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4、画策

 拉致してきた娘が熱を出したのは、屋敷に運び込んだ翌日の夜だった。


 切り札になるはずの〈嵐が丘の娘〉は、右脚を折り、傷だらけになっていた。想定外だ。


 最も想定外だったのは、娘の跳ねっ返りな性格とそれなりにある教養だった。世間知らずで、外の世界を知らないはずだと予想していた彼女は、思ったよりも外の世界を知っているようだった。拉致すればおとなしくこちらの言うことを聞くだろうと高を括っていたのだがーー


 白い肌に、白い髪、幻想的な緑色の瞳といういかにも儚げで気の弱そうな見た目のわりに、顔はきりりとしてはっきりものを言う。


  とんだ思い違いだった、とルーカスは書斎で思い悩んだ。思ったより扱いにくい。


(めんどうだ……)


 サインするだけの書類に、羽根ペンをかつかつ言わせながら頬杖をつく。そもそも、この屋敷は彼女が暮らしていた丘からそう遠く離れていない。〈嵐追い〉に見つかる可能性を考えると、長居はできないのだが。


(骨折されてしまったしなぁ)


 本来はもっと遠くに連れていくはずだったのだが、怪我されては仕方ない。近くの屋敷に運び込むしかなかった。





 先程、監視も兼ねてメイベルの面倒を見ている侍女のヘーゼルが、彼女が熱を出したと報告に来た。


 原因は言うまでもなくストレスだろう。相変わらず無表情な侍女だったが、どこか責めるような目をしていた。


(好きでこんなことをするわけじゃない)


 言い訳がましいが、あの娘に自由がないように、自分にだって自由がないのだ。自分はさんざん利用されてきた。他人を利用して何が悪い。


(めんどうだろうがなんだろうが、関係ない)


 ふっとため息をついた。紙がぺらりとめくれあがる。


(どうにかする)


 折れない自信はあった。人生がかかっているのだから。


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