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第59話 追放幼女、川でお宝を発見する

2024/08/23 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

 最近はこれといったトラブルもなく、平穏な日々が続いている。時おり小規模なゴブリンの群れが近づいてくることはあるものの、スケルトンたちによって早期に発見され、新たなスケルトンへと変わっている。


 また、ビッターレイとの街道の周辺から徹底的に魔物の駆除をした結果、街道の近くに魔物が現れることはなくなった。


 ただ、そのせいなのか北西から東にかけてのエリアに魔物が移動したようだ。そちらはあまり遠くまでスケルトンに監視をさせていないので詳しいことはわからないけど。


 街道といえば一応南東にクラリントンへの街道はあるけれど……あれ以来一度も手入れをしていないので多分もう自然に還っているんじゃないかな?


 ま、でも問題ないよね。あんなチンピラみたいな連中が牛耳っているような町はこっちから願い下げだし。


 どうせなら魔の森をもっと開拓して、北のほうの別の領地と道を繋げてしまうのもありかもね。魔の森の中をショートカットして通れるなら需要はあるんじゃない?


 それに、万が一ラズロー伯爵と揉めたとしても、そっちに活路が見出せるしね。


 問題は、そっちのほうの地理がよく分からないことかな。いざ頑張って道を繋げたけどサウスベリー侯爵領でした、なんてなったら意味ないし。


 そんなこんなで過ごしていたある日、スカーレットフォードを嵐が襲った。昔から住んでいる人たちも記憶にないほどの強い嵐で、一夜明けてみるとなんと土塁や石垣が崩れる、屋根が飛ぶなど甚大な被害が出てしまっていた。


 急いで直さなければ、ということで、住民とスケルトン総出で修繕作業をすることとなり、あたしは特にやることもないので邪魔にならないように少し離れて村の石垣の修繕の様子を見守っているところなのだが……。


 あれ?


 近くを流れる小川が何やらキラキラと光っている。


 うーん? 光が水面に反射したのかな?


 一瞬そう思ったのだが、なんとなく違う気がする。


 気になってあたしは小川のほうへと向かってみる。


「お嬢様?」

「そこの川に行くだけだから」

「川へ?」

「うん。なんか、妙に光ってる気がして」

「光る?」


 怪訝そうな表情を浮かべつつも、マリーも一緒についてくる。そうして小川の近くにまで来ると、マリーは怪訝そうな表情を浮かべた。


「これは一体……?」

「うん。なんだろう? やっぱり光ってるよね」


 そう。小川の中だけでなく、その岸辺もキラキラと光っている。近づいてみると、何やら小さな金色の粒があちこちに落ちている。


「ねえ、これって砂金じゃない?」

「砂金!?」


 マリーが慌ててしゃがみ、河原から光る砂粒を拾った。


「……そうかもしれませんね」

「確認してみよう」

「確認ですか?」

「うん。サウスベリーにいたころにマリーがさ。鉱石に関する本を持って来てくれたでしょ?」

「そうだったでしょうか?」

「うん。そうだよ。その本にね。金とよく似た雲母っていう石があるって書いてあったんだ。雲母には価値がないらしいんだけど、軽いから水に沈めるとすぐに見分けられるんだって」

「そうなのですね」

「うん。ちょっと、タライを取ってきて」


 カランコロン。


 近くにいたゴブリンのスケルトンに命じてタライを持ってきてもらう。あたしはそこに小川の水を入れ、落ちている金色の粒を入れる。


 すると金色の粒はまっすぐに水の中へと沈んでいった。


「うん。たぶん砂金だと思うよ。雲母だと、ひらひらとゆっくり沈むらしいからね」

「なんと! しかしこの金は一体どこから?」

「昨日の嵐で、上流のどこかが崩れたんじゃない? そこにたまたま金鉱脈があって、そこから流出した金が流れてきたんじゃないかなぁ」

「金鉱脈!?」

「うん。これ、鉱山を押さえたら一気にうちは豊かになるねぇ」

「はい! 金があるとわかれば……」


 息を弾ませたマリーだったが、すぐに表情が曇る。


「うん? どうしたの?」

「いえ、サウスベリー侯爵が何を言ってくるかと……」

「あー、そっか。色々と難癖つけてきそうだよねぇ。あのおじさん」

「はい」

「うーん、まあ、それは後で考えるとして、とりあえず砂金を回収しちゃおうか。じゃ、ちょっとスケルトンたちに……」


◆◇◆


 それからあたしは石垣の修理と並行しつつ、人海戦術……あれ? 人は何もしていないし、骨海戦術かな?


 どっちでもいいや。とにかく、百体以上のスケルトンを投入して小川を流れている砂金の回収を行わせている。


 それと同時並行で、大急ぎで小川をせき止める堰を作ることにした。


 だって、せっかく流れてきた砂金が下流に流れて行っちゃったらもったいないでしょ?


 それに、せっかくため池の建設工事の技術がこっちにも伝わって来たことだしね。


 あ、伝わってきたというのはもちろん、ゴブリンのスケルトンの作業能力のことだよ。技術者が移住してきたわけじゃないからね。


 なんでそんなことが分かるかっていうと、スケルトン同士で技術が伝わる仕組みも大体分かってきたんだ。


 どうやらあたしのスケルトンたちはお互いに情報を伝え合っていて、一体のスケルトンが何かを体験すると、その体験が近くにいる別のスケルトンに勝手に伝達されるみたい。それで、しばらくするとそのスケルトンも同じことを覚えて、さらに別のスケルトンに伝達する、という感じになっているみたいなんだ。


 でね。うちのスケルトンたちはこの前、ビッターレイで農業用ダムの建設工事に参加していたんだよね。


 そのときに、ダムの作り方とか護岸工事のやり方とかを学んできたってわけ。


 ほら、あたしたちが徹底的に魔物を駆除したでしょ? それでビッターレイの周りの魔物もほとんどいなくなったみたいなんだよね。


 それで、ダムを作って農業を拡大しようってことになったみたい。


 で、そのときの技術が時間をかけてこっちのスケルトンたちにまで伝わってきたってわけ。


 だから、試すにはちょうどいいかなって思ってさ。


 それに、これ以上畑を増やすには今の小川と井戸水だけじゃ足りないなってちょうど思ってたところだったんだよね。

 次回、「第60話 追放幼女、精錬を依頼する」の公開は通常どおり、明日 2024/08/13 (火) 12:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
つまり同じ伝達能力が本来のゴブリンにもあると
[一言] 何でもかんでも幼女領主のスケルトンが作業してたら一向に領民は豊かにならなそうだな
[一言] スケルトンが人間より優秀すぎるいつか人間いらなくなるな
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