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さえこさん  作者: 古木花園
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序章1

教室を静寂が支配する中、皆の視点は一点に突き刺さっていた。

そんな視線に何を勘違いしてるのか目を逸らしながら顔を赤らめる猿が1匹。


「そ、そんなに見つめられても。モテるって辛いよなあ」


一瞬、呆れという間が空いたような気がするが、すぐにずれ落ちそうな黒縁眼鏡を整えた赤松が質問する。


「おい田中。いい加減なことはこの場で言うんじゃないぞ、警察が必死に捜索して見つからなかったのにどうやって見たって言うんだ!」


そんな質問に猿は自慢げな顔をこれでもかと上にあげ胸を張った。

「冗談とかじゃないぜ!俺はみたんだ。この隣の校舎、旧校舎の廊下で歩いてるのを」


また静寂が戻ってきた。しかし今度は凍りつくような静寂だった。

田中の馬鹿な発言はいつもの事だが、旧校舎は

馬鹿な発言、だけで締めくくれないものがあった。


旧校舎。創立から約30年、木造建築でずっとその姿を変えずに立っていたコの字型の二階建て校舎。

しかし新校舎が出来て、もう取り壊しが決定したがいつ壊すかは未定な校舎。

この校舎はいまだ多くの謎を残していることでこの高校に通うものならみな知っていると言うほどの怪奇現象がある。

七不思議とされている怪奇現象。

ひとつは「走る人体模型」2つ目は「増える階段」

3つ目は「鏡の幽霊」四つ目は「4の扉」5つ目は「童子の廊下」6つ目は「叫びの音楽室」そして、7つ目は「首吊り女教師」

どれも霊的類のものとされる7つの怪奇現象だがこれら全部が見た、聞いた、体験したなど本当に起きたとされるものばかりなので信ぴょう性があるかないかはいささか問題だが、しょうもない怪談話と切って捨てたりは出来ない。

なんせ、生徒達が肝試しだけで体験したなどだけではなく、夜回りの先生も同じく体験したと言っているほどなのだから。


「俺は去年の夏肝試しで校舎に行ったんだ、そしたら、童子の廊下で冴子さんが廊下を歩いているのをみたんだ。」


「それだとまるで幽霊として、旧校舎に現れたってことになるじゃないか。」


黒目の発言に対して田中はゆっくり頷いた。

「あれは間違いない。幽霊だよ」


がたっ!と音を立て田中から一斉に音の発生元を注視した。

そこには立ち上がった白石が、顔をうつ向けたま小さく震えていた。


「ごめん、ちょっと外に出てくるね」


白石が通る道を群衆が開いて一本道が出来上がる。

そこを素早くかけていった。


「あ、ご、ごめん、白石さん!やべー、まずったかな?」


田中の声が聞こえる前には白石は教室から出ていった。田中は気まずそうに顔をかくがみんな下を向いた。


「おい、田中今の話本当かよ!?」


声を荒らげたのは小林 悟。髪を赤く染めたつんつん男で、目がとても鋭く素行の悪い不良として知られている。

そんな小林は田中をその眼光で睨む。

しかし田中はそんな睨みも屁の河童と「本当にきまってるだろ!」と言い返せる程だった。

小林は肩を落とす。気持ちが沈んだことを表しているがそれは小林1人ではなかった。

皆一様に落胆の表情を見せていた。

「旧校舎はまずいよ。本当じゃん…」

クルクルとパーマをかけた長い髪の先端を指でもてあそびながら、それは不安の現れか、いじるのを辞めずに峯岸風夏は1人語る。


「やっぱ、呪いかな…」

その言葉に委員長は弾かれたように声を上げた。


「呪いなどない!あった所で僕らはあの件には加担していないんだ。第一関係の無い田中が見たんなら呪いかなじゃなく、地縛霊みたいなものだろう」


「ちょっと誰か、田中に言い聞かせといて」

風夏はその眼光を田中に向ける。

すると間抜けな顔をビクッと吊り上げ、すっと逃げようとする田中の首元を小林が掴んで引っ張って行った。


「あのことは僕らの秘密なんだ。誰にも知られる訳にはいけない。そう、誰にもね。」

そんな喋り声や思惑も始業のチャイムが全てをかき消した。




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