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狸と番

イェゼ君はずっと黙って聞いてくれていたが、話が終わるとこちらから顔を背けて、小さく息をついた。

うぅっ。呆れたよね…。


「姉上…」

ちょっと声は低いが、まだ姉とは呼んでくれるんだ。よかった…。

こちらの少しばかりホッとした空気を感じたのか、イェゼ君がキロッとみてきた。うっ、怒ってる?

「姉上、非道い」

声が不機嫌だ。

「俺と話しながら母さんの事考えてたなんて…」

「ごめんなさい」

「あげく、俺の番じゃないとか?それ、なんで姉上が否定するの?俺の番だよ?」

拗ねた声で言って、むーっと頬っぺたを膨らました。栗鼠みたい~ヤバイ可愛い!顔が良いと何やっても絵になる。

いかん!にやけてないで、必要な事を言わねば。

「君の番だから、より熟考、精査しないと…」

しどろもどろに「考え直して?」と言うと、途端にイェゼ君が呆れたような顔をした。

「まさか姉上から、皇宮の死に損ない共と同じことを言われるなんて…」

はぁ~っと嘆息したイェゼ君は、そのままがっくりと首を落とした。

「し、死に損ない?」

「左大臣とか、皇宮に住み着いてる古狸ども」

項垂れたまま解説きた。

国のお偉方に対して随分と表現が乱暴だ。国の宝と謂われるお子様は不遜だなぁ。


そして、そうですか。

私は古狸と同じなんだ。

古くはないと思うけど、狸と言われるとちょっとうなづいてしまう。外見的な面で。


私はちょっと色が黒い。

写生で外に出ても、他の女子ほど日焼けに気を使わないから。

目は丸くて大きいので可愛いと言われることもあるが(主に身内から)、鼻も丸い、そして低い。うん。狸っぽい。


美少年からすれば、まさしく私は狸だね。


やっぱりどう考えても、君の横に狸が並ぶのは、私の美意識が赦せない。

なんとしても考え直させる!


「死に損ないと同じこと言う狸な姉が番だなんて、残念すぎるよ!ね、番は止めとこうよ」

イェゼ君がぴくっと揺れて、顔をあげた。そこには判りやすく、しまった…!と書いてあった。

「姉上は古狸じゃないよ!ごめん…」

まずった、失敗した…と眉間と口角が言ってる。

そんなにすぐ感情が表情に出てしまって、古狸とやりあえるのかしら?と少し心配になる。


急にイェゼ君は頭をガリガリと掻いてから、こちらを真っ直ぐ見た。

「もー、あいつらはどうでもいい!それより、姉上だよ!」

「え?」

「どうして姉上は、俺の番を拒否するの?」

言ってイェゼ君は少し悲しそうな顔をした。

「イェゼ君に狸は似合わないから」

「姉上は、狸じゃ…、たぬ………き……~~~~っ」

何か葛藤している。

ははぁ。似てないと否定しようとして、私をよく見た結果、狸に似てると気付いたね…。

おーい。目が泳いでるよ~。

「いーよ。狸で。実際似てるもん」

このままじゃ話が進まない。

私の言葉に、彼は一瞬でこちらに視線を戻した。

「あっ、姉上はとてもお可愛いらしいですッ!艶っとした瞳は甘栗みたいだし、肌は健康的で。

…ただ、その愛らしさが、皇宮の森にいた子狸にちょっと似ていて……」

頑張って誉めてくれました。

でも、甘栗に例えて誉めるのは他の人にはやめた方がいいかな。言われた方は微妙だから…。

そして、狸に似てると認められた。

正直、反応に困る。

「俺はっ!子狸が可愛くて、毎日食べ物を持っていった!」

ここでまさかのガチ狸過去語り?!

「あーー、えーっと。古くない狸は、可愛いんだ?」

イェゼ君はブンブンと頭を降って肯定した。

「可愛い。いつも、俺が森に行くのを待っていてくれた。俺も会えるのが楽しみで。姿を見ると癒されたし、大好きだった」

彼は大切な友達の思い出を語るように話してくれた。

この、餌付け成功したって話、何処にいくのかしら…。

ていうか、イェゼ君、ちゃんと人間の友達いる…?

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