魔法使い
ボケ「俺、魔法使いになりたい」
ツッコミ「魔法使いになって、何すんの?」
ボケ「空を飛ぶんだ」
ツッコミ「じゃあ、ホームセンターに行って竹箒買ってこいよ」
ボケ「箒は要らないよ。魔法で羽を出すからさ。はっねよー、出ってこーい!」
ツッコミ「呪文にカッコよさの欠片も無いな」
ボケ「ど? 背中に羽が出ただろ?」
ツッコミ「え? おっ、お……おう。出たんじゃない?」
ボケ「じゃない?って何だよ、じゃない?って! ちゃんと心眼で見つめろよ!」
ツッコミ「え? 俺に心眼あったかなぁ……」
ボケ「まず、両方の手の平と手の平を合わせます。そこに、お清めのお塩を少々振りまして、ローリエの葉を頭に乗せて、三分じっくり目を瞑り、タイマーが鳴ったら心の目を開くのです」
ツッコミ「何だろう。怪しい魔術のようでもあり、ただの三分クッキングのようでもあり……」
ボケ「三分で済む訳が無いだろう? 目を瞑るまでの作業工程を舐めんなよ」
ツッコミ「両手を合わせてお清めの塩少々振ってローリエの葉を頭に乗せりゃいいんだろ?」
ボケ「両手合わせてんのに、お前、どうやってお清めのお塩少々振ったりローリエの葉を頭に乗せるんだよ?」
ツッコミ「あ、本当だ。え、でもそれ俺に訊く?」
ボケ「で、魔法を使うんだ」
ツッコミ「ん? 俺も魔法を使うの?」
ボケ「はい、せーのでご一緒に♪ お清めのおっしーお、出ってこーい! 両手にかっかれーい! ローリエの葉っぱ、出ってこーい! あったまーに、乗っかれー!……で、お前何でなんにも言わねーの? この程度の魔法くらいぱぱっと使えよ」
ツッコミ「ごめん。俺、魔法の言葉、『ごめんなさい』と『有り難う』くらいしか知らないから」
ボケ「う? く、苦し……」
ツッコミ「え? どうした? はっ、まさか、今、俺が『ごめん』って言ったからか? ごめん、大丈夫か? あ、また『ごめん』って言っちゃった」
ボケ「ぐぅ!? ……ぐ、ぐ、苦しい……。た、た、頼む。お、お、俺のために、ど、ど、どうか回復魔法を……」
ツッコミ「あぁ、待ってろよ。今……………………………ごめん。やっぱり俺には言えねぇーよ。俺はまだ普通の人間でいたい。恥を捨て切ることなんて、俺には出来ない。あ、また『ごめん』って言っちまってた」
ボケ「ぐぁー!? ぐゎ……ぐ……ぐ……うぅ……。わ、わ、分かったよ。で、で、でも、せ、せ、せめて心眼で、ど、ど、どうすればこの苦しみから逃れられるのか、そ、そ、それだけでも見てくれないか?」
ツッコミ「俺には無理だ。出来ないよ。普通の人間の俺にはお清めの塩を出すことも、ローリエの葉を出すことも出来ない」
ボケ「お清めのお塩とローリエの葉なら、ここに……、俺が持っている。さぁ、誰に遠慮することはない。今こそ、お前の心の目を開くんだ」
ツッコミ「これは笹の葉さらさらの笹の葉だ」
ボケ「ごめん。ローリエこっちだわ」
ツッコミ「ぐぇ。何か苦しい……。とにかく、俺は魔法は使えないから、両手の平合わせた状態で塩を振りかけることも、葉っぱを頭に乗せることも無理なんだって」
ボケ「安心しろ。俺が助手を引き受けてやるよ」
ツッコミ「安心した。お前、絶対に苦しんでないだろ。俺に恥ずかしいことさせたいだけだろ」
ボケ「なぁ、お前さっきから乗りが悪いぞ。心眼くらい、ぱぱっと使おうぜ」
ツッコミ「お前、何でさっきから俺にさせたがんの? お前が魔法使いになりたいんだろ? 自分ですりゃいいじゃん」
ボケ「だっていい年した大人が恥ずかしいじゃん」
ツッコミ「恥ずい自覚あんのかよ!」
ボケ「分かったよ。じゃ、腹も減ったし、夕食、一緒に作ろうぜ」
ツッコミ「なんでいきなり夕食作んだよ」
ボケ「豚肉にお清めのお塩を少々まぶし、両面をこんがり焼いて、お水と一口大の野菜を加ます。ローリエの葉を入れてから鍋に蓋をして二十分煮込みましょう」
ツッコミ「普通の塩じゃ駄目なのか? 笹入れちゃ駄目だろう。さっきローリエ持ってたじゃん」
ボケ「あっ、大変だ! ホームセンター行かなきゃ」
ツッコミ「竹箒?」
ボケ「阿呆、タイマーだよ、タイマー」
ツッコミ「お前に阿呆呼ばわりされたかねーよ。タイマー無いなら時計見てろよ」
ボケ「おう、お前にしては賢いな」
ツッコミ「お前の中での俺の評価はどんなだよ!」
ボケ「じゃ、俺、ホームセンター行ってくるから」
ツッコミ「何でだよ」
ボケ「時計買ってくる」
ツッコミ「携帯見ろよ」
ボケ「おう、お前にしては賢いな」
ツッコミ「だから何で俺の評価そんなに低いんだよ」
ボケ「じゃ、ホームセンター行ってくるから」
ツッコミ「だから何で! 竹箒?」
ボケ「もうすぐバイトのお時間です」
ツッコミ「さっさと行け!」
ボケ「お土産、竹箒とタイマーどっちがいい?」
ツッコミ「時計買え! バイト行け!」
ボケ「はっねよー、出ってこーい!」
ツッコミ「飛ぶんかい!」
ボケ「……お土産、竹箒でいい?」
ツッコミ「飛べんのんかい! もーえーわー」
二人「有り難うございました」