物語を書くために必要な二つの視点
小説を書いていて最近思うこと。
なにを今更、と思われる方もいるとは思いますが、少々お付き合いください。
小説を書こう。
そう思った時、まず何から始めますか?
あ、もちろん、書くための環境は整っているものとします。ペンを用意するとか、パソコンを開くとか、そういったことじゃないですよ。
流石に、いきなり本文を書き始める人はいないでしょう。
見切り発車という人だって、まずはどんな物語を書きたいのかを考えるはずです。
異世界チーレム? 学園もの? VRMMOの攻略?
とにかく、いろんなジャンルがありますが、何を書きたいのか。どの分野の物語にするのか。それを決めなければ始まりません。
さて、書きたい物語の雰囲気を想像し終わりました。今、あなたの頭の中には物語の完成系が浮かんでいます。
これはそんなに厳密なものでなくてもいいのです。大まかな像が浮かんでいればそれで構いません。
ここから先は二つに分かれるところでしょう。
物語の全体像がイメージできたら、次にどうするのか。
簡単に言えば、すぐに書き始める人と、さらにプロットを作り込む人の二種類がいるのではないでしょうか。
まず、いきなり書き始める人。
この人は、頭の中のイメージがかなり強固にできているのでしょう。
自分自身が作品の世界に没頭し、プロットなんてつまらないものを考えなくともキャラが勝手に動き出す。自分も一緒になって楽しみ、冒険を繰り広げていくのでしょう。
プロットを作り込むという人は、先を見通す目を持っている人でしょう。
これから生み出す物語が、どのように始まり、どこに帰着するのか。それをしっかりと捉えられている人です。
これらは、別に、どちらが優れているというわけではありません。そんなことを言いたいのではないんです。
では、何が言いたいのか。
いきなり書き始めた場合、物語は誰にコントロールされるのでしょうか?
この方法で上手くいけばいいのです。きっとその人は、このやり方が合っていたということです。もしくは、よほど才能があったのか。
けれど、ほとんどの人は、この方法で物語を書いた場合、どこかで破綻する。
それは、進む先が見えていないからです。
自分さえもが物語の登場人物に重なっているから、読者に伏せておいた謎が自分でもその正体がわからない。そして、辻褄が合わなくなり、物語世界は崩壊する。
プロットを作り込んだ場合。
最初から最後まで、どこで敵が出てきて、謎を提示し、どこで明らかになるのか。
あらかじめ全てを決めておき、その上で進む物語。それは、とても綺麗に整合性のとれたものになる。
けれど、どこかで筆が止まってしまうでしょう。
何故なら、それは作業と変わりがないからです。
進む先が厳密に決められた世界を綴る。冷静な視線で全てを管理し、描かれる世界。そんな書き方は楽しいですか?
決められた予定の通りに書き起こしていくだけなら、プロットを作る過程で満足してしまいませんか?
私が以前小説を書いた時、二つの方法の両方で書き、どちらも失敗しています。
もちろん、私などよりも実力も才能もあり、こんな小難しいことを考えなくても書けてしまう人はいるでしょう。
ですが、それは少数派ではないですか?
なろうにおける、未完結のままの作品の数がこれを証明していると思っています。
では、どうすれば小説は書けるのか。
その答えは簡単です。
どちらか片方の視点だけでは失敗するのなら、両方の視点を持てばいい。
それが答えです。
主人公に感情移入し、物語に躍動感を与える動の視点。
冷静に先を見通し、物語の形を整え行く先を提示する静の視点。
この二つが掛け合わさることで、物語は輝きを得ます。
当然、簡単なことではありません。
しかし、物語を書く……すなわち、一つの作品世界を構築しようとしているのですから、今更ですね。
作者は、その作品世界をコントロールする存在であり、同時に登場人物の一人でもある。
矛盾しているようですが、その二つの視点を両立させることが出来れば、物語は素晴らしいものになると思っています。
私の意見を他者に伝える、というよりも、他の作者の方の意見を聞きたくて書いたものです。ご意見ご感想お待ちしています。