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おやすみ
君が泣いている。
自分はそれを、一枚隔てたこっち側からしか知ることができない。
温度のない――眠るように音のない――目を閉じるように色あせた――壁に額を押し当てる。
君が泣いている。
「あと一回」
うん。
「あと一回だけだから」
わかったよ。
君が、泣いている。
自分は笑顔を浮かべて待っている。すべてが終わるのを。
終わった後にあるのが幸せなのか、それとも君を黒く誘う道なのかはわからない。
でももう、こんな風に泣かなくても済むのなら。
答えの出た涙に、なるのなら。
もう、十分すぎる。これ以上なんて、必要ない。
すべてが終わったなら、そうしたら――
『……おやすみ』
その時、自分は君の隣にはいられないけれど、許して。