第165話 追放幼女、騎士団を森に送る
翌朝、あたしはお願いされたスケルトンたちを集めてメレディスに預けた。また、ジェイクと相談してまとめた領境に関するこちら側の要求を手紙にしたため、Bi-147の足に括りつけて王都にいるジェフのところへと飛ばした。
そして三日後、朝練を終えたあたしにメレディスがこんなことを言ってきた。
「我が主、明日からの訓練について相談があります」
「ん? 何?」
「今後の訓練はしばらく、レスリーが担当させていただきます」
「え? どうして?」
「先日、すけたちが騎士団の指揮下に入ったでしょう?」
「うん」
「そろそろ外で、スケルトンを交えた実地訓練をしようと思いまして」
え? 実地訓練? まさか魔物の討伐とか言ってゴブリンキングを!?
「おや? まずかったですか? 一度サウスベリー侯爵騎士団に攻められたのでしょう? なので地形の確認や防衛体制、それに魔物の分布などを確認しておきたいんですが」
あ……そっか。そうだよね。
「ううん。まずくないよ。よろしくね」
「ええ。何かご懸念などありましたらいつでも言ってください」
「うん……あ! クラリントンのほうの森の中は、そこら中に落とし穴があるから気を付けて」
「ありがとうございます。大体把握しているつもりですはいますが、気を付けますよ」
「うん」
「他に罠を設置しているところはありますか?」
「特にないよ」
「分かりました。では、今夜の訓練もレスリーが伺いますよ」
「あ、そっか。うん。分かった。気を付けて行ってきてね」
「はい」
こうして朝練を終え、あたしは自宅に戻るのだった。
◆◇◆
その日の昼、メレディスはロイドをはじめとした魔力を持つ精鋭を引き連れ、北へと向かっていた。背後には大量のシルバーウルフのスケルトンと駄獣としてワイルドボアやフォレストディアのスケルトンを七体連れており、さらに十体ほどのゴブリンのスケルトンが他の荷物と交ざって積まれている。
しかもなんと! メレディスだけでなく全ての騎士たちが自分たちの愛馬でなくフォレストディアのスケルトンに騎乗している。
だがその効果はてきめんで、足場も視界も悪い森の中を通常では考えられないほどの猛スピードで疾走している。
そうこうしていると、ロイドが声を上げた。
「前方にゴブリンが一匹! こちらに気付いた模様!」
「斬れ」
「は!」
ロイドはスピードを上げてゴブリンに一気に近づくと、すれ違いざまに一撃で仕留めた。ロイドはそのまま駆け抜けていき、メレディスたちもそれに続く。だが後続のワイルドボアのスケルトンがゴブリンの死体を走りながら咥えると、背中に乗っているゴブリンのスケルトンにひょいと渡した。
渡されたゴブリンのスケルトンは器用にそれを解体していき、その骨だけを麻袋に詰めた。その麻袋を鳥のスケルトンの足に括り付けると、鳥のスケルトンはひらりと舞い上がり、スカーレットフォードの方向へと飛んでいく。
こうして魔物を倒しつつ魔の森を突き進むこと一日、メレディスたちはシルバーウルフの生息地とされる地域へとやってきた。だがそこはオリヴィアたちが通った場所よりもかなり西、つまり魔の森の奥側である。
「作戦開始だ。手筈どおりに動け」
「「「はっ」」
メレディスたちはゆっくりと散開していくのだった。
◆◇◆
メレディスたちがシルバーウルフの生息地域に着いたころ、サウスベリー侯爵のところに王都からの連絡が届いた。
「閣下、スカーレットフォード男爵からの回答が届きました」
「ほう。意外と早かったな。で? なんと言ってきた?」
「……こちらを直接、お読みになってください」
ブライアンは渋い表情を浮かべながら手紙を差し出した。それの表情を見たサウスベリー侯爵は露骨に表情を歪める。
だがサウスベリー侯爵は素直に手紙を受け取り、渋々といった様子で目を通す。
「ちっ。要求が過大だから受け入れない? 街道建設予定地は寄越せ? はっ! 水源をむざむざ差し出すはずがいなだろう!」
サウスベリー侯爵はそう怒鳴り、机に拳を振り下ろした。ドン! という音が執務室に響き渡る。
「迂回して建設しろと要求したのではなかったのか?」
「はい。ですが王命が下っていることをいいことに、それを拒否してきました」
「ふん。どうせ建設する気などないくせに」
「いえ、それがどうもそうではないようです」
「何?」
「続きを読んでみてください」
「続き?」
サウスベリー侯爵は怪訝そうな表情を浮かべたが、素直に続きを読み始める。
「は? 領地を要求するならこちらで街道を通して、その安全を確保しろ? はぁぁぁ!? アレは本気で街道を通すつもりなのか?」
「はい。どうやらそのようです」
「馬鹿な! 王が文官を付けたとのではなかったのか!?」
「はい。ジェイク・ガーランドが付いております」
「ならばなぜそのような!」
「分かりません。ですが可能性としては二つの見方があります」
「なんだ?」
「一つは、わざと失敗させようとしているという見方です」
「どういうことだ?」
「王命を果たせなければ貴族としての名誉は失墜します。同時に補給路をラズローに依存せざるを得なくなり、結果的に国王陛下はバイスター公爵経由でスカーレットフォードを支配下に置く。このようなシナリオを考えているというものです」
「……」
「もう一つは……」
次回更新は通常どおり、2025/12/28 (日) 18:00 を予定しております。




