005 まとまりなき曲者たち
パクス・レガリア。存在するとされている、どんな願いでも叶う財宝。それがどこにあるのか、この場にいる者は誰も知らない。いや、創麗グループの連中すら知り得ないし、すっかりサイバーパンク化した世界各国の企業も血まなこになって探しているはずだ。
「はいはい!! パクス・レガリアなら、若葉ちゃんだと思います!!」
若葉は目を細める。「鼻血垂らしながら言われても、説得力ないですよ。桑原さん」
高杉は腕を組んだ。「そもそも、おれらが協力してる理由はパクス・レガリアを見つけるためだ。あれは核兵器をも超える威力を持つって言われてるからな。願い事も大事だが、おれらがほしいのは安泰な生活。パクス・レガリアを手に入れれば、もうスターリング・ファミリーに手出しできるヤツらはいねェ」
相川はタバコを咥える。「でもよォ、世界第1位の大企業様の創麗が手がかりすら掴めてないってことは、言ってしまえばまやかしみてェなもんじゃねェの?」
高杉は相川に向き直す。「それじゃロマンがねェ。しかも、先代が言っていただろ? パクス・レガリアは存在するって。アイツは独自に探していたみたいだが、見つける前に過剰摂取で死んじまった。おまけに、探索したデータをオールデリートしてな」
桑原は若葉の隣に座り、彼女の胸板を撫でる。「ねぇ、総長。女の子って、無限にイけるんだよ? あたしと試してみない……?」
若葉は項垂れて溜め息をつき、このまとまりのない曲者たちに言う。
「僕らがやるべきことは、先代の意志を引き継いでパクス・レガリアを手にすることでしょ。そのために、スターリング・ファミリーは拡大路線をたどり続けたんだから。あと、桑原さん。ヒトの乳首撫でるのはやめようか」
桑原は不服そうに、若葉の胸から手を離した。
「それに、手がかりならあるでしょ。創麗グループに反創麗派組織〝新世界同盟〟、アメリカの巨大企業〝アーク・エンジェル〟、そして僕ら。これらが共通して持っているもの、あるよね?」
高杉は口を尖らせながら言う。「〝ラプラス〟か……。だがあれは、ただ所有してるだけだぞ。先代いわく、ラプラスが4つ集まればパクス・レガリアになるとのことだったが、あの3大組織にどうやって対抗するつもりだ?」
「対抗なんてしなくて良い。奪えば良いだけさ」
「簡単に言ってくれるな。良いか? 若葉。一応確認しておくが、おれらを含めた4大勢力の中で一番弱ェのはおれらだぞ。創麗はかつてのアメリカのように世界中へ影響を強めてる。新世界同盟も旧EUやアメリカ諸国から資金援助と武器投与を受けてる。アーク・エンジェルだって、今やアメリカ人にとって救世主的存在だ。その点でいえば、所詮日本の裏社会しか取り仕切れてないおれらが、一番弱いのは間違いねェ」
高杉が残酷なほどに正論を言った頃、
ひゅぅううう……という音が5人全員の耳をかすめた。それから1秒足らずで、スターリング・ファミリーの本社ビルにミサイルが着弾するのだった。




