060 王都の結果
「結局、これでいいの?」
「うん!」
いよいよ本格的に「ゼファーヴェイン・ルカ」には部屋が足りなくなってきた。
1人居住する人が増えたのだ。その少女は、ほくほく顔でイゾルデたちを見つめている。
その中で、ため息を付いているのはシルフィールであった。
思ったい以上の展開になってしまったのだ、この状況を一体どうすればいいのか、彼女にもわからなくなっている。
「どうやってアヴェロンに説明すればいいのよ」
「……ふふふ」
目の前の少女はそんなこと気にも止めていないようだ。
そんなことより、自由になったことを素直に喜んでいる。
なんて言ったって、イゾルデと仲良くなりすぎてしまったのだ。
「まあ、いいや。姓はどうするの、シアン」
「あぅ」
「……フィーリネでいっか。ねえ」
姓が存在しない。そんな状況の中で一体どうするべきか彼女たちは悩んでいる。
そう、シアンティーシャテンである。
機巫女が機巫女をやめて普通の人間となったのだ。
それがどういうことか、ここにいる女性陣はよく分かっている。
「トリストラムでもいいんじゃない」
「いや、でもシアンちゃんは科学サイドだから」
「だからこそ、カモフラージュで私の妹になりましょ」
妹、という言葉にシアンティーシャテンは強く反応した。
いい響きの言葉だ。甘やかされるのに慣れていない自分にとって、その言葉は神からの祝福のように感じられた。
それほど、嬉しかったのである。
「ルカはルカ・フィーリネになったんだっけ」
「はい!」
ルカは役所に行って、シルフィールの娘となった。
シルフィールの娘というのもいい話で、なかなかというものである。
「紋技師」の娘っていうだけで、多分手を出したがる人はいるんだろうが、ルカの特性上そんなことはできない。
「……でも、こう考えると嫌な予感がする」
「何が?」
「もう一人増えそう」
シルフィールは、的確に未来を予想していた。
アヴェロンが聖巫女シルヴィーアマテノヴァルに呼ばれた。
呼ばれたのはいいものの、求婚された場合しかしアヴェロンはシルフィールたちとの生活をも無駄にするつもりはないだろう。
するとどうするか。連れてくるんだろうなとシルフィールは予想しているのだ。
結果的に、それが聖巫女自身聖巫女を引退するつもりでいたのだから一致していたことということだ。
「聖巫女様がここに来るわけ……ないと思うけどなぁ」
「実際にシアンがいるからなんとも言えないよね」
聖巫女がここに来るわけがない、と考えているのはイゾルデだが、それは楽観的に考えた場合だ。
アヴェロンの行動が色々と読めない以上、来ると仮定してもおかしくはないだろう。
シルフィールは様々な予想をする。
だから、アヴェロンがどんな形出会ったにしろ帰ってきた時に、増築を願わなければならない。
もう一つ、シルフィールが面倒だと思ったのは、ヒュリオンのことだ。
「この件。だけは王子様に感謝だね」
「……うん」
今回、シアンティーシャテンを自由にしてやったのは、本当にヒュリオンのおかげとも言える。
ルカがヒュリオンに頼んだのだ。何とか出来ないか、シアンを助けてやれないかと。
諦めたとはいえ、見守っていくと決めた女性にそう言われたら、ヒュリオンも断れない。
結果、王子としての権力を行使したり、機神殿の人々を説得したりと奔走していたのだ。
「あとでちゃんとお礼を言わなきゃね!」
「……うう」
いやだな、と思ってしまったシルフィールだった。
だがそうはいっていられない、今日も彼はやってくる。
ルカを見に来て、ではなくシアンティーシャテンの様子を見に来てだ。
もちろんルカも見に来たんだが、それは少なくともサブでありメインは元機巫女であるシアンティーシャテンである。
「こんにちは」
ほら、きた。
ヒュリオンが店の中に入ってきて、シアンティーシャテンを見つめる。
「大丈夫ですか、シアンティーシャテンさん」
「……うん!」




