かつて煌びやかだった都市 Ⅰ
さいしょのお話、「かつて煌びやかだった都市」です。
よろしくお願いします。
ライフルを持った少女が一人ビル群の中を進んでいく。
少女の名前はイコ。この荒廃した世界を一人で旅している。
そんな彼女が歩くビル群の建物の窓ガラスは、ほとんどが割れるか溶けるかで元の形をなしておらず、落ちている破片が時折彼女の足元をぱきぱきと鳴らす。
「外は一通り歩き回ったけど、さすがに誰もいないか」
ゴーグルを額にかけなおすと、イコはハァと短く白い息を吐いた。
昔きてたときはこんな感じじゃなかったんだけどなあ、とつぶやくと、彼女はそのまま一つの建物の中へと入っていった。
「確かここの地下には音ゲーがあったと思うんだけど……」
地図端末を片手にその建物の地下へと入っていくが、そこはすでにイコの求めたリズムゲームが立ち並ぶ平和な施設ではなく、多くの武器弾薬がストックされていた武器庫のようだった。
「やっぱり4000年以上前の地図じゃあほとんど変わってるよね。建物が残ってるだけでもいいほうか。というかほんとにすごいな、建物ってこんなにもつものなんだね」
後で武器を機鋼城に積むために再度立ち寄ろうとマーカーとなるライトを一つ、建物の入り口に置いておく。
そうしてかつての思い出の場所を後にすると、今度は別の方向へと歩き始める。
「なつかしいなあ。何度も通ったのに一回もここで買い物したことないや」
イコが目の前の建物の中に入っていくと、そこには駅の改札があった。
入る前は風化により大きく崩れていてここがどこなのか理解できなかったが、中に入ったら入ったで今度は兵器を大量に並べるなど、何かしらに備えた手が加えられて、ここがどこなのか判別がつかない。
「いやいったいどんな魔改造だよ……」
頭を抱えるイコがそのまま先へと進んでいくと、一台の電車が線路の上にとまっていた。
電気系統は死んでしまっているので当然動かすことはできないのだが、イコは興味本位からか、その電車へと駆け寄り、割れた窓が自身に刺さらないようにすべて丁寧に折ってから車内へと踏み込む。
そこには、両の手の指を絡ませて座る人骨たちと、床に何かで掘られたメッセージが残っていた。
読んでくださりありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。