表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/70

017 イゾルデ・トリストラム

新キャラ登場。

思えば、まだ名前の出ている人って10人行っていないんですよね。

 武具店「ゼファーヴェイン・ルカ」の店の前に、一人の女性が立っていた。

 顔はフードに隠れてよくわからないが、はみ出た雪のような白い髪の毛は王都の風を受けてゆらゆらと揺れている。


「……辺鄙な場所。王都の中だというのに」


 周りを見回しても、そこにあるのは人もめったに見られない道路だ。

 車の量すら少ないのは、武具店が大通りに面していないからだろう。


「でも、研究狂いのシルなら。……こういうところのほうがいいかも、ね」


 彼女のひとりごとは、彼女に吹き付ける疾風カゼのようでもあり。

 ドアを開けると、奥からルカの「いらっしゃいませー」という声がきこえてきた。


「ほら、ロザリオさんも」

「あ。いらっしゃいませ」


 はて、と彼女は首をかしげた。

 シルはどこだろう、と店内を見回すがそんな姿はない。

 あるのは、人形のように愛くるしい少女と、虹彩異色症ヘテロクロミアの高身長な男性だ。


 ヘテロクロミア、とは俗にいうオッドアイ。左右の目の色が違うことを指す。

 しかしその姿は、彼がアヴェロンからもらった護符のお陰で威圧ではなく、むしろ幽玄さをたたえていた。


 ロゼの顔を見て惚け、彼女は首を振る。

 いや、でもシルと通話した時に聞いた声とは違う、と彼女は思ったのだ。


「あの、何か?」


 はっとしてみれば、ロザリオがこちらを見つめていた。

 

「えっと、シルフィール・フィーリネさんはこちらですか?」

「はい、少々お待ちを」


 一礼して、奥に引っ込んだロザリオを見て、彼女はフードの中で、赤らめた頬を緩ませていたのだった。








「シぃルっ」

「イゾルデ、やっとついたんだ」

「入国審査が面倒でねー」


 目的の女性、シルフィールが見えてから彼女はフードを外した。

 現れたのは、銀髪黒眼の美少女である。長い白髮はくはつと、際立つ幼い顔が特徴だ。


「ああ、アヴェロン。紹介する、私の親友のイゾルデ・トリストラム。……ええと」

「こんな顔だけど、千年生きてるから」


 イゾルデの言葉に、アヴェロンは目を見開きはしこそ驚かなかった。

 その代わり、ルカとロザリオは同時に「えっ!?」なんていう驚きの表情をしている。


 いや、どう見ても10代前半の風貌なのに、アレだけ堂々としていたら何か、事情があるか風貌にそぐわない年齢を持っているかどっちかしかないだろう、と呆れた。

 特にアヴェロンは、ロザリオに冷めた視線を送っている。ロザリオなら、彼女から抑えきれていない強者のオーラを感じ取っているだろうから。


 シルフィールの親友と聞いているからこそ、今は警戒態勢を解いているが。

 アヴェロンは、普通こんな人が目の前に現れたら戦闘態勢に入っているところである。


「こっちが、……へぇ」


 そして、イゾルデの眼が一瞬妖しく光ったのを、彼は見逃さなかった。

 白銀の髪の毛に、褐色の肌。一体どの種族なんだろうと、アヴェロンはそれだけを考えていた。


 ……導かれる答えは一つしかなかったが、あえてそれをアヴェロンは口に出さなかった。


「シルフィール、彼女は泊まっていくのかい?」

「うん、ゲストルームはロザリオが使っているし、彼のが完成するまでは私の部屋で、ね」

「……3人で?」


 このままでは、女性陣が3人同じ部屋ということになる。

 ちょっと狭いだろうと、アヴェロンは考えた後、自分の部屋を客人に明け渡すことにした。


「いいの?」

「ノープロブレム」


 さて、ロザリオの商品を早く完成させなければ、とアヴェロンは奥の工房に戻る。

 そして、彼女の種族が、転生者に今のところ現れていないらしい【聖魔族バルデュバル】であることを少々察して、さてどうしようかと頭を悩ませた。





「千年生きてるってのは、嘘だな」

 



イゾルデとトリスタンの話はかなり有名ですね。

詳しい彼女の物語は次話からです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ