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JOB.9:最初デ最後ノ自由。


「ん…」


部屋を暖めていた日差しが弱まり、蜂蜜色に変わる頃、

静香は僅かに身動ぎし、目を醒ました。

上体を起こし目を擦る。

緩やかに欠伸をして、脳に、徐々に酸素を送り込む。

「そう、か…」

此処は、窮屈な鳥篭の中では無い。

黄泉路に渡るまでの、暫しの自由。

おそらく…いや確実に、最初で最後となる。

その束の間の自由。一人でいるのは忍びない。

静香は寝台から起き上がる。

シーツを丁寧に直し、学生服の皺を伸ばす。

備え付けの鏡で、身なりを整え、部屋を出る。

持って行く荷物など無い。この身一つだ。

ようやく正常に動き出した頭を回転させながら、階下に降りると、

麗子が台所(キッチン)で料理をしていた。

おはようとウィンクされたので、にこやかに笑みを返す。

「もうすぐ出来るから、テーブルで待っていて頂戴」

言われた通りに広間へ向かうと、窓際のテーブル席で、御影と、

少年と言っても差し支えない外見の、けれど雰囲気で同姓と分かる小柄な少女が、

なにやら真剣な面持ちで話しこんでいた。

「〈腐爛千鳥(タダレチドリ)〉や〈風斬斑猫(カゼキリハンミョウ)〉は、問題無いでしょう。けれど〈黒影紡(クロツムギ)〉は――」

「厄介ってか?大丈夫って。奴は弱点突けば急速に力失うんだ」

「そうですか。なら大丈夫ですね。…あ」

そこで御影が、カウンター近くで所在無さげに佇む

静香に気付く。

「静香さん、起きたんですね。良く寝れましたか?」

涼やかな微笑、先程の真剣な面持ちとは違う。

「それはもう。久しぶりに良く寝ることが出来ました」

いや、もしかしたら初めてかもしれない。

「それは良かった」

うんうんと頷くと、御影は静香に少女を紹介した。

「彼女は、僕の仕事仲間です」

煙草を加えた少女は、手を差し出す。

そのまま握手。

「よろしくなお嬢さん。坂上 飛鳥だ」

「宮大路 静香です。宜しくお願いします」

形式ばった挨拶を終え、静香も腰を下ろす。

「今宵の段取りを確認していた所です」

仕事の表情に戻った御影が告げる。

「安心しなよ。アンタは絶対オレらが無傷で届けてやるからさ」

飛鳥がぽんぽんと静香の肩を叩きながら笑う。

「お願いします」

飛鳥につられ、静香も笑う。

しかし、その表情はどこかぎこちない。

(まぁ…仕方ないですよね)

命の猶予が切れかけている時に、真の笑顔は出ない。

「さあ、出来たわよ。暗い話は止めて、食べましょう!」

料理を盆に載せて、麗子がやってくる。

狐色の揚がった海老。

ふっくらと湯気が上がる焼魚に大根おろし。

特製タレがしっかりとからんでいる豚肉のソテー。

最後は、赤いクコの実が乗った杏仁豆腐。

「どれもウメぇ…」

飛鳥の頬が、満足げに緩む。

御影も、確かに、と舌鼓を打つ。

静香も、おいしい…、と呟いている。

「良かったわ」

弾力がある杏仁豆腐を口に運びながら、麗子は嬉しそうだ。

作った甲斐があった、と笑う。

皆もそれに吊られる。


それは、果たして最後の団欒か――――




四人は、天井の蜘蛛の巣には気がついていない。






裏話。


麗子さんの手料理が振舞われてますね。

おいしそう(^^)

てか、彼女料金取らないと、ねぇ?

経営上手く行ってるのかな?(笑)


ここにも、伏線ありますねぇ。

これは、さすがに気付かれたかな?

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