2.黄金の右(ある田舎の日常) ※SS
待望の(←筆者が)ショートショートです。
ワシはここいらでは最強として通っとる。
ワシの縄張りは王都と旧都からは同程度離れとるから、平たく言って田舎じゃが、都を結ぶ街道が近いからそこそこ余所者が通るし、ワシにとって娯楽はそれで充分じゃ。
ワシはやつらが通るたびに、勝負を仕掛けては「価値あるもの」を奪い取ってきた。
これに勝る娯楽なんぞ、この世にはないんじゃなかろか。
今日もまた、新たな犠牲者がのこのこやってきたようじゃ。
ワシは今まで、35年負け知らず。
いざ。
「よう、旅人、ここを通りたかったらワシと勝負じゃ!」
よほど気を抜いて歩いていたのか、ワシの登場にソイツは体を震わせて驚いたようじゃ。……ワシがこの辺りに居ることは噂になっとるだろうにの?
「お、お前が山賊として名高い……?」
「おめぇが勝てば、そのまま旅を続ける、ワシが勝てばおめぇは何か価値のあるものを置いていけ!」
「山賊」という言葉が口をつくということは、ワシのことを知っとるんじゃな。細かい説明はもういらんじゃろ。
最初のうちは驚くばかりだったソイツも、状況が分かったのか、構えを取った。ワシも右腕を腰辺りに構え、相手の死角に入るように左半身をやや前に出す。
気分の高揚とともに、口元が自然笑みを形づくる。
うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!
声を上げながら、ソイツの正面へ駆け、右腕を振り……
「じゃんけんっ!!」
「ぽんっっ!!」
やはり勝負を心得た相手であった。すばらしい合の手を入れ、我らは同時に片腕を前に出し……
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ワシの歓声が辺りに響き渡る。フハハハハ、無敗の記録はまだまだ続くようじゃ。
「ぐっっ、まさか一発で……」
膝を折って悔しげにつぶやくが、そのとおり、ワシは「あいこ」にさえなったことはないんじゃ。ホレ、とっとと「価値あるもの」を置いていけ。
読了有難うございます。
ネタ「野球拳の山賊」を思いついて・・・。
思いついたものの「文章になるのか?」と疑いつつ書き始めたんですが、予想以上にノリノリで書けました。
最初は野球拳なら追いはぎだな、とは思ったのですが、「ジレースの民、服着てないんじゃ?」疑惑が発生。ついでに貨幣経済は存在しなさそう。
たぶん人型時の服は、魔法製。それ以外は毛皮とか鱗とかの天然素材(自前)。
むしろこの「教育実習」シリーズ、こんなノリにしたかったんですよね。何故か全編哀愁が漂っていますが。
というわけで、憂さ晴らしの馬鹿ネタ随時募集中です。
感想欄、ユーザ制限ありませんので適当な単語を二つ三つつぶやいてみませんか?
(小説の出来は保証いたしかねますが:汗)