JOB.11:荘厳嵐。
「さぁ、出番だよシスター」
飛鳥はそう言うと、腰に手をやった。
そこには二つの鰐皮の吊鞘。
飛鳥は紫煙を燻らせながら、得物を抜く。
「〈神留弥〉、〈神漏美〉」
側面に彫刻が刻まれた美しいフォルム。
グリップは黒に、銃身は白銀に輝く壮麗な銃だ。
時代を超越したような洗練された雰囲気がある。
「オレの家に、遥か西から伝わって来た、珍しい〈導具〉」
愛しげに、二梃の銃を眺める。
「淳一郎、静香。ちょっと待ってな」
篝火と同じ周期で揺れる飛鳥が、そう言うや否や、消えた。
いや、どうやら高速で前方に跳んだらしい。
「み、御影さん」
静香が、心配そうに御影の方を向く。
「大丈夫ですよ静香さん。彼女は、強い」
御影は、艶やかに流れる煙の中で舞う飛鳥を見ながら力強く言った。
その飛鳥はと言うと、スカートが翻るのも気にせず大きく跳躍する。
鎧の如き甲殻を軋ませながら、蟲が彼女に迫ろうと動く。
〈風斬斑猫〉が、鎌のような前肢を振るった。
真空の衝撃波が生まれ、飛鳥に肉薄する。
「甘いな」
飛鳥は、周りを漂う煙草の煙で衝撃波を先読みし、華麗に躱す。
衝撃波は呉竹を薙ぎ倒し霧散した。
「んじゃ、こっちの番」
飛鳥は石畳に着地すると、先程衝撃波を放った個体に狙いを定める。
腕には余裕を持たせながらも、確実な照準。
飛鳥の手が、引鉄に掛けられる。
――撃発。
玉虫色の弾丸が、硝煙と共に、荘厳なオブジェから音速で吐き出される。
それは静かに空を切り裂き、衝撃を伴い確実に獲物を貫いた。
――沈黙。
〈風斬斑猫〉が、音も無く崩れ落ち、瓦解する。
「ちょろい」
飛鳥が、嗤う。
ぎぃぃ、と〈蠕動百足〉が焦燥したように頭を振ると、幾つもの足を使って、跳ねた。
長い身体が宙を舞い、飛鳥を押し潰さんとする。
「馬鹿」
自分で弱点晒す奴がいるか、と呟きながら、膝を突いた姿勢で集中射。
焼きついた薬莢が幾つも吐き出される。
〈蠕動百足〉の身体が、空中で痙攣し、弾ける。
瞬間的に、何発もの弾丸が刺し貫いたのだ。
――物の数分の出来事だった。
まさしく怒涛の勢いである。
「さ、行こうぜ?」
手馴れた動作で拳銃を鞘に納めると、飛鳥は何事も無かったかのように、歩き出す。
「………」
静香は、驚愕で眼を見開いている。
「だから言ったでしょう?強いって」
御影は、驚愕覚めやらない静香の手を引き、石畳を再び歩き出した――
製作裏話。
ついに、本格的なアクションが来た!(笑)
書いてて、痛快です(^^)
えー、飛鳥が使っている銃の名前。
あの二つ。名の由来は、『広く女の皇祖神またはその他の女神の総称』です。
つまり、言い方が違うだけで、二つとも同義なのですね。
飛鳥は、女神を従えているんですねぇ(笑)
…彼女らしいや。




