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【Web版】追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~  作者: 一色孝太郎


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162/162

第162話 追放幼女、紋章の図案を相談する

 授業が終わり、午後になったのであたしは執務室へとやってきた。そこにはマリーがいたが、机の上には書類はなく、何やら出掛ける準備をしている。


「あれ? 外出?」

「はい。地下倉庫への搬入が終わったそうなので、内容に間違いがないか確認してまいります」

「そうなんだ。あのさ。ちょっといい?」

「なんでしょう?」

「紋章のことなんだけど――」


 あたしは授業で考えた大まかなデザインを説明した。


「こんな感じに考えているんだけど、どう?」


 すると、マリーは意外そうな表情で聞き返してくる。


「なぜ『すけ』……スケルトンを入れないのですか?」

「えっ? スケルトンを入れるの?」

「はい。お嬢様だけの特別な魔法ですから。それに、外の者たちにとってもスカーレットフォードといえばスケルトンというイメージがあるかと思います」

「そっか……」


 スケルトンを入れるのはどうかと思っていたけど……言われてみればそうかもしれないね。どうかと思うのは前世の感覚だし、村のみんなも他の人たちもあまり忌避感はなさそうだったし。


「分かった。考えてみるね」

「はい」

「それじゃあ、いってらっしゃい。呼び止めてごめんね」

「いえ。それでは、行ってまいります」

「うん」


 こうしてあたしはマリーを見送り、自分の執務を開始するのだった。


◆◇◆


 夜になり、メレディスがやってきた。


「ねぇ、メレディス。ちょっと質問があるんだけど、いい?」

「ええ。なんですか?」

「あのね。紋章を考えてみたんだけど、どう思う?」


 あたしは大まかなデザインを伝えた。


「おや? どうして『すけ』を入れないんで?」

「……メレディスもスケルトンが入っていたほうがいいと思う?」

「そりゃあもちろんですよ。むしろ、入れないおつもりだったんで?」

「うん」

「なんでです?」

「だって、スケルトンって骨だもん。さすがに変かなって思って……」

「いえいえ。そんなことありませんよ。『すけ』はスカーレットフォードの守護者たる我が主を象徴する魔法でしょう? 誰が見ても一目で我が主だと分かる素晴らしい紋章になりますよ」

「そうかな……」

「ええ、そうです。そもそも、紋章というのは一目で判別がつくことが重要なんですよ」

「そうなの?」

「だって、紋章は戦場で敵味方を見分けるための記号ですからね」

「えっ? どういうこと?」

「騎士たちは鎧を着て戦場に出るでしょう? そうすると、誰が敵で誰が味方か分からなくなるんですよ。特に乱戦となったときなどは」

「あ……」


 なるほど。たしかにそうかもしれない。


「なので、大盾や鎧兜に紋章を付けたり、旗を背負うなどするんですよ」


 あー、そういえば攻めてきたセオドリックたちも目立つ場所に大きな紋章がついてたね。


「ですから、象徴的なものが入っていたほうがいいんですよ。その点、『すけ』は誰が見ても我が主のものだということがはっきりと分かりますからね。絶対に入れるべきですよ」

「そっか。でも怖がられたりしないかな?」

「戦場では怖がられたほうがいいんですよ。紋章とはそういうものですから」

「そうなんだ……うん。分かった。そうする」

「ええ。それで今日の訓練ですが、引き続き魔力循環です。今日は、昨日の半分の魔力で循環をやってもらいます」

「えっ!? 昨日の半分!? 昨日の時点でもほとんどなかったのに?」

「まだまだですよ。最終的には、昨日の一万分の一くらいまで少なくしてもらいますから」

「い、一万……」


 それ、もう魔力を感じられないんじゃ……?


「こういう繊細な感覚は子供のうちにやっておかないと手遅れになりますからね。それに、我が主はいずれ莫大な魔力を扱えるようになります。そうなったとき、こういった繊細な魔力の制御ができるないと暴走の可能性が上がるんですよ」

「う……分かりました……」

「ええ。それじゃあ、始めましょうか」

「うん」


 こうしてあたしは魔力循環の練習を始めるのだった。


◆◇◆


 一方その頃、サウスベリーにある侯爵邸に一羽の鳩が舞い降りた。その足には小さな手紙が(くく)りつけられており、使用人の男はすぐさまそれを取り外すと鳩を鳥小屋へと入れる。


 そして手紙に目を通すなり、夜にもかかわらずブライアンの執務室へと向かう。


「侯爵閣下! ブライアン様! 届きました!」


 執務室の前までやってきた男はノックをしながら大声でそう叫んだ。するとすぐにブライアンの声が聞こえてくる。


「入りなさい」

「はっ!」


 男はすぐさま扉を開け、中に入る。するとそこにはブライアンのみがおり、サウスベリー侯爵の姿はなかった。


「こちらへ」

「はっ」


 男はブライアンの机の前まで行き、手紙をそっと差し出した。


「ご苦労様です。下がりなさい」

「はっ!」


 男はすぐさま退室していった。それを見送るとブライアンは手紙の内容を確認する。


「これは……!」


 そう(つぶや)くと、ブライアンは不敵な笑みを浮かべたのだった。

 次回更新は通常どおり、2025/12/07 (日) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
熊と狼のスケを意匠化するのが良いと思います。 ブライアンに鳩を飛ばしたのは誰かな? 裏切りの匂いがします。
人間と区別するために大きな牙を持つドクロかな?
骨の紋章と言うと海賊旗の陽気なロジャーくんが一番に思い浮かぶなぁ
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