JOB.15:熾烈、黒キ玖刻ノ使徒。
「劉黒杖一つ封じただけじゃ、〈鎮静屋〉は止められませんよ」
そう言うと御影は、更に白砂利を投擲する。
すさまじい膂力で、静香を掴む脚の根本を破壊する。
静香は、芝の上に落ちた。
動く様子は無い。
気絶、しているようだ。
静香を〈朧蜘蛛〉が拾う様子も無い。
己を攻撃する不遜な輩のことで、頭が一杯なのだろう。
「其れで良いんだ」
砂利を弾きこちらに進んでくる歪な蜘蛛を眺めながら、御影は嗤う。
御影は、背後にある松の枝を、適当な長さに折った。
握り締めて。
「さあ……」
タイミングを見計らう。
――今。
怒涛の勢いで流れてくる脚の乱れ撃ちを躱し、懐に転がり込む。
後、松の枝を脚の一つ、その関節に差し込む。
そのまま腹の下から、全力で駆けて、抜け出る。
「弾けろ」
力を籠めた松枝に、号令。
――ばちばちばちばち
爆竹のような激しい炸裂音が耳朶を打つ。
松の針葉が、鎧足を内で爆裂、脚を内部から破壊したのだ。
〈朧蜘蛛〉の背後を取った形になった。
御影は出来る限りの力で、いくつもの砂利を遠く霞んだ夜色の空に撃ち出す。
御影によって投げ出された砂利は、一定の高さまで昇ると、重力に囚われる。
そこで、御影は砂利に籠めた〈玖刻〉を護る為、いや今は一人の乙女を護る為の力を解放した。
砂利が破壊の弾丸雨となって、〈朧蜘蛛〉に降り注ぐ。
――ギィィィィイィィィッ
〈朧蜘蛛〉が耳障りな呻き声を上げる。
「おかしいですね」
御影は、学帽の下で目を細めた。
「弱っているのは確かですが、手応えがまるで感じられない」
劉黒杖から消えつつある縛り糸を眺めながら、御影は呟く。
と、倒れ伏していた〈朧蜘蛛〉の黒塊から、幾つものおぞましい触手が、静香に伸びる。
「っ!」
間に合わない。
だが、触手が静香に辿り着くことは無かった。
刻まれる発砲音。
「ボケーッとしてんなよ淳一郎!」
飛鳥だ。
壮麗な、女神の名を冠する銃を両手に携え、静香の前に、彼女を護る騎士のように仁王立ちしている。
「神に喧嘩売るのは、上等だ。カッコイイよ」
口に銜えた煙草をピコピコと動かしながら、飛鳥が喋る。
銃声は止んでいない。
冷酷無比に〈朧蜘蛛〉の脚部の関節を、玉虫色が精確に撃ち抜いていく。
「だけどよ、最後までしっかりやってくれよな」
やれやれと首を振り笑う飛鳥に、御影は心の中で深く頭を下げた。
「はい」
御影は、ようやく自由になった劉黒杖を天高く掲げた――
裏話。
もうクライマックス寸前ですね。
なんか物寂しいような気がします(-_-;)
とりあえず、この回では、「御影君強いじゃん!」
と、思ってくれれば、著者は満足です(笑)
〈玖刻〉に属する事象の全ては、〈鎮静屋〉である御影に跪くのですね。
凄いよ御影!やったね!(笑)
この調子で、最後まで頑張ろう!




