第1巻 第25章 勝利 ― 悪魔との戦い
デイビッドとエマが悪魔を倒したあと、デイビッドの体は耐えがたい痛みに貫かれていた。目が焼けるように熱く、筋肉が震えていたが、それでも彼は耐えた。エマは彼を大樹の幹のもとまで支え、そっと横たえた。デイビッドはほとんどすぐに眠りに落ちた。
夜が明け、やわらかな風が彼を目覚めさせた。風が、彼らが避難していた乾いた樹皮をさらさらと鳴らしている。デイビッドはゆっくりと起き上がった。体は痛んでいたが、意識は次第に冴えていった。隣ではエマとルーシーがまだ眠っていた。
外に出た途端、彼の腹が鳴った。見上げると、巨大な木の梢に果実が光っているのが見えた。
「登るしかないな……」と彼はつぶやいた。
登り始めると、息がどんどん苦しくなっていく。二百メートルほど登ったあたりで、空気が鉛のように重く感じられた。
「なんだこれは……まだそんなに高くないのに……」
圧力はさらに強まり、視界が暗くなった。意識が遠のきそうだったが、前方に五つの深紅の果実が見えた。残された力を振り絞り、彼はそれをもぎ取った。
満足げな笑みが浮かぶ。ひとかじりしようとしたその瞬間、頭の中に奇妙な声が響いた。
「食べるな……それを食べてはいけない……」
デイビッドは凍りついた。指が震える。体の奥で、果実を食べたいという衝動が叫んでいた。深紅の果実は彼を誘惑し、至福を約束しているかのようだった。たとえ何を犠牲にしても、その味を知りたいと思った。
だが、頭の中の声は止まらなかった。しばらくの間、彼の意識を責め続けた。数分後、ようやくその声は消え去った。デイビッドは深く息を吐き、ゆっくりと降り始めた。
地面に足をつけると、まず深呼吸をして新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
戻ると、エマがすでに目を覚ましており、ルーシーはまだ眠っていた。デイビッドはエマに果実を渡し、次にルーシーを起こした。
「デイビッド……食べ物、持ってきたの?」と彼女は眠たそうに言いながらお腹を押さえた。
「ああ。これを食べて。」
ルーシーはすぐに果実にかぶりついた。エマは受け取ったが、無表情のまま静かに食べ始めた。デイビッドは少し離れて座り、自分もひと口かじった。
その瞬間、彼の剣がかすかに震えた。まるで彼の行動に反応するかのように。デイビッドの体に奇妙な快感が走り、力が何倍にも膨れ上がったように感じた。今なら、何でもできる――そんな錯覚さえした。
ふと振り向くと、エマは果実を半分も食べていなかった。
「どうした? 食べないのか?」
「いらないわ。」彼女は静かに答えた。
デイビッドは驚いたが、昨日の戦いの疲れだろうと考え、気にしなかった。
ルーシーはお腹を満たすと、すぐにまた眠りについた。夜が再び訪れる。デイビッドは木の幹の中でじっとしていた。訓練をする気にもなれなかった。疲労か、それとも胸の重さか――体が動かなかった。エマも同じように中に留まっていた。
彼は横になり、深い眠りに落ちた。
夢の中で、彼はエマとルーシーを見た。二人は彼のそばに立ち、見下ろしていた。ルーシーの顔には涙の跡があった。
「お願い……目を覚まして……その果実を食べちゃダメ……」彼女の声は震えていた。
再び叫ぶ。声が絶望の悲鳴に変わった。
「起きてぇぇぇっ!」
その瞬間、デイビッドは目を見開いた。




