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054 湖

「さて、ついたか」


 アリスタルニクス。聖神殿に一番近い岸に、アヴェロンたち3人は飛び降りた。

 飛行機は自動操縦で、空港まで。


 事故はおこらないだろう、とアヴェロンが判断した結果、そのまま飛び降りたほうが到着が早くなるのだ。

 彼はそのままトランクを《玄帝-GøTe!-》に乗せると、座席を用意してセシルバに座る位置を確認させた。


 ロザリオはいつでもいいようだ、だが、顔が青ざめている。

 

「準備はいいか?」

「広いですね。ちょっと不安になってきました」

「……《§α¢Яaサクラ》と《炎帝-3nT-》で一緒に運んでいってやれ」

【承知】


 朱雀型魔紋獣器と、不死鳥型魔紋獣器がバタバタと降りてくる。

 《§α¢Яaサクラ》が大剣に変形するからか、《炎帝-3nT-》のデッドコピーにも関わらずサイズは同等であった。

 もちろん、これだけ大げさに準備をしていれば、他の人達も野次馬根性で集まってくるものだ。


 しかし、彼らは気にしない。


「アヴェロンはどうやって浮いてるんだ」

「魔導」

「……なるほどね」


 アヴェロンは、すでに魔導を行使していた。

 今回は魔導1割、魔法9割といったところだろうか。

 靴に表面張力を強く持たせたのだ。どんなに危険な挙動で動いても、店頭こそすれども沈むことはないだろう。


 そんなことを談笑しながら、セシルバが《玄帝-GøTe!-》に乗り込もうとすると、やじうまの中のひとりが挑発してきた。


「君たち、もしかして神殿にいくのか?」

「……そうだけど」

「その装備で?」


 その屈強な身体と、中に含まれる魔法の量から考えるに、彼はこのあたりでは有名な実力のある魔法師なのだろうと推測できる。

 肉弾戦もできる魔法師、聞こえはいいが、その身体はむしろ野蛮な粋に達しており、顔も醜い。


 挑発に乗りかかったのはセシルバだ。

 しかし、アヴェロンは彼を静止した。


「やめろセシルバ」

「でもよ」

「自分たちが失敗したから、僻んでるだけだ」


 アヴェロンはさらっと、相手の男の核心を付く。

 そう、彼は聖神殿に向かおうとして失敗したのだ。

 絶世の美女と出会えるという伝説を信じて、肉欲のみでやった結果がこれである。


 挑発されて、次はその男が怒号を上げる番だった。


「なんだと?」

「《蒼帝-Soutei-》。相手が攻撃したら最大限の力で応戦することを許可したい」

【争いは好みませんが、アヴェロンの許可なら最大限に使わせていただきます】


 アヴェロンはそんなことどうでもいいというように、代わりに青龍型魔紋獣器に依頼を出した。

 《蒼帝-Soutei-》はどこの誰よりもアヴェロンを尊敬している。自我を持った魔紋獣器の中では1番だろう。

 だから、長い自分の尾をすべて発光させて、それが一つ一つ魔の刃であることを見せびらかしながらアヴェロンたちを護衛するように空中でとぐろを巻く。


 それには、誰もが不可侵でいるしかない。

 その刃に触れれば、身体が切断されるのは目に見えている。


「行こう」


 アヴェロンは、友人たちと魔紋獣器にそう声をかけて出発をする。

 唖然として海を渡っていく3人を見つめる野次馬たちに、《蒼帝-Soutei-》は最後の警告とグルル、唸って踵を返したのだった。







「ただでさえ遠いのに、これ以上時間をロスさせたらシルヴィーが怒る」

「なんていうか、本当に……はぁぁ」


 一行は、湖という道無き道をひたすら進んでいた。

 地平線のちょっと手前に島が見え、そこから建物が数個見えるがそこまで進んでいる筈なのに、一向に迫ってくる感覚がしないのだ。


「ため息をつくな。俺もつきたい」

「2人とも、疲れているのか?」


 アヴェロンは、2人がつかれているのかと勘違いした。

 が、2人のため息は彼が簡単に聖巫女を「シルヴィー」と愛称と呼べることと、その人のために頑張れるところである。


【こういう、鈍感なところがアヴェロンらしい】

【同感】


 くすくす、と笑っているのは《蒼帝-Soutei-》と《炎帝-3nT-》。

 《蒼帝-Soutei-》の後ろには、宙を駆けている白彪型魔紋獣器《白帝-βak†A-》が殿を務めている。


 と、セシルバ。天を仰いで息を吐く。


「そろそろ、夕暮れか」

「夜までには到着できるようにしたい、スピードをあげようか」


 その言葉に、魔紋獣器たちが頷いた。

 あっという間にアヴェロンが引き離されたかと思えば、アヴェロンは走るスピードを速くして悠々と追いつく。


「走るのはええ」

「魔導でブーストしてるからな」


 なるほど、とロザリオは感じた後、これが基本であること、詩文にもできることに気づいた。

 思えば、ロザリオは自分で無意識にそれをやっていたのだから。


「そんなのできるの……ああ、私にも出来ました」

「まあ、俺もできるんだが」


 魔竜種は元からデフォルトでそれができる。

 だからこそ、普段は意識しない分、それが物珍しく見える。


「あの先にあるのが、そうなのか」

「聖神殿だな。……ああ、シルヴィーもいる」


 アヴェロンが目を凝らすと、巫女たちの表情一つ一つがかいま見えた。

 シルヴィーは、泣いているのか眼を抑えている。


「見えたの!?」

「ああ。……いきなり泣いてる、どうしたんだろう」

「ちょ! 速いって!」


 アヴェロンが一気に加速する。四神シリーズの加速ならともかく、デッドコピーの《§α¢Яaサクラ》には出せない出力だ。






「一足先に行ってくる」

 


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