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第80話 追放幼女、襲撃に対処する

2024/08/28 ご指摘いただいた誤字などを修正しました。ありがとうございました

「オリヴィア様、これは一体?」


 あたしが外に出ようとすると、ダイニングでワインを飲んでいたはずのアルフレッド卿とエドワード卿に声を掛けられた。


「襲撃ですわ。ここは魔の森の中ですもの。お二人はご家族と室内でお待ちくださいませ」

「我々もお手伝いしましょう」

「いいえ、お気持ちだけ頂いておきますわ。ここはスカーレットフォード、わたくしの領地ですわ。お客様の安全を守るのはわたくしの仕事ですもの」

「……なるほど。それもそうですね。ではご武運を」

「ええ。感謝いたしますわ」


 あたしはそう言って微笑むと、すぐに外へと飛び出した。


「みんな! すぐに避難! 酔っ払いはみんなで運んで!」

「おおおおれもぉ~、たたかぁっすよぁ~」

「そぉだそぉだ~」

「はい! 酔っ払いはダメ! みんなべろべろじゃない! マリー、お願い!」

「かしこまりました。ほら! 早く避難しなさい!」

「ええぇ~?」


 ウィルたちがまだグダグダ言っているが、こんなところで立ち止まっている暇はない。


 あたしはたまたま近くにいた鳥のスケルトンに命令を出す。


 ええと、この子は……93だね。


「Bi-93、侵入者に上から岩を落として攻撃。水堀を渡らせないで。周りの子たちにも伝えて」


 カランコロン。


 鳥のスケルトンが飛び立ち、そこから次々と命令が伝わって村中の、さらには森のあちこちに隠れていた鳥のスケルトンたちが一斉に攻撃態勢に移る。


 続いて近くにいたG-177に質問する。


「襲撃はゴブリン?」


 G-177は首を横に振った。


「ワイルドボア」


 首を横に振った。どうやらこれも違うらしい。


「じゃあクレセントベア?」


 やはり首を横に振る。


「……もしかして、人?」


 今度は首を縦に振った。


 人が攻めてくる? となると盗賊? いや、違う!


「セオドリック?」


 首を縦に振った。


「ふーん、そう。そう来るんだ。よりにもよって神聖な収穫祭の当日だなんて舐めた真似してくれるね。Bi-61、街道方面の警備に当たらせているクマ-3からクマ-15までを呼び戻して襲撃者どもを駆除するように伝令。それと村内とその周辺の範囲で村の者とお客様以外は見つけ次第攻撃するようにすべてのHRに伝令。終わったら戻ってきて」


 Bi-61はすぐさま森のほうへと飛び去っていった。


 ふう。こんなもんかな?


 戦況がどうなっているのか気になるけど、あたしがのこのこ出て行くのは逆効果だってことくらいは理解している。


 だって、セオドリックの目的はあたしの命だろうからね。


 こうして命令を出し終えたあたしは家へと戻るのだった。


◆◇◆


「うろたえるな! 進め! 敵もこの暗闇では視界が利かん!」


 けたたましく鳴り響く警鐘にセオドリックはそう叫び、部下を鼓舞する。


 ヒュンヒュンヒュン!


 仮設橋の上を渡る騎士たちに、街壁の上から次々と矢が射掛けられる。もちろん射手はゴブリンのスケルトンだ。


 専用に作られた少し小さな弓から次々と放たれる矢は、まるで見えているかのように仮設橋へと降り注ぐ。


「ぐあぁつ!?」


 何発もの矢を受けた騎士はよろめき、仮設橋から水堀に転げ落ちた。重い鎧を着た騎士はあっという間に深い水底へと沈んでいく。


「ぐああぁっ!?」


 さらに先行して渡り終えていた軽装の騎士にも矢が降り注ぎ、避けきれなかった彼もそのまま地面へと崩れ落ちる。


「どういうことだ!?」

「まるでこちらが見えているようだぞ!?」

「ええい! 大盾を構えろ」

「「「はっ!」」」


 セオドリックの一喝ですぐに部隊は統制を取り戻し、盾を構えて前進を開始する。セオドリックの判断は奏功し、石の矢はことごとく大盾によって防がれた。


 そうして次々と騎士たちは水堀を渡り、セオドリックを含むおよそ半数が渡り終えたそのときだった。


 ドシャーン! バシャン! バシャン! バシャン!


 けたたましい音と共に仮設橋が大きく揺れた。それだけでなく、仮設橋周辺の水堀で激しく水しぶきが上がっている。


 その揺れで渡っている最中の騎士はバランスを崩し、水堀に転落した。


 さらに!


「ぐあっ!?」

「いてっ!?」


 水堀を渡り終えた騎士たちにも硬い何かが降り注ぐ。


「くっ! 投石か! 工作隊! 門を破れ」

「「「はっ!」」」


 巨大な鎚などの工具を担いだ者たちが素早く門に取り付いた。すぐに吊り下げ式の鉄格子に取り掛かろうとしたのだが……!


「うっ!?」

「ぐあっ」

「ぎゃああああ!」


 工作隊の者たちは次々と悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。


「おい! どうしぐあっ!?」


 確認しに近づいた騎士もまた、大声を上げて(うずくま)る。


 そう、物陰に隠れていたホーンラビットのスケルトンが角を突き立てたのだ。


「ひっ!?」

「な、何が?」


 正体不明の攻撃を受け、騎士たちに動揺が走る。騎士たちは慌てて何に攻撃されたのかを確認しようとするが、灯りが一切ないせいで真っ黒なホーンラビットのスケルトンの姿を視認することができていない。


「ランプ! ランプは!?」

「ダメだ! 矢の的にされるぞ!」


 セオドリックは、パニックに陥りつつある部下の行動をすぐさま制止した。


「ですが!」


 今度は大量の岩が空から降ってきた。


 ドシーン! グシャッ!


「ぐ、あ、あ……」

「た、助け……」


 かなりの高高度から落とされたようで、鎧など関係なく直撃を受けた騎士たちは地面に倒れていく。


 バキン! グシャッ!


 落石が仮設橋を直撃し、その一部が破損した。


「え?」

「退路が?」

「うわぁぁぁぁぁぁ」

「落ち着け! 突破せよ!」

「ダメだ!」

「逃げろぉぉぉぉ!」


 とうとう騎士たちは恐慌状態に陥るのだった。

 次回、「第81話 追放幼女、状況を確認する」の公開は通常どおり、2024/08/26 (月) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無敵の軍団ですね。このまま手加減なく全滅させてほしいです。まあセドリックは話の展開上多分生き残るんでしょうけど。
2024/08/26 10:37 退会済み
管理
[一言] スケルトンはAIロボットのようです。主人公の会社はイーロン・マスクやボストン・ダイナミクスを超えることができると思います。
[良い点] 前線に出ないのが冷静で良い [気になる点] 真っ黒な全身タイツと目出し帽を作らないとね [一言] 面白いです
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