雪の中で
凍える手をそっと口の前へかざし
白い息を吐く
どんなに厚着をしても
寒いものは寒い
僕はふと
空を仰ぐ
(死にたいな)
空は透き通るような青なのに
僕の心は
いつだって真っ黒なんだ
急にどんっという衝撃が走った
「すっすみません!」
その言葉を聞き自分は人にぶつかられたのだと
ようやく理解した
とっさに謝るその言葉には
明らかに申し訳ないと言う気持ちがにじみ出ているのに
僕は無意識に言っていた
「思ってもいないことを言われても不愉快なだけです。」
言ってしまった後
後悔はしなかったが
殴られたり泣かれたりするのかな
そう思っていた
腰をおっていたその人は
体をあげ僕の目をまっすぐ見ていた
「苦しいんですか?」
何を言ってるわのだろう?
そう思っていたら頬に熱いものが滴り落ちた
なんだ・・・?
涙だった。
くるしい
なにがだ?
俺が泣いたのは、
きっとその人が
「カノジョ」
に、似ていたからだろうと分かっていた
「ふっ、あぁっ・・・」
苦しかった
どうしようもなく
カノジョが笑うのはいつだって
雪の中だった
カノジョが涙する時すら
雪の中
綺麗だった、全てが
だから、壊れてしまいそうだから大切にしていたのに
僕は、僕には人を大切にすることなんて
できないんだ
目の前のその人は、優しくふっと笑った
本当にカノジョそっくりだった
でもちがうカノジョは雪の中でしか表情を変えないんだ
「知ってますか?世の中はうまくできてるんです。」
唐突に喋り出した
「嫌なことがあったら次には凄くいいことが起こるんです。」
そしてこう続けた
「だから、だから大丈夫です。」
その言葉は僕の中で静かに響いて
心地よかった
目を閉じるとカノジョは透き通るような美しい青をバックにふんわり笑っていた




