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019 英雄3人

 ゼファーヴェイン・ルカの店頭には、人だかりができていた。

 そのほとんどが今日のためにここまで足を運んだ人々で、その中には居酒屋「セイリュウ」の店主、フルルの姿もある。


 人々が注目しているのは、他でもなく魔紋獣器ビーゼスだ。用途によって人間との交流を可能とし、変形機構を備える。

 ある意味では最高の人工生命なのかもしれない。


 もちろん、その多くが武器に変形するからとてもではないが安全とも言い切れない。

 だが、今回のためにアヴェロンとシルフィールの2人は、武器ではなく日常の道具をモチーフとしたものを作っている。

 刃物ももちろんあるが、それは魔導で守っているため心配はないという。


 当初は危険視する視線のほうが圧倒的に多かった。

 それはルカもわかっていたし、ロザリオは完全に「コミュニケーションの取れる武器」としか最初は考えていなかったため仕方なしと諦めていた節がある。

 しかし今回、ロザリオはその考えを改めることになる。


「……成功のようですね、よかった」

「さすがアヴェロン、というべきでしょうか」

「それ、アヴェロンさんに聞かれたらまた怒られますよ」


 アヴェロンは、誰よりも人々の表立った格差を嫌っている。

 それが、自分を上げるものだったとしても、いい顔はしない。

 

 特に嫌っているのは転生者崇拝だ。この世界に、別の世界から第2以上の人生としてやってきた人々を、この世界の人達は転生者と呼んでいる。

 転生者はこの世界の人々では成し遂げることができないことを次々と与えてくれた。数千年前に、魔法しか存在していなかったこの世界に、「科学」という概念を与えたのも転生者である。


 今では国1つが、完全に科学を推しているところを考えれば、その影響力は絶大なものだったと判断せざるをえないだろう。


「でも、王都の方々は魔法を嫌っていないのですね」

「いや、嫌っていないのは【アヴェロン】の【魔導】だけだと思うぞ」

「あ、フルルさん」


 いつの間にか、2人の横まで近づいてきていた店主に、ロザリオは笑いかけルカは一礼する。

 実際、王都は決して魔法を受け入れているわけではない。

 というのは、王都の主要区にある巨大なビル群を見れば、すぐに分かることだった。


「なんてたって、アヴェロンとロザリオは【英雄】なんだ」

「今回、私とフルルさんもその仲間入りを果たしたわけですけどね」


 まあな! とフルルは嬉しそうだ。

 英雄という言葉は、やはり男ならだれでも憧れるものだ。

 実際、その後初めてフルルは生でこの国【プトレマイオス】の王と会うことができたし、ニュースにもデカデカと載っている。


 居酒屋は前よりも繁盛。今では主要区から兵士たちも飲みに来るらしい。


「でも、犠牲はなかったわけではありません。実際魔法師は二桁の犠牲を出しました」

「……あれは」


 あれは、ただたんに魔法師の熟練度が著しく低かったからではないのか、とルカは言おうとした言葉を飲み込む。

 なんせ、相手はドラゴンなのだから仕方ない場所もあるのだろうが。アレはひどすぎた。


「1回も功績を挙げられず、全滅っていうのはな」


 それなら、冒険者に呼びかけたほうが良かったかもしれない、と王宮でプトレマイオス王が嘆いたのを聞いている3人は、顔色を少しだけ暗くした。


「あーいたいた」


 そんなときに、人混みをかき分けてやってきたのが、彼女である。

 シルフィールに工房から追い出され、ルカの姿を認めてぱたぱたと走ってきたのは、白髮の美少女。


「……イゾルデさん、またですか?」


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