表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さえこさん  作者: 古木花園
6/14

第1章 黒目秋人

バタン!

閉じられた扉は勢いよく音を立て、冷えた冷気を閉じ込めた。今は夏だと言うのに身震いしてしまうほどの冷たさ、一同に底知れぬ不安が脳を過ぎる。白石は手持ちの懐中電灯を付け入口を照らす。

それを見て、男子2人も後に続いた。


「田中くん、田中くんが冴子の霊かもしれないものを見たのは童子の廊下だったのよね?」


突然声をかけられ少しビクッと肩をあげたがすぐにうんと頷く。


「あの時は気が動転して、しっかりは見れてなかったけど、あれは間違いなく高島冴子だった。」


「…なら、廊下の条件を思い出してみましょう。確か、昔、小学生も合同だったころ、男子生徒と女子生徒が2階の長い廊下を走り回っていると突然、その姿をパタリと消してしまったっていう。まだそこを走り回る足音が聞こえるって話だったわね。確か、女教師の霊が出ている時間帯に出ると言われているわ。女教師の呪いに関係しているって事ね」


「首吊り女教師…」


黒目は1番有名な七不思議のひとつ、首吊り女教師の噂を思い出す。

首吊り女教師、この学校が出来て間もない頃、新人の若い女教師は小学部の生徒を担当していた。

しかし、時々、高等部も担当することがあり、勉強の遅れている生徒を主に担当することになりその時に担当していた生徒は皆、男子生徒だった。

その男子生徒たちは頭が悪く、そしてとても危険思考な生徒たちだった。

問題をよく起こすことで有名で、新人教師に任せるのは危ないと言われていたが、女教師はその持ち前の明るさとやる気で私がやります!と、担当を申し出ていた為に彼女に任せることになった。

しかし、ある日、いつもと同じく特別授業を1階の西教室で行っていたところ、1人の生徒が授業中であるにも関わらず机に座り先生に対して淫靡な言葉を浴びせかけた。

最初は注意しながら軽く受け流していたが、途端にエスカレートしていって別の男子が立ち上がり女教師を後ろから羽交い締めにした。

そこからは男子生徒たちが女教師に群がり、獣のように組み伏せた。それは凄惨を極めた。

途中で様子を見にきた教師が止めに入り、なんとか止めたがその時は彼女は乱れた姿で横たわっていた。

襲った生徒達は直ぐに退学処分になり、少年院におくられた。しかし、女教師が受けた屈辱と体に受けた傷は治るわけがなかった。

最初は気丈に振舞っていたけれど、後ろにどす黒いものが渦巻き、誰がどう見ても痛々しい笑顔で見ていられなかった。

それが数日後、彼女が無断欠勤した日、あまり使われない西側の教員用女子トイレで首を吊って死んでいたのが見つかった。

そして、そこは封鎖された。


今も男子生徒を恨み、その重たい呪いだけが「首吊り女教師」としての存在。そんな呪いが神隠しや事件の原因だと言われている。

この「童子の廊下」も同じだ。

一行は「増える階段」に差し掛かる。

この「増える階段」はもっとも古い怪談話だとされるが1番信ぴょう性のないものだとされる。どこにでもある怪談話であるし、この噂は小学部から流れ始めた噂を元にした怪談なだけあってまず夜にわざわざ階段の数を数えたのか?とか、登って行ったやつは死んだとか、増え続ける階段を永遠に登っていく、とか、ならどうやってその話が伝わったのかと思える怪談話で誰も信じていない。

黒目は鼻で笑いながら階段に差し掛かろうとする。


「ちょっとまて!」


田中の大声にビクリと震えながらも、今度は別の意味で震える黒目が額に青筋を浮かべながら振り向く。


「てめぇ、いきなり大声出すんじゃねぇぞ。つまらんことだったら殴るからな」


「黒目、ここは増える階段だぞ?知らないのか?」


田中は顔を伏せ恐怖のため震えている。

黒目は生唾をゴクリと飲み込んだ。


」登ったら最後…お化けにくわれるぞおおおおお!!!」




黒目は階段を登りきり二階に到達した。

階段上から後ろの白石が、そして腹を辛そうにおさえている田中を見る。とても辛そうだ。お腹を下したか、それとも「首吊り女教師」の呪いだろう。

「可哀想に。良い奴だった。」


「じゃあね。田中くん。またどこかで」


「…ま、まて、おいてくなぁ…ぐふ」



2人が2階につき、途中で左に曲がり真っ直ぐ進む長い廊下を小さな光で照らす。

真っ黒でボロボロの校舎はそれだけで怖いというのに七不思議とこの足を踏み込むと嫌な音を立てる床のせいで余計に怖くなる。


「二階の真っ直ぐの廊下…今は1時15分ね。条件は時間だけ。そして、男の子がいる。条件は揃っているわね。」


白石は後ろに着いてくる2人を横目でお互いに確認する。

誰かは分からないが、いや、3人ともかもしれないが固唾を呑み込む音だけが聞こえた。


「じゃあ、進むぞ。」


ギィ、ギィ、と軋む廊下をゆっくり1歩ずつ進んでいく。

ひび割れた窓ガラスに光が反射し怪しく光る。

もぬけの殻になった教室は机と椅子が乱立に立ててあり授業が出来る雰囲気はない。昔は使われていたが新校舎が出来てからは1階の技術室のみ使われていたのでほとんどの教室が空き教室になっていた。

ゆっくり進む中で霊や走る足音など聞こえてくる音は自分達の足音だけで他にはなかった。


「これ、何にも起きないんじゃ…」


田中がそう言いかけた時、バタバタっ!と激しい音が教室から聞こえて田中が大きく悲鳴をあげた。

白石はすっと体制を低く構えライトで教室を照らす。窓から覗こうとするが光の反射で上手く見れない。

黒目が先導し、教室のドアの取手に手をかける。

2人を目視し、合図とともにドアを思いっきり開けた。


「誰だ!」


黒目の言葉と同時に真っ黒い物体がバタバタっと黒目の顔を目掛けて飛んできた。そんな物体を一瞬汗を流したが、瞬時に手が反応しその奥に謎の物体を片手で鷲掴みにする。

その掴んだ物体は激しく抵抗するように動いた。


「な、何だこいつ!?」


戸惑う黒目の横から白石がライトでゆっくり照らす。

そしてその真っ黒い物体の正体が晒された。


「黒目くん、それはコウモリね」


「うわぁ!」


黒目は慌てて離し、手を驚き過ぎて意気消沈している田中で拭く。


「あっ!てめぇ、コノヤロー!!」


コウモリだとわかり意識を取り戻した田中は顔を真っ赤にして怒るがそんな顔もすぐに真っ青になった。


「うぁー!!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ