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011 魔紋獣器の創造者

「すー、はー! すー、はー!」


 深呼吸をするのはルカ。出発時はロザリオとアヴェロンの2人がかなり気楽な表情でいたため、トラの威を借りるつもりで出てきたのだがここになって少々不安になってしまったようだ。

 嫌な予感が頭のなかをよぎったのだろうか、不安そうな顔をするルカに、アヴェロンは優しく笑いかけて頭を撫でる。

 問題はないよ、と諭すように数回なでるがルカの心配はそこではないようである。


「私に命はありませんが、ロザリオさんやアヴェロンさんには……」

「あー、私不死身なんで問題無いです」

「俺も5つの命を持ってるから問題ないかな」


 心配するルカに対し、2人は真顔で、しかし冗談めかしてそういった。

 どちらも、嘘は少なくとも言っていない。


 アヴェロンのほうは、魔導で命が吹き込めるのなら自分の命も増やせるのではないか、と転生し旅を始めた頃には幾つか命を増やしていた。

 やり過ぎもどうか、ということで5つの予備だけ、命をたくわえているのだ。


 ロザリオは、その威圧と更に人離れした身体能力のお陰で、今まで何度も確実に死ぬような状況に立たされていながらも無傷で帰ってきた。

 彼は冒険者だ。いつ死ぬという覚悟はできているが、それは今ではないだろう。


 もちろん、そんなことをルカが知るよしもないのだが。

 だからこそ、ルカは心配になっているのである。


「まあ、気にするな」

「……ルカちゃんが危なくなったら、すぐに援護しますから」


 なぜ、この2人は私に気をかけてくれるのだろう。

 機械である自分に、半分作ったようなものであるアヴェロンはともかく、なんの関係もない。

 強いて言えば、たった1ヶ月前に出会ったばかりの彼が、なぜここまでとルカは首を傾げる。


 実際は、ロザリオがシルフィールとアヴェロン両方に対しての感謝としてやっているだけなのだが。


「護符、外しな」

「はい」


 アヴェロンに指摘され、彼が剣を意味する十字架の護符を外す。

 と、ルカはその雰囲気の変化に確信を得たようでじりじりと後ずさった。


 怖い。今すぐここから立ち去りたい程度には怖い。

 しかも、今遠くから森の木々を押しのけて王都に一直線。

 翼2対、きらめく黒銀くろがねの鱗、2本の首を持った龍と見比べても、こちらのほうが怖いのだから仕方がない。


 しかし逆に、ある意味ではそのお陰でドラゴンへの恐怖心が薄れているのも確かである。


「ヘイトは私が受け持ちます」

「……ドラゴンですら威圧で屈服させられそうだけど」


 アヴェロンの口調は軽い。だが本心だ。

 本物の強者は目で殺す。それを体現しているかのように、ロザリオの眼は鋭い。


「おっかね」

「アレク。来なくても良かったのに。居酒屋守ってくれよ」

「……いやー、魔紋獣器ビーゼスっていう戦うチカラを持っているんだ、俺も戦うさ」


 居酒屋「セイリュウ」の店主は、ロザリオとルカ。そしてアヴェロンを見つめて首を傾げた。


「この可愛いお嬢ちゃんは誰だい?」

「シルフィールの作った魔導機人だけど」

「……シルフィールさん【と】作った!?」

「おい」

「スミマセン」


 話がシモの方にそれかけた。アヴェロンは店主を睨んで黙らせ、周りを見回す。

 王宮が遣わした魔法師が数十人、待機している。

 王都の壁を超えてきたら、攻撃を開始させるのだろう。


「……戦えるのは、4人か」


 しかし、彼は頭数からごっそり抜き取った。

 魔法では無理だと、考えているから。

 決して自分の作ったものに絶対的自信を持っているわけではないが、魔法師がなんとかなるとは思っていないのだ。


「とりあえず、準備をしよう」


 パチン。

 アヴェロンは指を鳴らし、暫く待つ。


 と、どこからともなく、空を覆い尽くすほどの魔紋獣器ビースト・アーゼスが現れてアヴェロンの近くに群がった。


 その数、数千。


 巨大なものならルカの身長……小さな少年少女ほどのものもあれば、小さく手に乗る程度のものもある。

 それが幾つもの武器へと変化し、中に浮かんだ。


「……は?」

「個人登録している作品は所有権が移動していないはずだけど、施設や団体に所属させられているものは全部。このくらい許してくれるだろう」


 それは、この王都【アンドロメダ】の王宮にあったものも含む。

 特注で、膨大なカネを積まれて作った巨大な種別がそれらだ。


「とにかく、……まあ。……いやドラゴンよりも、なんか眷属けんぞくぽいものを倒さないとな」




 ドラゴンの周りに、翼竜ワイバーンのような生物がてんてんと。

 アヴェロンはその正体を考えながら、魔導を使って宙へと浮いてみせた。

 


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