059 剣豪と巫女
ロザリオは、微妙な表情で神殿に座っていた。
《§α¢Яa》を持って、力任せに振る。
しかしその重量にも彼が振り回されることはなく、きちんと連携がとれているともいえよう。
休憩のときに、彼に近づいてきたのは聖神殿所属の巫女、ザミェルザーチだ。蒼い髪の毛と蠱惑的な黒い瞳が特徴的な美女である。
彼にタオルを渡し、彼女は木の木陰に座り込んだ。
「ロザリオさん、どこかで出会ったことありませんか?」
「いえ、今回が初めてですよ」
はて、どこかで出会ったことがあったかとロザリオは記憶をたどった。
しかし、ない。ここまで美しい女性に出会っているのなら忘れるはずがないし、そもそもあっていたとしても前までの彼に近寄る人なんていない。
だから、ないと判断できるのだ。
「……どうも、初対面に感じられないのですよね」
「もしかしたら、前世にあったことがあるのかもしれませんね」
この世界では転生者が普通に存在する。
だからこそ、そういうこともありえるのかもしれないとロザリオは推測した。
自分が気づいていないだけで、もしかしたら自分が転生者というのもあり得る。
だから、あえて彼はあえて「前世」というワードを使ったのだ。
ソレがあり得る世界だからこそ、ソレの言葉が使える。
「前世ですか。私、転生者なんですよ」
「ほう」
ロザリオは、その言葉を受けて頷いた。
そう言われればそのような気もする。ただその気がするだけであって確証は持てない。
そもそも、ここの巫女は全員が風俗に疎いのだから、いったい何があるのかわからないという人も多いのではないだろうか。
この世界のことをよくわかっていないからといって、転生者と相手を断定するのはちがうということだ。
「もっとも、前の世界では人間ではなかったのですけどね」
「?」
「魔徒という存在だったのですよ。この世界で言えば、【魔眼族】を更に禍々しくした感じですかね」
悪魔、ということだ。
ザミェルザーチはその世界で魔徒と人間の争いを何とかしようとしていたのだという。
「でも、私は人間と魔徒・魔獣の共存を選んだ。その時に一緒にいてくれたのがロザリオという男でした」
「私と、同じ名前」
「そうですね」
最終的に、世界はほんの一部の人間と魔徒が生殖を行うことによって亞人ができた。
そういった話を、ザミェルザーチは彼にしてみせる。
「まあ、でも。何かの運命かもしれませんね」
「……はい」
しかしロザリオは果たしてそうなんだろうか、と考えている次第だ。
自分が、本当に彼女と同じ世界からやってきたのか、ということで半信半疑である。
べつにザミェルザーチは彼にその感覚を共用しているわけではない。
ただ、そうであればいいなと思っているのだ。
「では、私はこれで」
「ありがとうございます」
タオルをそばの木枝にかけ、ザミェルザーチは神殿の方に戻っていった。
そんな彼女を見つめながら、ロザリオはどうすればいいのかわからず剣になっている《§α¢Яa》に話しかける。
「どう思いますか?」
「可能性としてはあると思いますよ」
「……ですよね」




