだからな」

「そんな立派なものではありませんよ」

「悪い!野暮用だ。またな」

「はい。失礼します」


「もしかして?」

「蘭三郎のママを預かってる親分だ」

「やっぱり」

そのとき、彼の携帯が鳴った。

「イシハラ達も自由が丘に居るんだって」

「あ、ほんとだ」


「おはようございます」

「おはよ。何だ今日オフでいいって言ったろ?」

イシハラくんとコマツくんは、顔を見合わせて笑った。

「コマツさんが朝からじっとしてられないって電話があって…俺もそんな感じでして」

「イシハラさんに付き合ってもらって、いろいろ用足しをしていました」

「そっか」

「で、ボス…問題が発生しまして」

「どうした?」

「店舗を管理してる不動産屋なんですが、借主が18歳だって言ったら難色を示しまして」

「あ?契約書を交わすだけじゃなかったのか?」

「家賃も90万まで下げさせたんですよ。契約書や約款も目を通したんですが何もそのような

 誓約はなかったんです」


それは、当然のことと言えば、当然のことだった。



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