JOB.14:終ワリノ始マリ。
「〈朧蜘蛛〉かッ!?」
御影は、静香の跡を辿るように門を潜る。
白砂利と大岩でつくる枯山水。
大きな松の木が、堂の周りに生えている。
「!」
――草臥れた堂の上には。
甲殻類のような八の脚に支えられた、大きさ三〇尺程の黒い塊が堂々と存在していた。
夜の闇から力を供給されるように黒塊はぞわぞわと蠢き、震えている。
「奴が」
魂喰いの〈怪異〉――〈大名朧蜘蛛〉である。
「神の名を語る…醜悪な化物」
御影の黒檀色の瞳が、前日の色を取り戻した。
炯々と燃え上がり、されど冷徹。
「いらぬ犠牲は今日で終わりだ」
一切の人間的感情を捨てた、現象排除機構。
「返せ」
殺戮人形と化した御影が、洋杖を抜く。
「劉黒杖――」
黒塗りの表面に、呼応するかのように波紋が走る。
くぁぁぁ、と〈朧蜘蛛〉が、月夜に吠えた。
――それが、始まりの合図だった。
〈朧蜘蛛〉が、松を薙ぎ倒しながら、白砂利の海に飛び込む。
御影はすかさず駆ける。
「鍵突」
劉黒杖に特別な力を流し込み回転をかけながら、脚の一つに高速で撃ち込む。
固い。
貫通せずに、弾き飛ばすだけに終わる。
それでも、〈朧蜘蛛〉は姿勢を崩し、白砂利を撒き散らしながら、大岩にぶつかり転ぶ。
オォァアァァァァァ―――――
〈朧蜘蛛〉が、怒りで吠える。
八の脚のうち、前方に突出している四が御影に頭上から降り注ぐように襲い掛かってくる。
御影は、飛び退りどうにかその破壊の雨を躱す。
「次こそ――」
御影が、劉黒杖に流し込もうとしたその時。
ばすんという、奇妙な音と共に、劉黒杖から、白い糸が吹き出してきた。
白糸は、黒い杖を染め、完全に束縛する。
「な…」
なんだ、これは。
御影は、手元を驚愕の表情で眺める。
横から、二の脚が滑り込んできた。
「ッ!」
腹部に見事に決まり、吹き飛ばされる。
「ぐっ…これは、まさか」
〈大名朧蜘蛛〉の、縛り糸。
獲物を抑え込む為の。
それが、事前に仕込まれていた…?
――何時?
「!」
繋がる。
鎧の脚の攻撃に晒されながら、御影の中には白昼の飛鳥の声が蘇っていた。
『げ、クモの巣。姐さんしっかり掃除してんのかよ』
麗子が、掃除をおろそかにすることはありえない。
それは、おそらく〈朧蜘蛛〉の使い魔だったのだ。
この〈怪現象〉は、既に感づいていたらしい。
「お利巧なことで」
砂利を握り、立ち上がる。
「けれど、一つを封じただけだ」
力を流し込み、投擲。
「甘い」
砂利が、弾丸の如き速度で塊を撃ち貫く。
〈朧蜘蛛〉が、痛痒を感じて月夜に吠える。
「この〈玖刻〉にある万物が、〈鎮静屋〉の武器です」
御影は、学帽を抑え、静かに言い放った―――
裏話。
さぁ、遂に始まりましたよラストバトル!
自分的には、〈朧蜘蛛〉が、某サバイバル(?)ゲーム「ピク○ン」シリーズに出てくる敵さん「ダマグモ」と重なってしまいます(笑)
そんな奴に負けるなよ黒ピ○ミン!
…じゃなかった(汗)
頑張れ、御影!




