表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/155

第68話 追放幼女、鉱脈を発見する

2024/08/26 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

 それから数日後、ゴブリンのスケルトンがワイルドボアのスケルトンと一緒に戻ってきた。ワイルドボアのスケルトンの背中にはあたしの頭よりも大きな岩が載せられている。


 あれ? なんだっけ? あんなこと命じた覚えは……あっ! ああああ! もしかして!


 あたしは慌てて家を飛び出した。


「工房! ウォルターの工房に行くよ! D-8!」


 カランコロン。


 最近あたし専用となっているフォレストディアのスケルトンに乗り、大急ぎでウォルターの工房へと向かう。


「ウォルター!」


 工房に飛び込んだのだが、どうやらウォルターは作業中だったようで一心不乱に鎚を振っている。


 カンカンカン、と小気味のいい音と共に赤熱した鉄が少しずつ形を変えていく。


 あっと、邪魔しちゃ悪いね。


 そう思ってしばらく待っていると、作業が終わったようだ。どうやら鎌の刃の部分を作っていたらしいウォルターは、満足げな表情で虚空を眺めている。


「終わった?」

「え? ああああっ! 男爵様! す、すみません! 俺、気付かずに……」

「いいよ。アポなしで来たんだし、手、放せなかったでしょ?」

「それは……」

「でね。ちょっと見てほしいものがあるの」

「見てほしいもの?」

「うん。こっち来て」

「はい」


 あたしはウォルターを外に連れ出す。


「これ! この岩、もしかして金の鉱石じゃない?」

「これがですか?」


 ウォルターは岩に近づき、じっとその表面を観察する。


「あー……これは……金、なのか?」

「違うの? ちゃんと調べてみてよ」

「わかりました。少々お待ちください」


 ウォルターはそう言うと工房に入っていき、すぐに小さな金槌を持って戻ってきた。


「それでどうするの?」

「割るんです。そうすると中から金の小さな粒が出てくるはずです」

「そうなんだ。よくそんなこと知ってるね」

「死んだ父に教えてもらいました。川で砂金が取れるのは、岩が川を流れているうちに砕けて、中にある金だけが残ったからなのだ、と」

「へぇ、そういう仕組みなんだ」

「はい。じゃあ、やりますよ。ちょっと下がっていてください」

「うん」


 そう言ってウォルターは岩を金槌でガシガシと叩いていく。それを何度も繰り返していると、やがて岩は粉々に砕けた。


 するとウォルターはその砕けた破片をふるいに掛け、また残った岩を砕いていく。その様子をしばらく見ていると、ウォルターが大量の砂の中から何かを発見した。


「あ、ありました。これが金だと思います」


 ウォルターはそう言って、金色の小さな砂粒を見せてきた。


「へぇ、ホントだ。あれ? もしかしてあれだけの大きな岩なのにたったこれだけしか採れないの?」

「探せばもう少し入っているかもしれませんが、多分そんなものではないかと」

「そうなんだ。だから金って貴重なんだね」

「はい」

「うん。わかった。ありがとう。じゃあ、残りの岩にも金がありそうだったら取り出しておいてね」

「わかりました」

「じゃ、よろしく。あたしはこの岩を採ってきた場所を……あ! そうだ! ウォルター」

「なんでしょうか?」

「あのね。さっきの岩を砕くの、ワイルドボアのスケルトンがやったほうがいいと思わない?」

「それは……そうですね」

「なんかこう、粉ひき器みたいな感じで粉にできないかな?」

「粉ひき器ですか」

「うん。あんな感じですり潰したりできないかなって」

「……わかりました。ちょっと考えてみます」

「うん。よろしくね。粉ひき器はハロルドが直したことあるから、相談してみるといいかも」

「はい」


 こうしてあたしはウォルターの工房を後にするのだった。


◆◇◆


 それからあたしはウィルを連れ、ため池のさらに五キロメートルほど上流の場所にやってきた。


 かなり魔物を駆除したとはいえ、ここはまだ完全にあたしたちの領域とは言えない場所だ。念には念をということで、クレセントベアのスケルトンを十体同行させている。


 さて、どうやらここでは大規模な崖崩れがあったようだ。川の南側の斜面が幅三十メートルほど崩落しており、荒々しい岩肌が露出している。


 そんな岩肌の露出している部分に探索に出したゴブリンのスケルトンたちがわらわらと集まっている。


「姫さん、ゴブすけたちがやたらと集まってるっすね」


 多分、あそこに金鉱脈があるのだろうけど……。


「うん。でも、その前にあっちをなんとかしないと」


 あたしはそう言って川の上流のほうを指さした。


 そこには崖崩れのときに流出したらしい土砂や岩が小川をせき止めており、その土砂の隙間から水が漏れ出ている。


「どういうことっすか?」

「あれ、あのまま放っておいたら大変なことになるでしょ」

「へ?」

「また大雨が降ったら? 多分向こうに水が溜まってるだろうし、下手するとスカーレットフォードに土石流が、なんてことにもなりかねないでしょ」

「えええっ!?」

「そんなわけだからウィル、誰か建設工事している人を手配して。やっぱりパトリック?」

「そうっすね。こういったのだとあいつしか経験ないっすけど、今は水道? とかいうのの建設やってるっすね」

「そうなんだ。ウィルはできないの?」

「堀ならやったことあるんすけどね」

「そっかぁ。じゃあパトリックに相談しながらあたしが直接やるね。一歩間違えたらスカーレットフォードが壊滅するかもだし、魔物もいるかもしれないから」

「へい」


 そんな会話をしながら、あたしたちは土砂の上に登って向こう側を確認する。


 うん。やっぱりね。そんなに広くはないから今すぐに危険ってことはないだろうけど、そこそこの広さの池が出来ている。


「じゃあ次。あっちに行ってみよう」

「へい」


 あたしたちはゴブリンのスケルトンたちが集まっているところに移動した。


「見つけたものはどれ?」


 カララララン。


 ゴブリンのスケルトンたちが一斉に崖や地面に転がっている岩々を指す。


「そっか。やっぱりここが鉱脈で間違いないね」

「はぁ。この岩に金が入ってるんすか?」

「うん。大きな岩に小さな砂粒一つくらいしか入ってないけどね」

「そんなちょっとしかないんすか!?」

「そうだよ。だから金は貴重なんだ」

「はぁ~」


 そう言うとウィルは足元に転がっている石を拾い、まじまじと見るのだった。


◆◇◆


 一方その頃、ルディンハムの王宮では国王が宰相を自身の執務室へと呼び出していた。二人とも三十代後半といったところで、まさに精気に満ち(あふ)れているといった様子だ。


「いかがなさいましたか?」

「うむ。昨日の晩餐でアレクシアから興味深い話を聞いてな」

「第二王女殿下から?」

「なんでも巷ではサウスベリー侯爵が悪魔()きとなり、幼い娘に乱暴をしたうえで殺し、魔の森に捨てた、などという噂が流れているらしい」

「はい? なんですか? その噂は」

「しかもその娘はまだ生きており、サウスベリー侯爵は彼女を始末するために大軍を魔の森へと差し向けたのだとか」

「そのような馬鹿げた噂は一体どこから流れてきたのでしょうねぇ」


 宰相は小さくため息をついたが、すぐに真顔になってニヤリと笑った。


「陛下のご意向、しかと承りました」

「ああ、頼んだぞ」


 そう言って国王もニヤリと不敵な笑みを浮かべたのだった。

 次回更新は本日 21:00 を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんか分かった。国王有能やな( ̄ー ̄)
[気になる点] 国王はパッパとグルなのか!?はたまた悪い噂を流してパッパを没落させようとしてるのが国王なのか!?気になるなぁ
[一言] ルディハム国で最初にオリヴィアにあうのは誰になるやら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ