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神田の小話『キミは卵だけどなんとかなる』

作者: 神田かん
掲載日:2020/05/08

朝。お腹が空いて起きた。どうしてもウインナーと卵焼きが食べたくなった。近くのコンビニで安いウインナーと4個入りの卵を買った。


フライパンに火をつけて温まるまで待った。奮発して卵2個にしようと思って、勢いよく1個目を割った。


中からクジラの赤ちゃんが出てきた。


すぐに水槽を買ってきた。その日から僕の生活はがらりと変わった。最初はものすごく心配だったけど、クジラを置いて会社に出社した。しかしやがて僕は会社をやめて、海の近くに引っ越すことにした。


クジラはすくすくと育っていった。とっくに水槽からは卒業していて、海で放し飼いすることになった。大きくなると、次第に食べる量が増えるので困った。オキアミやイワシを大量に食べるから。それでも僕は頑張ってオキアミやイワシを捕ってきては食べさせた。


同時にどうやってエサを捕獲するのかもちゃんとレクチャーするようにした。会社でのプレゼンテーションがここで初めて役に立ったと実感した。やがて自分で捕って食べられるようになった。


次第にクジラはひとりで生きていけるようになった。ある日、そろそろかなと思って、僕は船を出して一緒に沖の方まで出かけた。シャチやイルカが新人を見るような目でクジラを見てきた。僕がにらみつけると彼らは深海に潜っていった。ウミガメがぱしゃんと浮上してきて、ちらっと目線を送ってからまた潜っていった。


すごく向こうの方で潮が上がるのが見えた。ここにクジラがいると察知して、他のクジラが合図を出しているらしかった。別れるのは悲しかったが、持っていたオールでバシャバシャさせて、行けと言った。クー、クーと鳴いたので、行けと叫んだ。


悲しかったが振り返らずに僕は必死に漕いだ。それでも心配だったので振り返ると、クジラは仲間のもとへ進んでいた。安心したがすごく寂しかった。その時初めて気づいたのだが、僕はクジラに名前を付けてなかった。涙がぽろぽろこぼれた。持っていたタオルで涙と鼻水を拭った。それでもやっぱり我慢できずに「クジラ―ッ」と叫んだ。


そしたら地平線の方で無数の「クー」が聞こえてきた。ありがとうに聞こえた。


岸まで漕いでいる途中で、そう言えばクジラって哺乳類だよなと思った。

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