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第83話 追放幼女、刺客を尋問する

2024/08/29 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

 G-77(ナナ)たちがぎちぎちに縛り、動けなくなったところであたしはモンタギューの魂を縛るのを止めた。


「ぐっ……はぁはぁはぁ」


 かなりきつく魂を縛っていたせいか、モンタギューの息遣いは荒い。


 あたしはG-77(ナナ)たちに残りの男たちを縛るように命じてから尋問を開始する。


「モンタギューでしたわね。お前、どういうつもりですの?」


 あたしは高圧的なイメージでそう尋ねた。しかしモンタギューは息を整えると、ギロリとあたしを(にら)んでくる。


「お前は出入り禁止を破った上に、わたくしの領地でわたくしに危害を加えようとした立派な罪人ですのよ?」

「……サウスベリー侯爵騎士団の騎士にこんなことをしてタダで済むと?」


 は? 何言ってるの? 頭おかしいんじゃない?


 思わずそう怒鳴りつけそうになったが……。


「ははは、こんな男が騎士を名乗るとは笑わせますね」


 背後から聞こえてきたアルフレッド卿の声にそれを思いとどまる。振り返ると、アルフレッド卿が扉を開けて悠然とこちらに向かって歩いてきていた。


「なんだ! 貴様は!」

「サウスベリー侯爵騎士団の騎士は名乗りもせずにそのような罵倒をするのが礼儀なのですか?」

「なっ!? なんだと! この平み――」

「平民ではありませんよ」

「なんだと!?」


 するとアルフレッド卿はわざとらしく大きなため息をついてみせた。


「私が誰か、分からないのですか?」

「は……?」


 モンタギューは怪訝そうな表情でアルフレッド卿の顔をじっと見つめる。


「やれやれ、仕方ありませんね。私はアルフレッド・ゴドウィン、次期バイスター公爵と言えば理解できますか?」

「えっ?」

「さあ、きちんと名乗りなさい」

「う……ま、まさか、次期バイスター公爵閣下だったとは存じ上げず……」


 相手が自分よりも身分が上の相手だとわかったからか、そうモンタギューは言葉を濁した。


 ……あのさ。あたしだって一応はあんたの仕えてる主の実の娘で、しかも身分で言えばれっきとした男爵なんですけど? あんたより身分は上なんですけど?


「オリヴィア嬢、この者は?」

「あ、はい。この男はモンタギュー・パーシヴァルという騎士爵です」

「パーシヴァル? ああ、もしやサウスベリー侯爵の金魚のフ……おっと、これは失敬。パーシヴァルに金魚など飼えるわけがありませんでしたね」


 アルフレッド卿は明らかに馬鹿にするような口調でそう言うと、フッと小さく笑った。


 演技なのだろうけど、ものすごく嫌味ったらしい。


 それとどうでもいいけど、この世界にも金魚っているんだね。知らなかったよ。


 一方のモンタギューは顔を真っ赤にし、ものすごい目でアルフレッド卿を睨んでいる。


「おや? どうしましたか?」

「い、いえ……」


 モンタギューは急にふいと視線を()らす。


「それで、ラグロン男爵とはどのようなご関係で?」

「それは……」


 モンタギューが再び口ごもると、なんとマリーがそっと耳打ちしてきた。


「え? そうなんだ。アルフレッド卿、この男はラグロン男爵の三男だそうですわ」

「ほう」

「おい! この半貴ぞがはっ!?」


 マリーを罵倒しようとしたモンタギューの顔面をアルフレッド卿が蹴り上げた。


「よくもまあ、レディをそのように口汚く罵れるものです。騎士の風上にも置けぬとはこのことですね」

「う……あ……」

「それで? なぜスカーレットフォード男爵閣下に出入り禁止を命じられているにもかかわらず、夜襲など仕掛けてきたのですか?」

「それは……その……」

「どうしました? 言えない事情でも?」

「……」

「ああ、それもそうですね。仮にも騎士たる者が神聖なる収穫祭の夜に襲撃を仕掛けるなどという蛮行に及ぶなど、とても普通では考えられませんからね」

「え? 収穫祭? 今日が?」

「ええ。そうですよ。私はその招待客です」

「あ、な……」

「しかし、このことはよく陛下と猊下(げいか)にお伝えしなければなりませんね。サウスベリー侯爵はスカーレットフォードで収穫祭が行われた神聖な日の夜、しかもわざわざ月の入りを待ってスカーレットフォード男爵閣下を襲撃した。そしてその先頭に立ったのはラグロン男爵の三男モンタギュー・パーシヴァルという男であった、と」

「ひっ!? そ、それだけは! それだけはどうかお許しください!」

「では、事実をすべて話していただけますね?」

「はい! 話します! 話しますから!」


 こうしてアルフレッド卿に尋問されたモンタギューはすべての計画を洗いざらい話したのだった。


◆◇◆


「つまり、(けい)はスカーレットフォード男爵閣下を拉致する作戦を遂行していた。作戦の指揮官はセオドリック・ドーソン騎士爵であり、彼にそれを命じたのはサウスベリー侯爵領の代官でもある家令のブライアン・ラスである、と」

「はい」

「サウスベリー侯爵の命令はなかったのですか?」

「い、いえ、そこまでは……」

「なるほど。そうかもしれませんね。オリヴィア嬢、何か聞いておきたいことはありますか?」

「え? ええ、そうですわね。お父さまはわたくしを呼び戻して、どうするおつもりですの?」

「知りません」


 うーん、それもそうか。それだと、別に聞きたいことも……あ、そうだ。


「お前はわたくしのマリーのなんなのです?」

「……異母兄です」

「どうしてマリーにあのような暴言を?」

「それは……あの女が半貴ぞがっ!?」


 アルフレッド卿がモンタギューの顔面を踏みつけた。マリーのほうを見るが、特に心配しているといった様子はなく、ただただ困惑しているといった様子だ。


「アルフレッド卿、もう十分ですわ。二人の間に身内の情がないということがわかりましたもの」

「そうですか」

G-77(ナナ)、この者を地下牢へ」


 カタカタカタカタ。


 G-77(ナナ)は六体のゴブリンのスケルトンと力を合わせてモンタギューを持ち上げ、地下牢へと運んでいくのだった。

 次回、「第84話 決死の突撃」の公開は通常どおり、2024/08/29 (木) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 後から出てきて威張る次期公爵も貴族らしいといえばそうなのかな 他領地ではこの位の手助けが丁度いいのかも [一言] 他社サイトで応援やコメントが急に増えたのは何でだろうと思ってたら、なろうの…
[一言] アルフレッドいいとこ持ってくなー、主人公にも恩が売れたしパパンどうにでも料理できるようになっちゃったじゃない。王家に疎まれない程度にこの世の春を謳歌してくれや。
[良い点] これでモンタギューは貴族としてはゲームオーバーっすね。 しでかした事がほぼ野盗と変わらんし 後はモンタギューの実家に賠償金(実質は戦争捕虜の身代金)を出させて返還→実家から廃嫡→ガチで野盗…
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