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熊騒動の思い出

作者: 山田 勝

「熊が出たぞ!」


 私が小学生の時、熊騒動が起きた。

 今と違ってあまり熊被害が話題にならない頃だ。


 大人達は関係機関に届け出たが・・・



「写メを撮ってきて下さい」


 とか。


「大きさは大きな大人くらいです」

「それ、太った人を見間違えたのだよ」


 とか。


「皆さん。私、〇〇党です。熊よけの鈴を皆さんにお配りします」


 そんな程度だった。


 実際に見た者が数人出て不安に思ったら・・・



 近所のおっさんが犬と共に現れた。

 デーブ〇〇〇さんに似た方だ。

 ガチで間違えられたことがあるそうだ。



 職業は犬の訓練士だ。

 布のケースを担いでいる。銃だとすぐに分かった。


「登下校の間は見回るからよ。犬も派遣するぜ。吠える位は出来る」

「ワン!ワン!」


「「「有難い!」」」



 近所で顔見知りだった俺は聞いた。


「その銃で熊を撃つの?」

「いんや、無理だね・・・」


 この銃は散弾銃で鳥を撃つものだ。

 25から30メートルで座布団くらいに飛び散るものだ。

 そもそもこの場所で狩猟許可を得ていない。


「なら、何故?」


「親父が千葉でトラ騒動があったときに呼び出されてボランティアで行ったのだ。かっこよかったな」


 昭和の時代、トラが寺から逃げ出した事件があったそうだ。


 その後、地元の名士が車と運転士を提供してくれた。


「おうよ。この地区の子はこれで登下校してくれ!」


「「「街宣車?!」」」

「右翼だ!」


「ただ灰色なだけだ。マジで議員せんせいに貸し出しているぞ!」


 まあ、威圧感のある車だった。

 中にテレビがあった。


 ちょっとした騒動になったが、皆、分かっている。

 何と言われようとも命がかかっているときは評判など気にならないのだ。街宣車で登校を止めなかった。


「車での登下校は禁止されています」

「なら、熊を退治してくれよ。先生よ!休校にせい!」

「・・・協議します」

「協議じゃねーよ!」



 その後、熊は現れなくなり。車登校も終わった。


 今思えば、これは昨今の熊騒動の前兆だったのではないだろうか?



 日本は極度に銃器を忌避して緊急事態に対処出来なくなっているのだな。

 そして、このしわ寄せは民間に押しつけられる。


 デーブ〇〇〇さんはその後、関係機関から表彰も何もされない。

 熊騒動で動いた人達を非難する人達がいた。


「熊って、山菜やドングリくらいしか食べないじゃない?」

「大騒ぎすると逆に危ないよ」

「大げさだな。たいした問題じゃないよ。金と名誉ほしさに行動したんだね」


 そいつらは人間じゃないな。

 と子供ながら思った。


 残念ながら今もいる。





最後までお読み頂き有難うございました。

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