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四話後編『後は脱兎の如し』

 まるでスポットライトのように降り注ぐ月光がローズの身体を照らし出す。

 服は元の色が判別できないほど紅く染まっているが、自身の肉体には擦り傷の一つでさえ有りはしない。


「どうやってあの数の仲間を……!!」

「あんな奴ら俺にとっては有象無象、いくら束になってかかってこようと相手にすらならねえな。

 それは助けられたお前だってわかってるはずだろう」

「チッ!!」


 アリスフィアが何か指示を出したようで周りのアルミラージ達が一斉に彼女の周りに集まる。

 だがまだ仕掛けてくるわけではないようだ。


「いつから僕が魔人だって気付いたんだ?」

「最初は敵がアルミラージだって聞いたときだな、お兄さん透視も出来るもんでお前の耳がウサギだってのは最初から知っていたしな。

 それにお前町で噂を聞いてやってきたって言ってたがそんなのおかしいだろ。伝えに言った奴らは全員死んだんだから」

「減らず口を…… じゃあ最初っから知ってたうえで僕とここに来たのか」


 ローズは首を縦に振って肯定する。


「それじゃあ何でアトスを僕と二人きりにした? 殺されるのなんか予想できただろ」

「ああーそれはそいつの性格が気に食わなかったから、それだけだよ」

「僕を助けた男がよく言うよ」

「俺は折角こんな世界に来たことだし好きなように生きることに決めたんだよ。気に食わない奴は殺すし見殺しにもする、可愛いだけで助けもするさ」

「この世界に来た……? 適当なことを言って僕を馬鹿にしているのか!」

「おーおー本当はそういう性格なんだな、隠してたってわけか。まあそいつはお互い様だが」

「黙れ!」


 怒りが頂点に達したアリスフィアの声に応えるように魔兎が三匹、正面から突っ込んでくる。

 捻りもないその攻撃をローズは片手で持ったクレイモアで余裕を持って対処する。

 リリースを使うこともなくただクレイモアを力任せに振るうだけでアルミラージは死んでいく。


「くそ、もっと、もっとだ! あいつを食い千切って!」

「無駄だって」


 ついには周囲の仲間を全て攻撃に集中させたアリスフィア。

 ローズはクレイモアを左下から斜めに切り上げ、そのまま身体ごと回転させ今度は右下に一気に振り下ろす。

 圧倒的な力で行われる単純な斬撃はそれだけで一撃必殺の攻撃になる。

 もう残すはアリスフィア一人のみだった。


「そんな、皆が……!」

「奇襲しても俺に勝てない奴らが正面から来て勝てるとでも? さあどうするお前も俺にかかってくるか」

「みくびらないでよね、僕だって戦えるんだから」

「オーガ相手に涙目だった奴が戦えるとは思えないが」


 それでもアリスフィアには抵抗の意思があるようで、地面に落ちていたアトスの剣を拾いローズに向けてくる。

 しかしローズはあっさりとその剣をクレイモアで吹き飛ばすとそのままアリスフィアに組み付き力任せに地面に押し倒す。

 アリスフィアが脱ぎ捨てていた服で手足を拘束すると彼女の身体を観察し始める。


「しかしタンクトップとショートパンツだけってえらい軽装だな。尻尾もあるし兎の体毛も所々に生えてるし」

「やめろ、触るな! 」


 触らせまいと必死に身体をくねらせ抵抗するアリスフィアにを押さえて触り続ける。

 体毛はフワフワとしていて本物の兎の毛よりもはるかにさわり心地がよい。

 そして極め付けにローズは彼女の胸にぴたりと手を置く。

 ささやかながら微かにまだ成長途中の少女のふくらみが感じられる。

 彼女の見た目や身長を人間に当てはめるとしたら14歳位だろう、そのわりには小さいようだ。


「くそ、死ね! お前なんか死んでしまえ!」

「おいおい口の利き方に気をつけろよ、これから俺はお前のご主人様になるんだから」

「は……?」


 言葉を失うアリスフィアにローズは説明を始める。


「俺は他のやつらが持ってない力をいくつか持っている。その中に魔物を味方にする魔法がある」

「止めろ……」

「魔人に使うとどうなるかはわからないけどものは試しさ」

「やめろおおお!」




 ※※※※※※※※※※※※




「そうですか、アトスの奴は立派に……」

「ああ、戦って死んでいったよ」


 村に帰ってきたローズはそのまま宿で眠りについた。報告は翌日に行うことにしたのだ。

 翌朝村長に伝えると彼はアトスの死を悲しみながらもアルミラージの討伐を行ったローズに感謝の言葉を送ってきた。

 そして少ないが御礼にといくらかの金貨と食料を詰めた袋を渡してきた。

 ローズはそれを受け取ると町の人々に見送られながら足早に村を去った。


 町を出ていくらか進んだ所の木陰に一人の少女が座っていた。


「行くぞアリス」

「わかったよご主人様」


 二人は共に草原を歩いていった

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