復讐劇 アミューズ
俺は父と村長の娘のミサと一緒に西の約5km先にある王都の大門へと馬車で向かった。俺たちは村の玄関を出て広い青空の下を馬車の2台に乗れながら見ていた。父は馬の手綱を使いこなし何の問題も無く順調に王都へと向かう。塀に囲まれた王都先の方に見えてきた。どうやら今まで気にしてこなかったがここは王都の塀の外らしい。そして、王都は塀があるのに俺たちの住む村には石を積み上げた2mぐらいの壁があるだけだった。すると父が
「ここから先どんなに腹が立ったり、ムカついても手を出すなよ。」
と釘を刺すように言ってきたので、
「はーーーーーい」と間の抜けた返事をする。隣を見るとミサが微笑んでいた。
1時間くらい経っただろうか、王都の前に2人の兵とその鉄格子の門の後ろにいかにも高価で赤の甲冑を纏った騎士が立っているのとその門の横に小さな祭りの屋台のようなが2軒あるのが肉眼で確認できた。
ついに王都の門の前に着き兵に話をして門を開けるのではなく門の隣の下民・外民用ドアを開けてもらいその中に招かれ父が入っていた。俺たちは馬車を守っているよう父から指示され馬車で待機した。
待ってる間、ミサに許可をもらい出店を見にいった。
そこには村では見られない魚や肉などの食材が売られていた。値段は500書かれた札が置いてあるだけで店主はタバコを吸いながら新聞を読んでこちらに気づいてないふりをしていた。
俺は父がそろそろかえってくると思い馬車に戻ろうとすると父の入っていた部屋の扉が勢いよく開き、父が扉から勢いよく出てきて尻餅をついた。肩にはナイフで切り裂かれたような傷から血が溢れ出ていた。
「下民如きにそんな高額な金払えるわけねえだろ!」と大柄で肥満体型で高価な衣服を身につけた50代近くの商人が勢いよくドアを開けて出できた。
「これ以上下がると生活ができなくなってしまいます。どうかご慈悲を」と父が地面に跪いていた。
「黙れ!お前ら下民は俺たちに逆らえないんだよ。地面に這いつくばれ。」と、地面にコインを撒き散らしながら扉の中に消えていく。
俺はその光景に呆然と立ち尽くしていた。目の前の光景がかすみ時がゆっくりスローモーションのように商人の歩みもミサの表情の変化も動く。そして、目の前の光景がフェードアウトし前々世の記憶と感情がフラッシュバックする。俺は気づいた。今まで普通に暮らせたのは全ての記臆と感情を引き継げていなかっただけだった。この、腹の底が煮えたぎるぐらいの憎悪、劣等感、叛逆心はもう抑える事ができない。理性は奪われた俺の手には魔法を発動して作った火炎弾が復讐心を表すようにメラメラと燃えていた。
父の「やめろーーーーーー」という叫び声は燃え盛る火の音にかき消された。
「この国は昔から変わらない。俺を貶めた奴も残酷なカースト制も」
俺は怒りに震え、門の前にいた兵は後ろにいた赤の甲冑を着た騎士に報告している。俺は躊躇なく燃え盛る火炎弾を商人に向けて放つ商人は腰を抜かして地面に座り込んでいる。
火炎弾は商人に直撃したように思えたがそこには赤の甲冑を着た剣士が剣を抜いて立っていた。
「汝。我が国王の定めし法を破りし罪受けてもらうぞ。」
瞬きをすると、目の前に騎士が刀を振り下ろそうと立っていた。俺の体は硬直する。体の細胞の細胞一つ一つが死を覚悟しまぶたを閉じる。しかし、まぶたをまた開ける事ができると父親の体は上半身と下半身が離れ俺の目の前に横たわっていた。目の前が真っ暗になる。ミサはそのばで座り込んで言葉が出ないのか大きく開いた口に手を当てて固まっている。目の前が真っ暗になりそこに文字が現れる。
汝不遇の子なり古の力を授けん。
その文字が消え目の前には剣についた血を振り払った騎士が次の攻撃に入ろうと刀を構えようとした。俺は呪文を唱える。
「アラム・アシード・ナイト」
俺は前々世に使っていた剣を精製する。ほんの数秒で手元に剣を作り騎士の振り下ろした1撃を受け流す。そこから騎士は後ろに下がり声を張り上げる。
「騎士紋章 コマンド カースト」
その瞬間、俺の周りに紫の魔法陣が現れる。俺が生きていた時代にはこんなものなかった。俺は向かって来る鎖を弾いたが剣はすぐに折られ俺の四肢はすぐに鎖に巻き取られてしまう。こんなの三周目で戻ってきた意味がない。剣技を磨く時間だって、前々世の記憶も知識も能力も手に入れていたらこんなことにはならなかった。そして大事な家族をまた失うことにはならなかった。
四肢を鎖で取られながらも俺は固まったままのミサに
「逃げろーーー!」
と叫ぶとミサは我に帰り急いで馬車に乗って村に戻っていった。それを追いかけようとした2人の門番は騎士の一声で追うのをやめ門の見張りにつく。ここにはには亡骸となった父と目の前に立つ騎士が残った。俺は三周目の人生を処刑されて終わることを覚悟した。だからこそ、俺は懇願した。
「父を埋葬させてください。」
「ふむ。我お前なんぞ興味なし。去れ」
「!?」
「罪はもうお前の父が受けた。我の任務は完了している。」と言って門の中へと入っていった。
少し強い風が吹く、残されたのは虚無感と罪悪感を抱いたちっぽけな自分と父の亡骸だけだった
ちょっと残酷ですね。ここから急展開を見せます。