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なんの話でしたっけ?

「姉上?」

「え?!あ、ごめんなさい!ちょっと考えに捕まっちゃってた」

イェゼ君の声で我に返る。


しまったボンヤリしてた。

どうも私は、すぐ自分の考えに沈没して周りが見えなくなる。

自分自身は思考中とても忙しい。頭フル回転で、感情のままにジタバタしてる。けどそれは、あくまでも脳内活動なので、端から見ると虚ろな目をして固まった自失の人でしかない。


阿呆に見えるのは、どうせ中身も阿呆だし構わない。寧ろ、内心のジタバタが見透かされてないなら、お釣りが来るくらい。脳内で転げ回ってるなんてバレたら、恥で死ねる。


「あ ね う え!」

彼は隣からこちら側へ上体を向け、膝詰め談判真っ最中な体勢で…あれ?綺麗な顔には、ちょっと拗ねた色が浮かんでる。

しまった!!また私、固まってたね。

えーと、なんの話してたっけ?

あ、『番について知ってること言え』だっけ。

はいはい、それで??と彼を目で促す。

「番って迷惑だよね。一方的にこちらの勝手を押し付けてる。だから、周りには何も言わせないよ。姉上は何も心配しないで」


彼は私が迷惑に思ってるのを看破していた。


優しさが胸に迫る。

勇気のない私は、肯定も否定も出来なくて、曖昧な顔になったけど。

散々、天にも文句を言ったけど。

もう、腹くくらなきゃね。


天秤に乗せられたコーフェ様と父のバランスは、完全に崩れている。

この縁は厄介事を持ち込むと解っている。だからイェゼ君は番に選んだ方に責があると言った。

でも、その言葉に私が甘んじるのは狡いと思う。


目の前に、あのイェゼ・グユエンがいて、しかも手を握って『あなた方は悪くない(超意訳)』だなんて。

いったいどこの乙女向け講談本よ?!


こんなに素敵な男の子が、凡百に埋もれる私に気を使ってくれている。

母親の再婚を応援しようと、私を姉と認めて協力しようとしてくれてる。

迷惑を遥かに凌駕するこの旨味!

この瞬間と引き換えなら、これから先、妬まれたり、虐められても文句は言えない。

あぁ、我ながら、なんてチョロい。


だって、コーフェ様も素敵だけど、やはり、異性で尚且つ未成熟な青い果実のイェゼ君の魅力は半端ない。

子供と大人のあわいでしか醸せない期間限定なエロさを纏った魔美少年。

君さえ良いなら、喜んで仲良くさせてもらいます。


正直これまで、普通の男の子にだって、あんまり親切にされたことありません…。浮かれたって仕方ないよ、うん。


イェゼ君、と声をかけて、その蕩けるような黄金の瞳をみる。

「うちには、どんなに望んだって、到底得られないご縁だもの。番サマサマだよ。ふつつかものですが、これからよろしくね」


イェゼ君の顔がみるみる喜色に綻ぶ。眼福…っと見とれていたら「姉上っ」と叫んで、私の首に腕を回して抱きついてきた。

おぉぅ、天国再び。


「姉上…ありがとう。一生大切にします」

耳許で熱い吐息と共に囁かれた。


………………ん?

一生?なんで?え?どゆこと??


恐る恐る記憶をあさる。

そ、そう、始まりは。

なんで彼が私にこんなに懐いてくれるの?って聞いて…、理屈じゃないんだって…、本能って…、


で、番とは何か知ってるか?ってイェゼ君が聞くから、番の知ってることを言って。


…あ れ?


コーフェ様の番選びの事で頭が一杯になって…。


!!!そこで、私、暴走から脱線してる!!!


イェゼ君がひっついてきた原因、なーんとなく怖くて触れたくなくて、無意識に棚上げして、暴走して、完全に忘れさって。

コーフェ様の番の話をしてました。てへ。


…つまり、私達の会話って、対象が噛み合ってなかったようで…


ぎゃあああ!なにしてくれてんの自分ーーッ!!


ちょ、どうしよう!!!

……これって、詰んでる…?

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