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第22話 追放幼女、現場検証をする

2024/08/26 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

 懸命にバケツリレーを続け、マリーも力を振り絞ってもう一度精霊魔法を使ってくれ、おかげでなんとか火を消し止めることはできた。


「みんな、お疲れ様」

「お嬢様、ですが……」

「そうだね。さすがにもう使えそうにないね」


 あたしはすっかり焼け焦げた水車小屋を見る。


「それにしても、どうしてこんなところで火事になったんだろうね? ハロルド、昨日、何か火を使った?」

「いえ。確認しただけですから火なんて……」

「だよねぇ。じゃあ、ハロルドがここを離れたときに何か変わったことは?」

「いえ。気付きませんでした」

「そうだよねぇ」


 あたしは半分焼け落ちた水車小屋の様子を確認する。


 あれ? 思ったより中は燃え残ってるんだね。


「ねぇ。小屋の中が結構燃え残ってるってことは、火は外から燃え始めたってことかな?」

「えっ? じゃあ、放火?」

「どうなんだろ? もう少し確認してみようか」


 続いてあたしは入口とは反対側に回り、様子を確認する。


 うーん。こっち側の壁は完全に燃え尽きているね。


 それに水車も車輪の部分のうち、水から上に出ている部分が完全に燃え尽きている。ただ、軸は先っぽ以外無事で、台座も建物の中は無事に見える。


 ……あれ? ちょっと待って。それっておかしくない?


「ねえ、マリー」

「はい、何かお気づきですか?」

「うん。これ、絶対に誰かが火をつけたよね」

「どういうことでしょうか?」

「だって、車輪の水から出てる部分が完全に燃え尽きているのに、なんで軸は燃え残ってるの?」

「それは……水車で火が出たから……でしょうか?」

「でも、もしそうだったらさ。こっちの壁が燃え尽きてるのっておかしくない? 普通は水車から軸を伝って延焼するでしょ? 昨日はほとんど風もなかったんだしさ。それにもし飛び火したとしても、まずは川側の壁と屋根に引火するよね?」

「それは……」

「で、こっち側の壁が燃え尽きてる。しかも、地面に近いところも含めて。ということは、こっち側の地面付近が火元だってことだよね?」

「……」

「だとすると、今度は車輪の部分がこんなに燃え尽きてるのはおかしい。でしょ?」

「は、はい……」

「ってことはだよ? 誰かが地面に何か燃えやすいものを置いて火をつけて、その火を水車に移したんじゃない?」

「っ!」

「犯人は舐めたことしてくれるね。村のみんなにとって大事な水車に火をつけるなんて!」

「ひ、姫さん、もしかして犯人は……」

「ウィル、決めつけるのはダメだよ。まずは聞き込みをして。昨日の夜、ハロルドが帰ってから誰かを見た人はいないか。それから、ハロルドも。水車の件を話した相手はいる? いたらその人たちが誰に話したのか、全部調べて」

「へい!」

「一応念のために聞くけど、犯人を見た、もしくは知ってるって人はいる?」


 しかしみんなは首を横に振った。


「うん。だよねぇ。じゃあ、捜査、よろしくね。それと、門は完全に封鎖するよ。あたしの許可がない限り、村から出るのは禁止。必要がある人は言いに来て」

「へい!」


 こうしてあたしたちは水車小屋の火災は放火と断定し、薄々は気付いているものの、犯人捜しを始めるのだった。


◆◇◆


 ウィルたちを聞き込み捜査と門の封鎖に行かせたあと、あたしはマリーとハロルドと一緒に現場検証を続け、火元らしきものを発見した。


「ねぇ、これじゃないかな? 火元」

「これは……薪の燃え残りのように見えますね」

「うん。それにここ、まるでたき火をしたみたいに不自然に建物の外で燃えてるし」

「……」

「そもそも、水車小屋に薪なんてあるわけないんだからさ。誰かがどこからか薪を持ってきて、火をつけたってことだと思う」


 あたしは燃え跡に木の枝を突っ込み、何か残っていないかを探す。


 あれ? 何か硬いものが……?


 枝でつついてみると、何やら赤い小さな石が出てきた。


「ん? 何これ? きれいな石だね」

「これは!」

「あれ? マリー、何か知ってるの?」

「これは着火の魔道具です!」

「え? 魔道具!?」

「はい! この村に着火の魔道具はありません! ということは、ボルタたちが持ち込んだに違いありません!」

「うーん、そうだろうとは思うけど、証拠がないからなぁ。とりあえずこれは証拠品として押収しておこうか」

「はい!」


 それからしばらく調べ、あたしたちは現場検証を終えるのだった。


◆◇◆


 戻ってきたあたしたちを、なんとボルタたちが待ち構えていた。


「お嬢様!」

「ああ、ボルタ。何か用? 水車を買うかどうかは――」

「うちのジェームズが行方不明なのです! どうか探してはいただけませんか!?」

「えっ!? ちょっと待って? どういうこと?」

「ですから、朝起きたらジェームズがいなくなっていたのです!」

「はぁ。そのジェームズさんはどういう人なんですか?」

「はい! あいつは若手でして、一生懸命なのが取り柄のいい男なんです! 昨日も一生懸命に接客をしてくれていました。だから突然どこかに行くなんてことはないはずなんです!」


 ボルタは必死に訴えてくる。


「お願いします! あいつは去年娘が生まれたんです! ですから!」

「……分かったよ。全員、許可なく村から出るのは禁止ね。それでちゃんと探そう」

「はい! お願いします!」


 ボルタはそう言うと、ホッとしたような表情を浮かべたのだった。


 うーん? いきなりいなくなる? もしかして何か知っていたりするのかな?


 でも、こんな狭い村ならよそ者は目立つし、きっとすぐに見つかるよね。

次回更新は通常どおり、本日 20:00 を予定しております。

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