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四話前編『始めは処女の如く』

僕の作戦にまんまと引っかかったようであの冒険者は一人で偵察に行った。

奥には数匹の仲間をわざとわかりやすく配置している、奴は強いが所詮はただの人間だ。

囮に気を取られているうちに本命の何十匹もの僕の仲間達の奇襲で奴は死ぬ。

余分なのが付いてくるとは思わなかったが……まあこの程度は僕と何匹かの仲間だけで十分だろう。

既に後ろの茂みに仲間は呼んである、あとは僕が指示を出せば終わりさ。


「おい、お前。確かアリスフィアとかいったな」

「は、はい。えと、その、私に何か……??」

「さっきから黙ってばかりでつまんねーんだよ。おらなんか言ってみろよ」


対象は油断までしている、あいつの介入も警戒したけどこんなところに置き去りな時点で僕に気付けていなかったのはわかりきったことだ。

あいつは人を助けるお優しい奴だからな、ウヒヒヒヒッ。


「その、あの……うぅ……」

「な、何泣きそうになってんだよ、俺様は何か話せって言っただけだぞ」

「うぅ…………」

「お、俺様は悪くないぞ、ほらっ!!泣きやめよ!!」

「………………」

「顔隠さないでこっち見ろっ……て……へ、お、お前なんだよそれ」

「………………ゥヒヒ。ヒヒッ、ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」


愚かな人間、僕の帽子をとるまで正体に気付かないなんて。

ローブも暑いしぬいじゃお、よく着てられるね人間って。


「ウサギの耳に……角…… な、なあお前獣人だっただけだろ!! そうだよな、魔物が人に化けるなんて聞いたことないし……」

「獣人はねぇー見てわかる特徴は耳と尻尾だけなんだよぉー。私みたいに体毛があったり角があるのは獣人じゃないの」

「じゃ、じゃあお前は何なんだよっ!!」

「そんなの僕にわかるわけ無いじゃん、もういいよ君死んで」


僕がそう言うと後ろの茂みから仲間達が飛び出して人間に襲い掛かっていく。

彼はご自慢の剣を抜いて応戦しようとしたけど剣を抜くのにも手間取っている。

そのうち仲間が一匹、二匹と身体に噛み付いていく。


「ぎゃああああっ!! 痛いっ!! 痛いっ!!」

「あっそういえば君言ってたよね、アルミラージなんて楽勝だって。ねえそうだよね??」

「頼む……!! 助けてくれ……」

「バイバイ」


僕の挨拶も聞こえてたか怪しいなあ、皆食べるの早すぎるよ。


「でもこれで邪魔者は皆消えたね、そろそろあの村落としちゃおっか。僕もう我慢できないよ」


うんうん、皆も賛成してくれるし明日にでも落としにいこうかな。

そうだ、あいつの死体も確認してこなきゃ、まあ骨しか残ってないだろうけど。



振り返ってあの冒険者が入っていった奥に行こうとした僕は妙な胸騒ぎがした。

失敗するはずが無い、僕を助けたあの男が罠だと気付いていたならアトスをこんなところに置いていくわけがない。

そもそも僕は耳すら隠して見せてなかったのに正体がばれる訳がないんだ、何のためにあんな気弱な少女の真似なんてしたんだか。

でも、やっぱり……僕の予感は当たっていたようだった。


闇の中から足音と共に血の臭いが僕の方に近づいてくる。

人間の血の臭いじゃない、僕達の血だ。

仲間達も気付いたようでアトスの死体を食らうのを止め、ジッと同じ方を見つめる。

一歩一歩、段々と近寄ってくる足音。見たくない、その気持ちのせいか時間が延びたかのように感じさせる。

体感では何十分も……実際は数秒で闇の中を歩いてきたそいつは僕たちの目の前に現れた、月光によって怪しく照らし出されて。


「ローズ……!!」

「よお、エロい格好してんなアリス。ちょっと胸が足りないが」

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