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ユイ2

高校に進学して、2人の先輩と出逢った。


しかしバカなことを繰り返してきた私でも入れた学校だ。

ユミ先輩やユカ先輩以外に楽しいことはなかった。


クラスのみんながショットバーに行くという話で盛り上がっていた。

私は興味が無かった。


「ユイ、行かないの?」

「うん、行く気しないな…」

「そこのショットバーってさ、ユミ先輩とユカ先輩がバイトしてるんだって」

「先輩が?」


私もショットバーに行くことにした。

結局、怖気付いた人間ばかりで、私とメグミと男の子2人の4人しか参加者は居なかった。


制服ではさすがに入店させてもらえない為、駅のトイレで着替えた。

荷物は2人ずつ、コインロッカーに詰め込んだ。


「いらっしゃい!」


ウェイターがカウンターのイスを引いて座らせてくれた。


カウンター越しに先輩は居た。

「あら…1年生?こんなとこで何してんの?」

「デートなら違う場所にしなさい」


同級生の男の子達は、そそくさと店を出て行った。


「1杯だけ出してあげようか?」

「はい!」


私は、仕事をしている先輩の姿を目で追っていた。

カウンターには、先輩目当ての客がたくさん居た。

私はメグミと会話することも無く、ずっと先輩を見ていた。


「名前は?」

「ユイです」

「メグミです」

「もう来ちゃダメよ?」


ユミ先輩が内緒話をするように、顔を近付けた。


「私とユカも歳ごまかしてるんだから」

「そうなんですか?」

「アンタ達みたいな子供に先輩なんて呼ばれてるのがバレたら、私達もバレちゃう」

「ごめんなさい…」

「もうそろそろ上がるから、一緒に帰ろ。アンタ達だけじゃ危ないから」

「はい」


店を出て5分ほどで、ユミさんとユカさんは出てきた。

「帰るよ」

「はい」


帰りの道中、私達は話していた。

「ユイだっけ?3年の男の子達にずいぶん人気あるわね」

「そうなんですか?」

「今年の1年にすごい可愛い子が入ったって、みんな言ってるわよ」

「彼氏、居るの?」

「居ませんね」

「アンタみたいな子は、うんと年上の方が良いわよ」

「そうですか?」

「ヤンチャ坊主だけはやめなよ。地元で有名なだけとかは論外」

「そうよ。社会に出てみたら、そんなの大したことないんだから」

「勉強になります」


私はそれからユミさんやユカさんと一緒に居る時間が多くなった。

少し大人で2人の先輩と一緒に居るときの背伸びが、妙に心地良かったからだ。


学校に居るときは、制服の着かたを真似した。

私服も同じように真似し、化粧の仕方も教わって真似した。


私のことを可愛がってくれた、ユミさんやユカさんが卒業するとき、私は泣いた。

「先輩、卒業おめでとうございます。やっぱり、寂しいです…」

「ユイ、またどこかで逢えるよ」

「連絡先、教えとくから」


それから私は、学校に居ても居場所が無かった。

後輩は論外、同級生とは合わなかったからだ。

唯一、メグミが話す相手だった。


たまに学校へ行くとメグミだけは、私に話し掛けた。

「ユイ、出席日数足らないんじゃないの?」

「このままじゃ、そうかもね」

「そうかもねって、留年や退学に…」

「別にそれでもいいよ」

「ユイ…」

ユミさんやユカさんが居なくなってから、私はまた孤独になった。


学校の男の子達にチヤホヤされても嬉しくはなかった。

その態度を見て、女の子達が遠ざかっていった。

そして遅刻や早退を繰り返し、休むことも多くなった。


「ごめんください!」

「はい」

玄関のドアを開けると、見知らぬ若い男が立っていた。

「ユイさんかな?」

「アンタ誰?」

男は私の学校の教諭で、オガタと名乗った。

正確に言うと教諭の卵で実習生だった。


「ちょっと入っていいかな?」

「誰も居ないから嫌だ」

「じゃあ、単刀直入に言おう。お前ちゃんと学校に来いよ」

「私の勝手でしょ。帰って」

「帰るがお前がちゃんと来るまで、毎日来るからな」

「バカじゃないの」


それからオガタは、本当に毎日やって来た。

真面目な男で、教師という情熱に酔っているような男だった。

不思議とオガタと話していると孤独から解放されたような気がした。

私はオガタを部屋に入れるまでになる頃には、オガタを受け入れていた。


オガタと私は、男女の仲になった。


もちろん世間では、モラルが低いだとか言われるだろう。

しかし私はそれでも良いと思った。

私達は付き合うようになり、学校へ行くようになった。


久しぶりに登校した日の朝。


教室の後ろの黒板に、私とオガタの関係を中傷する落書きがあった。


「ユイ!」

「メグミ、これ誰が書いたか知ってる?」

「う、うん…」

「ちゃんと答えてよ!」

ざわついていた教室内が静まるほど、大きな声を出した。

「ヒカル…」


ヒカルの席を振り返ると教室から、出て行った。

私は走ってヒカルを追いかけた。

「ちょっとアンタ!」

「何よ!」

私は、校門のところまでヒカルを追いかけた。


「こいつか?教育実習とやったっていうヤリマンは?」

「そうよ!」

ヒカルの男だろうか。

バイクに跨って、シンナーだと思われる缶を咥えながら、私を見た。

「生意気そうなツラしてんな。ヒカル、やっちまえよ」

その男は、ナイフをヒカルに手渡した。


騒ぎを聞きつけた、教師が数人やってきた。

「コラ、何をやってるんだ!」

男はアクセルを全開にし、耳を覆いたくなるような爆音を轟かせた。

耳を塞いだ瞬間、ヒカルが私の制服をナイフで切りつけた。


そのとき、私の中で何かが弾けた。

ヒカルの振り回すナイフがシャツとスカートを切り刻むと、私はキレた。


私は、ヒカルを思いっきり平手打ちした。

その拍子で落としたナイフを私は拾った。


「早くバイク出して!」

「ああ、乗れ!」


私はヒカルを逃がそうとはしなかった。

髪の毛を掴んで、ヒカルをバイクから引きずり降ろした。


「離せよ!」

「アンタ何なのよ!」


揉み合ってる間にバイクが突っ込んで来た。

私はとっさに避けたが、バイクに追突されたヒカルの体は宙に浮いた。

自分の彼女をバイクで轢いたのに、男は逃走を図った。


「コラ!止まれ!」


数人の教師が男を制止させ、バイクから降ろした。

男は暴れながら、職員室へと連れて行かれるところだった。


「アンタ、ちょっと待ちなよ!」


私は持っているナイフで男のお尻を刺した。


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