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短調

作者: 海星

 私は世田谷の大学に通っていた。

 だが、友達の多くは鷹津や溝の口といった神奈川県に住んでいた。

 何でも、多摩川を渡ると家賃が一万円安くなるらしい。

 なので友達の多くは川崎市民だった。

 私はよく川崎の友人の下宿先に泊まった。

 友人の下宿先で夜通し遊んで、明け方から昼過ぎまで寝る。

 するとゴミ収集車が音楽を鳴らしながら、近くを通る。

 それで目を醒ます。


 ゴミ収集車の鳴らしている音楽が『好きです川崎愛の街』

 出だし短調で、サビ以降は長調に転調する。

 中々良い音楽だ。

 音楽にそれほど詳しくないが、短調から長調への転調は『夜明け』『生命の始まり』『希望の芽生え』を感じさせてくれる。

 

 短調だけの音楽でも良い音楽もあるだろう。

 それに『暗い音楽』だから『ダメな音楽』などという事はない・・・と思う。


 家の近くのスーパーマーケットは楽しい買い物を演出するために楽しげな長調の曲を流している。

 アピタ、アオキスーパー、ドンキホーテ、平和堂・・・。

 『楽しい笑顔のお買い物』

 曲調だけでなく歌詞も明るい。


 しかし例外もある。

 『酒屋ビッグ』

 「酒酒酒酒ビッグ、酒酒酒酒ビッグ、酒酒酒酒ビッグ、酒屋ビッグ」

 この歌詞を延々狂ったように繰り返す。

 しかも楽しげな曲調ではなく短調だ。

 長調への転調はない。

 『可愛い子牛、売られて行くよ』『可愛いや、良い子だの坊や』みたいな 『ドナドナ』『魔王』を思わせる、最初から最後までの短調だ。

 『死』『終焉』『終末』『不安』を感じさせる店内の音楽だ。


 私は音楽の専門家ではない。

 マーケティングの専門家でもない。

 

 酒屋ビッグがなぜ「よし、じゃあ死ぬか!」という台詞が似合う音楽を流しているのか私にはわからない。

 もしかしたら『酒を楽しく買わせて、急性アルコール中毒になられても責任は取れない』という意味かもしれない。 

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