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起てよ、狸!

「でも俺、狸より姉上が好きだから!」

狸語りが終わり、微妙な空気が流れる中、イェゼ君がキッパリと言いきった。


姉は狸に勝ちました。

きっとここ、喜ぶとこなんだろうな。

私の反応の悪さにイェゼ君の気炎がシュウゥ~…と消沈していく。


「さっき、ひっついたら困ってたけど、慣れないだけで、嫌…ではなかったんだよね?」

耳がすっかり垂れてしまった子犬と化した彼が、心細そさを纏って、すがるように聞いてくる。

「俺のこと、ちょっとは好き?」


好きだけど、ここで絆されたら敗けだ。

「姉として、大好きよ」

しっかりと予防線は張って、ニッコリ返す。


望んだ答えではなかったのだろう、うう~~と唸っていたが、

「じゃあ、今は弟だけど、いずれは夫って事で」

なんか前向きに曲解された!違うって!


「はぁ?!そんなの駄目って!!」

夫って?!子供がそんな事、しれっと言わない!


「もう観念しなよ。竜種の望みを拒否ったって、逃げられやしないんだから。勝手に外濠、がんがん埋められて、身動き取れなくなる前に、大人しく降った方が得策だと思うよ?」

開き直ったのか、さらりと脅された。

彼のいう通り、竜種の望みとして周りに認識されたら、どんなに刃向かっても無駄だろう。


竜種。遠い昔に竜と人の異種婚姻で生まれた竜の血を継いだ人間はそう呼ばれた。

竜種は只人よりも優れた肉体、智力、霊力を持っている。

その力で竜種は人々を導き、この国を建て、皇帝となった。

厄介なことに、竜種の優れた力は、必ず次世代に遺伝するとは限らなかった。

だから、皇帝職は竜種が選ばれることが多いが、世襲制ではなく、竜種でなくてもよい。


そうして、いつか薄まりゆくと思われた竜の血だが、竜には稀に物好きが生まれるのか、長生きすると変わったことがしたくなるのか、異種婚姻は一度きりではなく、ごくたまに起きた。

いつしか、初代皇帝の血筋以外にも竜種は生まれ、竜種に僅かだが異なる血統が出来た。


竜種の高い霊力は、人の住まうこの世と表裏にある、異界からの災厄を祓うのに非常に有効だった。その為、竜種はいつの世も国の中枢に置かれ、国の守護を担う役割が振られた。

危険手当てとして、竜種は国から手厚く遇されている。


竜種の傑作であるイェゼ君の望みは、国を挙げて叶えるべき優先事項。


竜種の優遇措置に全く異論はない。

彼の望みが、私だってのが、ショボくて嫌なんだ。


この気持ち、古狸さん達は絶体賛同してくれると思う。(番を認めたくない理由は違うとしても)


即刻、狸の集会の開催を切に希望します!!

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