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1ー4 「路地裏、暗躍する二人」

 --・・・--・---・-・-・--- 


「それで、まんまとその方のペースに載せられて世話を焼くことになったと、そういうことで良いでしょうか?」

 響いた声は、薄暗い路地裏には似つかわしくないくらいにく通った。

 冷ややかに確認を寄越したフォン・デュッケの口調は沈着としたものだが、どうも非難めいている。フランツは機嫌を損ねた馬を宥めるような心地になりつつ、唇と目を吊り上げて肯定を示してやった。

 すうっ、と彼女の口から息を吸う音が鳴る。

「情けない」

 はっきりとなじられる。数年来の付き合いになる相棒とはいえ、およそ上司に対する言葉遣いではなかった。

「どうされるおつもりですか。このまま、幼稚な裏工作のお手伝いを?」

「苛立つなよ。別に、自分の仕事を忘れたわけじゃない」

 口早に問うてきた部下を実際に宥めて、フランツは意向を聞かせる。

「つまりだ、その子どもが気になる。マティルドにも浮浪児はまだいるしガキ同士のコミュニティも存在するが、今どきクーポンの使い方も使い所も知らんというのは妙だ」

「奉公先から抜け出した子ども、という可能性もありますが」

 彼女の指摘に反論するところはなく、フランツは降参するみたいに両手を掲げてみせた。

「言う通りだな。推測の域はもちろん出ない。が、さっきお前がのした連中みたいにカタギじゃなさそうなのが街中をうろつき始めたのも、ここ数日のことだろう」

「何か関連があったとしてもおかしくはない、と?」

 頷く。どうやら同意を得られたらしく、彼女が目をつむって息をつく。

「では、しばらくは警察の厄介に?」

「さすがにお嬢さんのオママゴトにまで付き合う気はないさ。特殊捜査に関わる案件だからと、分署長殿にはそう通達した。確保されれば身柄をいったん預かる形になる」

「……つまり、結局、乞われた通りのことをされるのではないですか」

「?」

 呆れた様子で呟かれる。指摘の意図を掴めなかったフランツが視線を返すと、フォンはなんでもないというふうにかぶりを振った。

「私はどうすれば? 一緒になって子どもを探しますか」

「まさか。これまで通りだ、機関について探りを入れろ」

 フランツは言いながら顎をしゃくり、先ほどやり合った彼らの方を示した。

「ちょうどそっちに手掛かりが転がっている。しっかり、搾り取ってやれ」

 指示に従い、フォンがあちらへ向き直る。陽射しを防がれ翳る路地、ぬばたまの髪が翻り、影みたいに揺れた。

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