016 作り直し
章設定忘れてました。。。。。。
章タイトルは、章が終わってからつけます(ネタバレ防止の為)
鷲剣型:魔紋獣器《アインクイーア》が完成した。
正しくは、その試作品であるが。
とりあえず、客にだいたいこんなかんじになる、というのを伝えるのが目的である。
魔紋獣器は1機の値段がバカにならない。サイズに若干違いは出るものの、手のひらサイズのそれであっても王宮で働いているほどんどの月収よりも高い。
王宮が所持している大型の魔紋獣器などは、この国の金で億をいくつも積んで、やっと作ってもらえた程度のものであるからして、その価値がやっと分かるくらいだ。
そのため、客に不満がないか何度でも調整を繰り返す。
「ロザリオ、何か不満点は?」
とりあえず、アヴェロンはロザリオに「それ」を渡す。
彼の剣は、アヴェロンも何度か触ったことがあるため、重さが重要な要素であることを知っていた。
今回、彼に一番聞きたいことも剣の重量だ。
彼の身体能力では、前回のように技武具:《Di$∀βLe》と自分の剣を担いで数メートルジャンプできる程度だ。
程度、というには上級向けだろうが。
「……軽い」
「……だよな」
素が出たロザリオに、アヴェロンは苦笑を漏らした。
だろうとは思っていたらしいが、それでもなんとか調整してきたはずなのである。
「……うーん」
変形機構を有し、なおかつ飛行できる魔紋獣器を作る場合、シルフィールの場合はもちろん、軽くて丈夫な素材を使う。
科学で何とかしようというのがシルフィールの考えだ。完璧に魔紋獣器を作ってさえしてしまえば、アヴェロンの吹き込んだ命を無駄にしづらいからだろう。
しかし、魔導というものは便利だ。決して飛ぶことのできないようなものですら、無理やり宙へ浮かばせてしまえる。
だから、重量の概念はいらない。
「シルフィール、ちょっといいかな」
「うーん」
彼女が唸っているのは、自分のプライドが許さないからだろうか、とアヴェロンは困り顔だ。
仕事仲間とはいえ、相手を便利な道具扱いにしてもどうか、という考えも彼女の中にはあったのだろう。
だから、今日もシルフィールは悩んでいる。
「重量を単純に増やすなら、パーツを増やしたほうがいいかも」
「どうやったっていいぞ。……俺がくっつけるから」
一からのやり直しではあるが、アヴェロンもシルフィールもそれが無駄になったとは思っていない。
材料は、同じモノを使えばいい。
アヴェロンはまだ「生命」の宿っていない魔紋獣器試作品を手早く解体すると、魔導成分のすべてを抜き取って精錬炉の中に投入した。
同時に、シルフィールも設計を開始する。
パーツを多くするのであれば、それ相応に仕掛けが必要だ。
「単純なものでいいですよ、本当に」
ロザリオは、とんでもないスピードで設計を始めたシルフィールが心配になったのか、忠告するように言葉を発した。
何も言わなければ、きっととんでもないものが出来上がっていたに違いない、と彼は確信する。
さすがに長居しすぎた。2人には迷惑をかけ続けているとも彼は自責の念を感じていた。
でも、商品を買う分、妥協はダメだとも考えている。
「1週間だけ、もうちょっとまってくれないか」
「はい。こちらこそ、申し訳ありません」
あと、発声装置もつけてくださるとありがたいです、とロザリオはちょっとわがままをいう。
アヴェロンは笑って、「旅は孤独だもんな」と彼の心境を察する。
発声装置、とりわけ今回は鳴き声ではなく人語を話す装置だろう。
それについては、大した問題ではなかった。
問題は、どこに埋め込むかである。
「頭ってどこだっけ」
「……柄にする予定だけど」
なら、柄頭かなとアヴェロン。
あくまでも、予想外の場所にはつけるつもりがないようだ。