表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

男秘書?決死組

「さて……くさかべェを呼んだのはある一件についてだ」


ここは月華皇国ミルフィーユ、戦争耐えない世界ではあるがまるで危機感の足りないのんびりした国である

男秘書ーーーくさかべェに重々しい声と共に口を開いたのは鶏である

実はこれでも君主だ。彼も当初見た時は目を疑ったが事実は事実、彼は思考を放棄した。考えるのもアホらしかったのが本音だ

よくよく思い返してみればこの国の君主はジャガイモだったりネズミだったりと人ではないのだし。ジャガイモに至っては生物ですらない

それに、一介の秘書である彼と一国の主とでは身分が違う。直に会うこともないと思っていた

そう、“思っていた”


「俺と死ねるかくさかべェ」

「……はい、俺にも守る物がありますから」


大嘘だ。喋る鶏と死ぬなんて真っ平であった

さて、こうして直に会って話すことはないだろうと思っていた相手と話すことになったのはある事が原因である


つい七日前の事である。空白の跡地にいるはずの魔物が何を間違ってかゴツゴツ山に住み着いてしまった

偶然討伐に行っていた彼の上司、サブリナが発見し交戦したものの返り討ちに会い這々の体で逃げ帰ってきて発覚

以後国は入山を禁止してきた

他国も討伐に向かうもやはり返り討ち。そして昨日、彼は日和見に声をかけられたのだ

『俺と一緒に死んでくれないか』と

突然の言葉に男秘書は戸惑った。何故自分なのかもわからない。


「何故俺なのでしょうか?」


君主日和見はそれに抑揚のない声で言ってのけた


「お前の代わりは沢山いるからだ」


絶句。息をするのも忘れて目を瞬かせた

この鶏は、俺を使い捨ての駒として見ている。怒りがふつふつと沸く一方で、それなら納得だ。と冷静に考えてしまう自分もいる

なるほど合理的だ。あまり戦争にも出ず、軍事も内政もあまり経験を詰んでいない人間なのだから失ったとしても痛くはないのだから

それから日和見は一日だけ猶予をやる、と言って消えていった


そして再び時間は今に戻る

確かに彼は君主とは言え鶏とは死にたくない。これは本当だ

しかし守りたいものがあるのも事実。死にたくない、けど死ぬ

矛盾している気持ちを抑え、彼は死ぬことを決めた




-ゴツゴツ山・深部-



「さてここだ」

「ゼロコンマの確率だとしても俺はそれを信じます。日和見様、生きて帰りましょう」


彼が承諾してから出発まではすぐだった。どうやら断られたとしても一人で行くつもりらしかった

『くさかべェの代わりがいるように俺の代わりもいる』

出発間際に遠いところを見るかのように視線をやや上に向けた君主の言葉を思い出す

己すら駒として見る鶏は、誰よりも愛国心に満ち溢れていた。見返りなど要らぬ、一国の主としての強い想い


「奇跡を信じるかくさかべェ」

「はい、死んでは元も子もないですし何よりーーー」

「最期に見たのが君主の鶏では成仏しきれませんからね」


日和見は顔をしかめた。だが彼は気にしない

彼らのMPは満タン、道中の魔物は全て彼と日和見が武器と素手で叩き伏せた

彼らが今回取る戦法は特攻。自らのHPとMPをほぼ空にして分身を出し、それぞれがミサイルを持って体当たりを敢行する自爆技だ

やった後は虫の息、これで倒せれば彼らの勝ち。勝ったとしても救助が来るまでに魔物に襲われては死ぬ。決死の作戦

だが彼はこう考えた。必死ではない、と

必ず死ぬ必死ではなく、死を覚悟していく決死なのだ

似たようで中身はまったく違う、明確なラインを超えるか否かの違い。その可能性に彼は全てを賭けた


「ではいくぞくさかべェ!」

「了解!」


話は終わり。こちらに気付いた魔物のほう哮を聞きながらーーー分身し四人となった彼らは一直線に魔物へ突っ込んでいった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ