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第1巻 第11章 ― 満月の日

長い時が過ぎ、ついに満月の日が訪れた。


デイビッドは険しい表情で部屋に座っていた。どうしても「運命の領域」のことが頭から離れない。まるでそれが彼を呼び寄せているかのようだった。


部屋を出て廊下を歩くと、周囲の生徒たちも同じように落ち着かない様子を見せていた。見えない重圧に押しつぶされているかのように。


やがて大広間に入ると、そこには一年生全員が集まっていた。


ヴィンセントが一歩前に出て口を開いた。


「諸君、ついに『運命の試練』の日が来た。私はただ幸運を祈るばかりだ。試練を突破できれば、この世界に自由に出入りできる権利を得られる。」


彼は一瞬言葉を切り、わずかに微笑んだ。


「だからこそ…できるだけ多くの者が生き残ってほしい。」


数人の生徒が苦笑を浮かべたが、心の奥では皆理解していた。最後まで生き残れるのは一割にも満たないという現実を。


ヴィンセントは続けた。


「このカプセルが諸君の肉体を守る。精神は『運命の領域』へと送られる。中に入り、覚悟を決めろ。」


一人、また一人と生徒たちはカプセルへ入っていった。すぐに準備は整った。


ヴィンセントの声が再び響く。


「試練の目的は単純だ。中級魔獣の核を一つ、下級魔獣の核を三つ手に入れろ。その後、南へ向かえ。そこに『帰還の柱』がある。魔獣は二十メートル以内に近づけない。辿り着けば安全だ。…健闘を祈る。」


その言葉を最後に、デイビッドの意識は一気に引き込まれた。目を開けると、彼は見知らぬ場所に立っていた。


「森…? ここはどこだ?」


本能が危険を告げていた。周囲を警戒しながら、彼は茂みをかき分け進んだ。


「妙だな。魔獣も人もいない。ただ植物だけか…。」


舌打ちしながら歩を進める。やがて太陽が沈み始めた。


「もう? まだ四時間しか経ってないはずだ…。」


その瞬間、背後で何かが動く音がした。


振り返ったが、何もいない。再び歩き出すが、不穏な気配は消えない。


「まるで檻の中だ…広大で、静かな檻。」


次の瞬間 ――バキッ、と音が鳴った。


振り返るが、やはり何もいない。だが足に何かが絡みついた。


「っ!?」


反射的にナイフを抜き、必死に斬りつける。地面に叩きつけられ、呻き声を漏らす。


「ツタ…? なんだこれは!」


再び立ち上がり、後方を確認すると、何かが滑るように追ってくる。


「生きてる? いや…生きた植物か!? 逃げなきゃ!」


闇が完全に辺りを覆い、それは彼自身の力と同化するかのようだった。全力で駆け抜けるデイビッド。


その先に巨大な苔むした石像が見えた。迷わず飛びつき、ナイフを使って登り始める。


背後ではまだツタが追ってきていた。


必死に腕を引き上げ、石像の腕までよじ登る。ツタはあと数センチのところで止まり、それ以上は近づけなかった。


やがてそれは森の奥へと引いていった。


デイビッドは大きく息を吐き、石像の上に仰向けに倒れ込み、そのまま眠りに落ちた。


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