所持0枚 目を合わせたら、もう始まっていた。
新連載を始めました。
私は西城 奏。
両親は世界的なヴァイオリニストの父と、ピアニストの母だ。
それと私には、お姉ちゃんが一人いる。お姉ちゃんは、「親と比べられる世界に挑む気はないわ~。」って言って、暴れまわ…、世界を飛び回っている。今頃何やってるかな?
両親は、そんなお姉ちゃんに、「人はいつだって自由だ。」とか言って放置。
まぁ、そんなわけで私も自由に青春を謳歌することにしよう。
明日、私は私立ないぎ大学付属中等部に入学する。この中等部は初等部からエスカレータ式に大学まで行ける所謂、金持ちの通う学校だ。なので、私はエスカレータ式に中等部に入学するわけだ。
内部進学者は、編入組と違い試験がないからこの春休みは天国だった。
そう!堂々とひきこもれるのだから!!
いや別に、ヒッキーとかじゃない。太陽は好きだよ?友達さ!でもね~…。外はね、いろいろ変なのがいるから…。
例えば、女子小学生をハァハァしながら見る紳士とか、高校生の目の前で亀甲縛りになる紳士とか、交差点のど真ん中で立っている人とか、ボンテージ姿でサラリーマンを叩くお姉さんとかだ。
まぁその全てが、“普通の人には見えない”。奴ら目を合わせると喜んで絡んでくるから、私はひきこもることにした。
「常識人のおばあちゃんと会って、許可なく建物には入れないことが判明したからなんだけれど…。」
私は家の中でそういう存在を、見たことないから、よくよく考えれば分かることですけどね!!
それと、常識人のおばあちゃんっていうのは、私の家の近所の公園でよく鳩に餌を上げているおばあちゃんのことです。このおばあちゃんのおかげで見たくない変態の…、間違えた。HENTAIの生態について教えてくれた。字面が酷い気が気がする…。
HENTAIは、自分の死んだ場所から一定の範囲しか動けないこと。
その建物の所有者が許しが無ければ、その建物の土地に足を踏み入れれないこと。などなど。
勿論、これを教えてくれたおばあちゃんは見えない存在だが、HENTAIではない。
おばあちゃんは春休みに入る前にこのことを教えてくれて、その時に消えてしまった。
そして、日付は大分経ち。朝のHR前の休憩時間。―――
「楽園が終わってしまった。」
「あはは、そんなこの世の終わりみたいな顔しないでさ!しかも春休みなんて一ヶ月前だよ?」
私が一月前の楽園について思いを馳せていると、隣の席のクラスメートである崎守 光が声をかけてきた。光は、初等部一年の時から同じクラスの親友だ。
艶のある黒髪を腰まで伸ばし、前髪をカチューシャで留めている。丸い眼鏡をかけていて、体育の時にコンタクトにしたときに、目尻の垂れた二重瞼にクリっとした瞳が外気にさらされて、人の注目を集める、密かに人気な女の子だ。
「いや、一ヶ月経ったなら切り替えなよ」
「そうなんだけど…。」
確かにそうだ。だが何も、春休みから今日までずっと言っているわけじゃない。今日に限っては、私は春休みという楽園を思い出していた。うん、現実逃避ですけど…。
朝学校に来たら、教室の後ろに二十代後半ぐらいの白髪で長髪のお兄さんが居たら、ねぇ。しかも目を合わせちゃったから、後ろの立ち位置から移動。そんで私の前に居て前が見えない。ちなみに、私は窓際から二列目の先頭で、光は窓際の先頭。
しかも、今も目を合わせると微笑んできおる…。くそ、これだから爽やかイケメンは!!普通の子ならその微笑みで一発KOだよ!!
キーンコーンカーンコーン…。
チャイムが鳴って、担任の森脇先生が入ってきて、朝のHRが始まりそして、今日の最後の授業が終わるまで、目の前待機…。邪魔だから!!終始無言でニコニコしやがってイケメンが!!
「はぁ…。」
「溜め息をつくと幸せって逃げるっていうよ~。」
「光、ごめん。今日調子悪いから、部活サボるって言っといて…。」
「あらら、大丈夫?今日朝からおかしかったもんね、奏。」
「あはは。」
「やっぱり途中で帰った方が良かったんじゃない?」
「時間が経てば(目の前のイケメンが消えてくれて)復活すると思ったんだけどね…。」
「今日は大人しく寝ること、いいね!」
「はい。」
今日は散々だ…。
「なんで?!」
ええ、私は家に帰った。それは良い。問題はお前だイケメン!なぜ、あんたが家にいる!私は許可なんてしとらんよ!!
「不思議そうな顔をしているね。」
し、喋った…。今日ずっと無言だったから、“喋らないタイプ”かと思ってた。
「僕は、里中礼二。早速だけど君には、魔法少女になってほしいんだ。」
「え…。は?はぁ?!」
待てこいつ、何言ってんだ。
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