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二話『初めての戦闘』

モンスターを見つける為に川を離れたローズだったが……なかなか見つからない。

異世界といってもそんなにポンポンといるわけではないようだ、モンスターよりも先に村を見つけてしまったのがその証拠だろう。

大きな村ではなさそうだが人はいそうだ、サクシヤの言っていた冒険者ギルドがあの村にあるかはわからないがとりあえずの宿にはなるだろう。

異世界での生活の初日が野宿など冗談ではない。

見上げたローズの視界はには既に陰ってきている空がある、残念だがモンスター探しはまた明日にして村に行ってみることにしよう。

しかし神の――サクシヤと会った後だと冗談になってないが――悪戯か、ローズの願望は叶うことになった。


突如として目の前の林から何かがローズ目掛けて飛び出してきた、地球での彼ならそのまま謎の生物が何なのか確認する間もなかっただろう。

しかし今のローズはスキルのおかげもあってかその生物の姿をはっきりと捉えることが出来た。

人によく似た形をしているがそれの身長はローズの半分ほどまでしかない、また頭部が大きく顔は醜く膨れ上がっている。

ローズのゲーム知識から思うにこいつはゴブリンだろう、手に持っているこん棒もゴブリンの武器として有名だ。

冷静に観察しているがローズの動きは止まっているわけではない、ゴブリンから目を離さないよう器用にバックステップをして距離をとる。

ゴブリンが飛び込んでくると同時に振り下ろしてきていたこん棒は空を切る虚しい音を鳴らすだけで、かすることさえなかった。


「本物は結構不気味なんだな…… 可愛いとやりづらいから良かったともいえるが」


ローズはあせることなく背に背負ったクレイモアを抜き構える、ゴブリンは避けられたことが悔しかったのだろう、

ギィーギィーと意味があるのかもわからない声でわめいている。


「今度はこっちの番だぜ」


両手でしっかりとクレイモアを握り締め、ゴブリンに切りかかった。


「せあっ!!」


地面を蹴って一気に加速したローズはステップで空けた距離を一瞬で詰め、そのままの勢いでクレイモアを横に払う。

ゴブリンにはローズが何をしたのかもわからなかったであろう、それほどまでにその動きは完成されていた。

クレイモアの軌道をなぞるようにゴブリンの身体に線が走る、そこからは血が流れ……流れ……


「あれ??」


ローズが切った後からは血が流れてこなかった、その代わりにゴブリンの身体は光の粉になるように崩れていく。

ゲギャっと断末魔を叫ぶ頃にはゴブリンの身体は完全にその場から消滅していた、そしてその代わりにそこにはゴブリンの身につけていた

服に良く似た布が落ちていた。

ローズは手に持ってみたがそれは服ではなく長方形の布だ、やはりゴブリンの服がただその場に残ったわけではないようだ。


「おいおいここまで現実的だったのに急にRPGになってんじゃないか。死体は消滅するわアイテムがドロップするわどうなってんだ」


独り言にはもちろん返事は無い、もしかしたらサクシヤが答えてくれるかもと思ったのだが無駄だった様だ。

とりあえず手に持ったそれは服に挟んで持っていくことにした。

何はともあれローズの念願の戦闘は無事果たすことが出来た。

あっさりと終わったがそれは[加護]のおかげだろう、なければ最初の一撃を避けられていたかも怪しいものだ。

この力はローズが思っているよりもずっと強力なものだった、おそらく今のローズはベテランの騎士と並ぶくらいに強いのではないだろうか。


愉悦感と戦闘を行えた満足によって目的の村への足はずいぶんと軽いものだった。

しかし村まであと500メートルといったところで事件が起きた。


「きゃあああああああああ!?」


ローズが歩いている林の外から強烈な破壊音と共に少女の悲鳴が聞こえてきたからだ。

驚いたローズが林から抜けると、そこには移動中を襲われたと思われる人達と二足歩行の豚のモンスターが存在した。

二つの間は馬車だった物が遮っているが今にもモンスターは手に持った大きな木製の槌で襲いかかろうとしている。

一方で人間の方は手綱を握っていたと思われる男が気絶しているのか死んでいるのか……とにかく身動きがとれないようだ。

悲鳴の主であろう大きなとんがり帽子を被った少女が懸命に男を運ぼうとしているのだが少女はとても小柄だ、持ち上げることすら叶わないようだ。

大きな帽子で隠れていて顔は見えないはずなのだがここでまさかの[透視]の出番だった。

ローズの目には帽子が透けて少女の顔がはっきりと見える、非常に小柄な彼女はとても可愛かったのだ。

大きな目は血のように紅く今にも泣き出しそうにうるうるとしている、白く長い髪は両側で軽く結って前にプランっと垂らしている。

そして何といってもその耳である、頭頂部からピョコンっと生えているのだ。

帽子によって折りたたまれてよくわからないがおそらく伸ばすとウサギのようになっているのだろう。

ウサ耳美少女……ローズの行動は早かった。

まずはゴブリン戦と同様に全速力で相手に突撃する、幸い豚はまだこちらに気付いておらず目前の少女と男にジリジリと近づいているところだ。

底上げされた上に元々から運動神経がよいおかげであっという間に豚までの距離5メートルの所までたどり着く。

しかしローズはゴブリンのときのよう剣を振るわけではなかった、何故ならローズの剣は先程までとはまったく違うものになっているからだ。

武器スキルを付けたときに知ったあることを行ったのだ、それらは自然と頭の中に流れ込んできてローズが呼ぶことによってその力を現したのだ。


「ジャッジメント・ソード」


クレイモアは光となって消え、代わりにモンスターの頭上に倍ほど大きな雷の剣が生まれる。

流石に異変に気付いたオークがローズの方を見るが時既に遅し、ローズの意思にそって雷の剣はオーク目掛けて落ちる。

当たった剣は本物の雷が落ちたかの如く雷鳴を轟かせオークを一片残さず焼き尽くした。

するとローズの背には光が集まりやがてそれは先程までの事が嘘かのように元と変わらぬクレイモアに姿を変えた。


少女を見ると彼女は唖然としてローズの顔を見つめている、その顔からは恐怖こそ無くなっていたが変わりに何か見てはいけない物を見たかのような表情を浮かべている。

ポカリと口を開けた少女の間抜け面を見て思わず吹き出しそうになったローズだったが、せっかく格好良く敵を仕留めたのだからそのままアピールをすることにした。


「怪我はないか??」

「は、はい、大丈夫、です……」

「そうか、よかった」


ローズの問いで少女はやっと我に返ったようで、自分が今までローズの顔をジッと見つめてたことに気が付くと気恥ずかしそうに顔を赤らめ俯いた。

内心では好感触な少女の様子に大喜びのローズだったがなんとか表情には出さずに倒れている男の心配をする。


「そっちの彼はどうかな。見たところ意識が無いようだが」

「オークが馬車に体当たりしてきたときに頭を強く打ってしまったようで…… ですが命に別状は無いと思います」

「わかった、でも心配だしなるべく早くあの村に連れて行って手当てさせて貰おう」


念のため丁寧に男を背負いあげる、重さはまったく苦にならなかった。


「はい!! あの、ところであなたは……」

「質問があるのはわかるが今は彼を優先しよう。俺も君に聞きたいことがあるしね」


にこやかな笑みと共に少女に対してそう言うと、少女は先程と同じように顔を真っ赤にしながら、しかし今度はハッキリとローズの顔をみてハイ、と答えた。

サクシヤ「あら、リリースウエポンを使ったのね」

ローズ 「それってさっきのジャッジメント・ソードの事か??」

サクシヤ「そうよ、長ければリリースでいいわ。加護の中にはあんな風に

     言葉を唱えることによって技とか魔法が発動するものがあるわ」

ローズ 「豚を一瞬で消し飛ばしたし強力だよな、派手だしサクシヤも

     小説の見せ場になって嬉しいでしょ」

サクシヤ「そうだけど使いすぎちゃダメよ、強力なものは魔法と同じように

     に精神力を使うから。無理したら死ぬわよ」

ローズ 「わかった、ジャッジメント・ソードは使っても身体に違和感な

     かったし、あれより凄いのがあるのか」

サクシヤ「……それはあんたが規格外なだけよ」

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