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041 工房での雑談

「おー、進んでるな」

「うん、ルカのおかげだよー」


 すごい勢いでクリックの音とキーボードを叩く音がした。

 シルフィールだ。どうも魔獣園に行ってからというもののかなり高層がまとまったようだ。あれよあれよという間にラフが出来上がり、その出来栄えはイゾルデが飛びつくほどのものとなっている。


ドラゴンね」

「そう。とはいっても幼体だけど」


 ドラゴンと一言に示してもいろんな個体があるからなんとも言えないが、彼女の創りだそうとしているのは4足歩行の翼が生えた龍である。

 イゾルデの得意とする使用武器は大鎌だ。

 だから、彼女に合わせるようにしてシルフィールは翼の部分を鎌の刃にしようと考えたのである。


「今回、アヴェロンのお仕事が大変になるかも」

「いいよいいよ。俺のやってることなんて大抵がパズルだし」


 アヴェロンはそんなことを言っているが、実はといえばとても集中力が必要な作業である。

 魔導でくっつけるのだから、集中力が一瞬でも途切れればやっていた作業はすべて中断だ。

 イゾルデは最初のほうこそ、彼のそばにいたのだがだんだんとそれがわかってきたようで、今では空気を読むようになっていた。


「もう少し、便利になったらいいのに」

「便利になったら俺が必要なくなるから、それは困る」


 魔導にはもちろんのこと、機械は存在しない。

 それどころか、作業台はあれど彼の作業を補助するようなものは何一つ存在しないのだ。


 だからこそ、アヴェロンはこの仕事にやりがいがあるのだろうと感じている。

 何もかもが便利になってしまったら、例えばシルフィールのように設計さえしてしまえば部品パーツが完成するような事になれば、一体どうなってしまうのだろうと。

 シルフィールには悪いが、アヴェロンは便利になればいいなどとは考えていなかった。


「アヴェロン」

「ん?」

「機神殿に行って、どうしたの?」

「機巫女と話をした」


 機巫女さまと話をした、なんて簡単に言えるのはアヴェロンだけだろうと彼女はため息を付く。

 機巫女なんて言ったら、科学サイドの彼女は神殿内で話をすることすら許されていない存在だ。


「話をしたって……」

「シアンティーシャテンって言うんだってな、名前」

「ソレは知ってる」


 なら、なんの問題もないなとアヴェロン。

 そもそもなんの問題があったんだろうとシルフィールは首をかしげたが、そんなことは何もわからなかった。


「また来て、ッて言われた」

「……また友人が出来たってこと?」

「友人ッて言うには、ちょっと大仰かもな。まだ初対面だったし」


 しかし美しかった。アヴェロンはそう言って意地悪そうな顔で笑った。

 シルフィールにはその表情がよくわかっていなかったが、ソレは彼が聖巫女と出会ったときの笑顔と奇しくもよく似ている。


「好きなの?」

「……ん、なんか違うなって思ったけど」


 やっぱり聖巫女かなーとか内心で色々と考えているアヴェロンに、彼女は溜息を付くしかない。

 女性的な考えから嫉妬もあったが、それを機巫女にぶつけても勝機がひとつもないため諦める。


「……バカ」


 小さく、彼に聞こえるか聞こえないかの声で、ボソッとつぶやく。

 アヴェロンにその声は聞こえていたが、彼は何も言わず聞こえないフリをした。


 自分がいちばんよくわかっていたが、どうしても深く考えることが出来なかったのだ。

 

 

 

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